建設業界では、労働人口の減少と就業者の高齢化に伴う人手不足が深刻だ。さらに高所での作業や重量物を運ぶといった危険な作業も多く、労働災害が多発していることも課題として挙げられるだろう。こうした背景の下、作業員の安全や労働力の確保につなげるため、建設業界においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれている。そこで今回は建設DXを解説する書籍を紹介していく。
建設DX2
DXが進まない——。このような悩みを抱えている建設業界の関係者は少なくない。本書ではその理由と解決策が紹介されている。建設業界でDXが進まない理由の一つに、人材不足が挙げられる。ITに関する知識や技術がこれまで求められていなかった業界故に、基礎的なITリテラシーを持つ人材やDXを推進するデジタル人材が不足していると著者は指摘している。また、業務プロセス改革が進んでいないことも背景としてある。紙の図面や口頭での指示を中心に業務が行われているため、これらの情報をデジタル化するだけで多大な時間とコストがかかってしまう。加えて、下請け構造の重層化による「重複下請け構造」も要因として存在する。元請け・下請け企業のどちらかのみがデジタル化を進めても効果が限定されてしまうのだ。第2章では、最新の建設DXの取り組みとして、資材を運ぶヘリコプター型のドローンや現場巡視を行う四足歩行ロボットを紹介しており、DXに着手するための最新事例を知る上でも役に立つだろう。
建設業バックオフィスDX
本書では、法令の改正や制度の整備といった建設業バックオフィスDXを実現するために理解しておくべき情報が紹介されている。各章を専門家や国土交通省、制度に携わる各種団体の担当者が執筆しているため信頼性も高い。第1部では、働き方改革関連法の施行に伴う残業時間の上限規制や改正電子帳簿保存法といった各種法令の改正による実務への影響を解説。第2部では、バックオフィスDXを構築する際に知っておくべき7種類のDXを支える基盤技術と、9種類の基盤構築サービスを紹介している。それぞれの基盤技術を現場に導入した際のメリットや、基盤構築サービスの代表的な製品の特長について解説しているため、自社に導入するべき技術や製品を見つけ出せるだろう。さらに第3部では建築企業各社によるDXの成功事例も紹介している。具体的なバックオフィスDXのイメージがつかみやすくなるだろう。
建設DXで未来を変える
本書は大学教授やメディア、現場の職人といった各界の有識者と著者による対談形式で、建設業界における現状や課題、そして将来像といったテーマについて掘り下げられている。例えば第1章では、設計から維持管理までのあらゆる工程で建築物の情報を3D化したデータを利活用する「Building Information Modeling」(BIM)を導入することで、設計側の意図が現場に伝わりやすいといったメリットを解説している。また第4章では、デジタル化を進める前にまずは、不要な慣習を辞めるべきだという、現場の若手職人の意見も紹介されている。例えば手を広げられない場所でもラジオ体操を行うといったものだ。建設業界における実情を多角的に把握できる一冊だ。