「Windows Server 2025」の登場によってサーバーのリプレースを実施する企業が増えてくることが予想される。その一方で、老朽化したサーバーを使い続けている企業も少なからず存在する。サーバーの劣化が進めば、不具合が発生する確率は高まっていく。万が一、故障して復旧できなくなれば、業務の停止につながるリスクも孕んでいる。そうしたリスクを回避するためにも、Windows Server 2025がリリースされた今こそサーバーを見直す絶好のチャンスである。そこで今回は各ベンダーがお薦めするサーバー機器を紹介していく。
新OSへ積極的に移行していく意識を持ち
オンプレとクラウドの併存を考える企業が多い
いよいよ提供が開始されたWindows Server 2025。ユーザー企業のマイグレーションを進めるには、新OSへの移行によって得られるメリットを販売店が把握することが重要だ。本記事ではWindows Server 2025移行の進捗予想とともに、Windows Server OSを使う企業のサーバー活用状況や課題について、ノークリサーチ シニアアナリスト 岩上由高氏に話を聞いた。
企業は新OSへの移行に積極的
最新のWindows Server OS「Windows Server 2025」が2024年11月1日(米国時間)にリリースされた。ノークリサーチが2024年3月27日に発表した「2024年 中堅・中小サーバ市場(オンプレミス&クラウド)の導入済み/導入予定シェア動向」によると、Windows Server 2016を導入済みと回答した企業は21.7%、導入予定と回答した企業は9.0%で、Windows Server 2019を導入済みと回答した企業は36.9%、導入予定と回答した企業は23.8%だった。それに対し、Windows Server 2022を導入済みと回答した企業は43.7%、導入予定と回答した企業は58.9%となった。この結果からノークリサーチは、今後Windows Server 2016/2019からWindows Server 2022への移行が進んでいくと予想している。
これを踏まえ、岩上氏はWindows Server 2025への移行に関する進捗予想を次のように語る。「ここ最近、Windows Server OSはおよそ3年おきにリリースされています。そのため現在のWindows Server 2022導入済み/導入予定の状況は、3年後にWindows Server 2025導入済み/導入予定の状況になるでしょう。また数値を見れば分かる通り、Windows Server 2016/2019を導入予定と答えた企業よりも、Windows Server 2022を導入予定と答えた企業の方が多くなっています。企業は今使用しているOSを使い続けるのではなく、積極的に新しいOSへ移行していこうという意識があることが読み取れます」
続けて岩上氏は、Windows Server OSを利用する企業のサーバー活用方針を次のように語る。「Windows Server OSを利用する企業は、クラウドへの移行を積極的に進める傾向が強いです。ですが、オンプレミスを完全になくしたいと考えているわけではありません。オンプレミスとクラウドを適材適所で活用し、クラウドとオンプレミスの併存を考えている企業も多いことが分かります。将来的にはクラウドに移行することを踏まえつつ、オンプレミスとクラウドをうまく両立していきたいというのが今のWindows Server OSユーザーの動向です」
サーバー活用を支える機能が豊富
それではサーバー活用における課題は、現在利用しているWindows Server OSのバージョンによってどのように異なるのだろうか。ノークリサーチの調査によると「サーバーが乱立して全体を把握できていない」や「サーバーのデータ容量が余っている」という課題は、おおむねWindows Server 2022のような新しいOSよりもWindows Server 2016/2019といった古いOSで多く挙げられる傾向にある。こうした課題に対応できるものが、Windows Server 2025だと岩上氏は指摘する。「サーバーの乱立やデータ容量が余ってしまっている課題を解決するには、サーバーを統合することが重要です。そしてサーバーの統合では、仮想化が一つの有効な手段になってきます。従来、仮想マシンをサーバー間で移動する『ライブマイグレーション』はワークグループクラスタ(ワークグループとして構成されるサーバー群)には対応していませんでしたが、Windows Server 2025ではこれが可能となりました。つまりActive Directoryを構築しなくても、堅牢なサーバー仮想化環境を実現できるようになったわけです。これによって、中堅・中小企業がサーバー統合に取り組む際の敷居が下がると予想されます」
また、どのバージョンのWindows Server OSにおいても「不正アクセスに対する防御策が十分でない」という課題が一定数挙がっている。この課題も、Windows Server 2025への移行によって解決できる可能性があるという。「旧来、Windows OS環境で多く用いられていた認証方式『NTLM』は脆弱性などのセキュリティリスクがあるため、今後は廃止の方向へ向かうといわれています。今後は『Kerberos(ケルベロス)』のように、強度の高い認証方式の利用が求められてきますが、従来Active Directoryを構築していないワークグループ環境では利用できませんでした。ですが、Windows Server 2025では利用可能となります。さらにWindows Server 2025には、サービスアカウントのパスワード管理を自動化する『dMSA』(delegate Managed Service Accounts)機能があります。こうした特長で不正アクセスへの対策を行えることは、Windows Server OSユーザーがWindows Server 2025へのマイグレーションを進める理由になるでしょう」(岩上氏)
Windows 11との相乗効果も重要
さらにWindows Server 2025は、オンプレミスとクラウドの併存を目指す企業にもメリットがあると岩上氏は語る。「再起動せずOSにセキュリティパッチを適用可能な『ホットパッチ※』や、VPNがなくても社内のファイルサーバーに安全にアクセスできる『SMB over QUIC』といった機能は、従来Azure環境のみで利用可能でした。ですが、Windows Server 2025ではオンプレミスでも利用可能となりました。このようにWindows Server 2025は、Azure環境上でなければ享受できなかった幾つかの機能が、オンプレミスでも利用できるようになったことが注目ポイントの一つと捉えています」
加えて岩上氏は、Windows Server 2025を活用するにはWindows 11へ移行しておくことが望ましいと話す。「例えば、オンプレミスのサーバー環境でSMB over QUICを利用するには、Windows Server 2025とWindows 11の組み合わせが必要となります。Windows Server 2025によってセキュリティの強化や利便性の向上を目指したいのであれば、Windows 11へ移行しておく方が良いでしょう。ユーザー企業から見ると、Windows 11単体ではバージョンアップの利点を理解しづらいかもしれません。そうしたとき、Windows Server 2025との組み合わせで得られる利点を伝えれば、有効な突破口となるでしょう」
最後に岩上氏は、Windows Server 2025へのマイグレーションについて以下のように提言した。「現在Windows Server 2016/2019を利用しており、これまでに述べた利点のいずれかに魅力を感じるユーザー企業がいたとすれば、順番通り次のバージョンにアップグレードしていく必要は必ずしもありません。一気にWindows Server 2025へと進む選択も検討の価値が十分あるかと思われます。Windows Server 2025は『Active Directoryを構築したり、Azure環境に移行したりすればいろいろなことが可能になるのは分かっているが、それがなかなか難しい』と考える中堅・中小企業にとって有効な解決策の一つとなる可能性があります。売り手側もWindows Server 2025の改善ポイントを理解し、移行によって得られるメリットを説明できるようにしておくことが大切です」
※ホットパッチは別途サブスクリプションのサービスへの加入が必要。