今月のテーマは……
Gemini for Google Workspace の有無に限らず
Gemini アプリ が誰でも利用可能に

本連載では2024年5月号、8月号、10月号と複数回にわたって「 Gemini アプリ 」について、機能や業務での活用方法などを取り上げてきました。今号では、Gemini アプリに関して Google から新たに発表された内容と、強化したポイントを紹介します。

庄司大助(Dandy)
所属:グーグル・クラウド・ジャパン
パートナーエンジニアリング本部
役職:パートナーエンジニア
経歴:大学卒業後、日系の中堅企業のIT部門で、ITインフラ担当者として入社後、自動車系IT企業にて、ネットワークエンジニアを経験。その後、マイクロソフトにて、10年以上にわたり、オンプレミスからクラウドまで幅広くプリセールス活動に従事。現職に至る。

企業向けサービスとして利用できる

 本連載で取り上げてきた「 Gemini アプリ 」が、Gemini for Google Workspace を購入しなくても、Google Workspace の契約があれば、どなたでもご利用いただけるようになりました。もう少し正確に言いますと、企業向けのクラウドサービスである Google Workspace の利用規約の中で、Gemini アプリを活用できるようになったということです。

 Gemini アプリを利用する際には、Google アカウントが必須です。このため、Google Workspace ユーザーは、二つの選択肢がありました。一つは、Gemini for Google Workspace を購入し、「 Gemini Advanced 」の高機能かつ安心な企業向けのクラウドサービスの利用規約の下で使う選択肢です。もう一つは、Gemini for Google Workspace 有償アドオンを購入しない環境で、組織の管理者がGoogle Workspace アカウントの利用を許可して、コンシューマー向けの Gemini アプリを組織内のユーザーに使わせるという選択肢です。

 そして、今回新たに発表があったのは、前述した選択肢の後者のケースにおいて Gemini アプリを「コンシューマー向けサービス」ではなく、データのプライバシー保護を有した「企業向けサービス」として利用できることになったというものです。

Gemini アプリのラインアップをおさらい

 今回の発表で、Gemini アプリの選択肢が増え、整理がつかなくなりそうな方がいらっしゃるかもしれませんので、簡単にまとめたいと思います。

 まず、Gemini アプリはコンシューマー向けと企業向けに分かれています。これは、利用規約が Google または、Google Workspace に準ずるかで異なります。コンシューマー向けの Gemini アプリは、入力したプロンプトや出力結果が、Google のプロダクトやサービス、機械学習技術の改善のために使用される場合があります。一方、企業向けの Gemini アプリは、チャットとアップロードされたファイルは、人間のレビュアーが確認することも、生成AIモデルの改善に使用されることもありません。詳細は管理者ヘルプ※を参照ください。

 そして、企業向けの Gemini アプリはさらに、二つの区分に分かれます。一つは、以前からある Gemini for Google Workspace ユーザーが利用可能な Gemini アプリの高機能版の Gemini Advancedです。もう一つが今回発表された Gemini アプリで、Gemini Advanced レベルではない通常版です。

 では次に、Gemini Advanced と通常版の Gemini アプリについて見てみましょう。Gemini Advanced は、「 Google ドキュメント 」「PDF」「Word」など、選択したファイルをアップロードして、Gemini から洞察を引き出せます。これにより、ドキュメントの内容を深く理解し、要約、分析、翻訳などのタスクを Gemini に支援してもらうことが可能になります。マルチモーダルな特長を生かして画像ファイルを読み込ませ、そこから洞察を得ることもできます。

 また、以前本連載で紹介した Gemini アプリをカスタマイズして、社内規定について応答するチャットボットアプリとして利用するような「 Gems 」機能も、Gemini Advanced ユーザー向けの特典です。

 Google Workspace 連携は、 Gemini アプリと Gemini Advanced のどちらも対応しています。Gemini アプリを介して、メールやドキュメントなどの組織内のデータを探すといったことは可能ですが、データの分析、要約、翻訳などの機能は、Gemini Advanced に限られます。

▲「新入社員向けに会社の紹介動画を作成したい」とプロンプトに入力する(執筆時点では英語のみ対応)。

画像作成機能が進化

 Gemini アプリの裏側には、「 Imagen 3 」という画像生成モジュールが動いています。以前のバージョンと比べ、次のような機能強化が図られました。

・画質の向上:より鮮明な画像作成を実現。
・スタイルの強化:写真風だけでなく、イラスト風、アニメ風などのさまざまな描画スタイルに対応。
・正確な描写:画像への文字の埋め込みや、より正確なオブジェクトの表示が可能。
・高い安全性:人の描写を可能にし、バイアスや差別的な表現を減らせるようにさらに進化。

 Gemini アプリの進化した点はまだまだたくさんありますが、今回は Gemini for Google Workspace 有償アドオンなしで利用できる Gemini アプリが Google Workspace に組み込まれたというお話をしました。

 Gemini for Google Workspace 有償アドオンなしで Gemini アプリの一部機能が利用できるようになりましたが、Gemini for Google Workspace に含まれるさまざまなアプリに付帯する生成AI機能の全てが、Google Workspace のベースとなる契約に含まれるわけではありません。メールやドキュメントにおける文書作成、スプレッドシートでデータの集計、分析をしたい場合などには、Gemini for Google Workspace 有償アドオンが強力にユーザーをサポートします。ぜひ、トライアルなどを通じてそれぞれの有効性の確認、検証をしてみてください。

※Google Workspace の管理者ヘルプはこちら。

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