「DISわぁるど in 長崎」の展示会場に特設された「AI PCコーナー」では、ビジネスでのAI活用に不可欠となるAI PCの実機が展示され、たくさんの来場者がAI活用の効果を体験していた。

Windows 11 Proでビジネスの可能性を拡大
AI PCの力で、もっと賢く、もっと早く

 2024年12月11日と12日の2日にわたり、ダイワボウ情報システム(DIS)が主催する毎年恒例のICT総合イベント「DISわぁるど in 長崎」が長崎市の出島メッセ長崎で開催された。セミナーおよび展示ともに今回も盛りだくさんの内容となったDISわぁるど in 長崎だったが、PCの新しいカテゴリーとしてビジネスの成長が期待されている「AI PC」の新製品が多数出展され、来場者の関心を引いていたことが印象的だった。ここではDISわぁるど in 長崎の展示会場に特設されたAI PCコーナーに出展したインテルと日本マイクロソフト、そしてDISの各担当者にAI市場への取り組みについて話を伺う。

生成AIを使わない未来は絶対ない
ITの中核になるビジネス規模になる

 これからのビジネスにAI活用がなぜ重要になるのかについてダイワボウ情報システム(DIS)の塚本小都氏に話を伺った。DISの塚本氏は「お客さまの感覚値もいろいろだと思いますが、当社としてはもう生成AIを使わない未来は絶対ないと思っています。その中でPCを通じた生成AIの活用が必ず必要になってきます。直近のIT投資を行うタイミングでMicrosoft Copilotをはじめとした生成AIに、ビジネスに関わる全ての人が触れられる環境をつくることが企業に求められています」と指摘する。

 生成AIの活用に向けた取り組みについて塚本氏はこうアドバイスする。「まずは実際に生成AIといろいろな対話をして、生成AIがどんなものなのかを知ることが大切です。対話を続けていくことで生成AIとの付き合い方を覚えて、自分にとってメリットのある使い方が身に付きます。現在の生成AIは使い始めてすぐに使いこなせるわけではありません。ですから早く触り始めた人がより有利になります。しかも生成AIは常に進化を続けていますので、その進化についていける企業こそが生成AIのメリットを生かせます」

 生成AIの普及に伴う市場の見通しについて塚本氏は「生成AIはほとんどのアプリケーションの中、あるいはいろいろなデバイスの中で当たり前に使われるようになっていきます。現在の生成AIはクラウド上で利用するケースがほとんどなため、ユーザーが使うPCに特別なスペックは求められません。しかし今後はPCで動作するアプリケーションにAIが組み込まれたり、PCの中にあるデータを活用するAIアプリケーションが増えたりするなど、AI処理に優れたPCが必要になっていくとみています。すでにNPUを搭載したAI PCと呼ばれるAI活用に適したPCが各PCメーカーから発売されています。総務省が公表している情報通信白書の令和6年版で、2027年の生成AIビジネスの規模は、2023年度に世界中で販売されたノートPCとほぼ同じ規模になると予測されています。これからは生成AIがITの中核になるようなビジネス規模になるでしょう」と説明する。

 そして塚本氏は「2025年からしばらくの間、PCの入れ替え需要が非常に大きくなります。その流れの中で、まだクラウドを活用していないお客さまに対して、生成AIの活用を絡めてクラウドの導入を提案するチャンスだと考えています」とビジネスチャンスを示した。

AI PCはAI用途に特化したPCではない
AI活用にも対応できる有効な投資となる

 AI活用の促進にグローバルで取り組むインテルは「AI Everywhere」戦略を推進している。AI Everywhereへの取り組みについてインテルの栗原和久氏は次のように説明する。「AI Everywhereとは全ての機器においてAIが使えるという環境を作っていくことです。例えば現在の生成AIは主にクラウドで利用されていますが、企業のサーバーやエッジのデバイス、そしてユーザーが使うPCまで広げていくイメージです。これらの全ての環境においてAIを活用できるようになるためのハードウェアをインテルが提供します」

 AIの活用をクラウドからエッジやPCへと拡大していく必要性について栗原氏は「莫大なデータ量を高速に処理する場合はクラウドでのAI活用にメリットがあります。一方で個人情報や企業が保有する機密情報などをクラウドで扱うことに抵抗がある企業も少なくありません。AI活用を促進するためにはこうした課題を解決しなければなりません。その方策としてエッジやPCでAI処理できる環境を提供することで、AI活用の促進につなげています」と説明する。

 その具体的な成果の一つがAI PCだ。ではAI PCとは何か。栗原氏は「インテルが定義するAI PCとはAIワークロード専用に設計されたインテルのハードウェアおよびソフトウェア、テクノロジーを搭載したPCです。従来のPCにはCPUとGPUというプロセッサーが搭載されていますが、それらに加えてAI PCにはNPUと呼ばれる低消費電力のAIワークロードに特化したプロセッサーも搭載しています。ただしNPUが全てのAI処理を行っているわけではなく、CPUとGPU、そしてNPUの三つのプロセッサーを組み合わせて効率良く処理することで、消費電力を抑えながらAI処理のパフォーマンスを高めていることが特長となります」と説明する。

 AI PCのビジネスチャンスについて栗原氏は「AI PCはAI用途に特化したPCではありません。CPUやGPUも進化しており、そのパフォーマンスと電力効率はAI以外のビジネス用途でもメリットを発揮します。今後、AI活用は本格化していくことは明らかです。多くの企業では数年ごとにPCを入れ替えますので、今年導入するPCからAI PCを選んでおけば、これから数年間にわたってAI活用にも対応できる有効な投資となります」とアドバイスする。

生成AIの活用に不可欠なセキュリティ対策
データとデバイスに加えてID管理が必須

 マイクロソフトはクラウドを通じてMicrosoft Copilotなどの生成AIサービスを提供しているほか、Windows 11 Proの最新版(24H2)ではPCのローカルで利用できるさまざまなAI機能を、OSの機能の一部として提供し始めている。マイクロソフトは生成AIの活用をグローバルでけん引するとともに、生成AIを活用する上でセキュリティがさらに重要になると指摘している。日本マイクロソフトの仲西和彦氏は「生成AIの利用が進むと、それにつれて社内の文章や情報を処理するような場面もあり得るでしょう。その場合、機密情報やユーザー自身の個人情報も扱う場合があることを念頭に置き、セキュリティ対策を講じる必要があります。DXの推進ではデータとデバイス(エンドポイント)のセキュリティ対策が求められましたが、生成AI活用においてはID管理も不可欠となります」と指摘する。

 なぜID管理が重要なのか、仲西氏は「ユーザー個別の属性を管理せずに生成AIを活用すると、例えば営業部門の社員が生成AIを通じて偶発的に人事データにアクセスしてしまい、ほかの社員の給与や個人情報を知ってしまう恐れがあります。生成AIを活用する上で、この人はこのデータにアクセスしていいのか、この人はこの指示を出していい人なのか、などといったユーザー個別の属性をIDとひも付けて管理する必要があります」と説明する。

 こうした問題を解決して生成AIを安全に活用できるようにするのがMicrosoft 365で提供されるクラウドベースのIDおよびアクセス管理ソリューションである「Microsoft Entra ID」だ。ただし仲西氏は「Microsoft Entra IDを導入していても、IDとパスワードを管理するだけでは不十分です。必ずユーザーの属性も管理する運用をしてください」とアドバイスする。

 そして生成AIを活用する上で最新のWindows 11 Pro搭載PCの優位性について仲西氏は「NPUが搭載された最新のWindows 11 Pro搭載PCの中にはキーボードに『Copilotキー』を採用した製品があります。Copilotキーを採用したPCを選べばアプリのアイコンを探さなくても、ワンタッチでMicrosoft Copilotが即座に使えます。社員の誰もが生成AIを活用できるCopilotキーが、生成AIの活用促進に大いに役立つと自負しています」とアピールする。

ダイワボウ情報システム
販売推進本部
クラウド・アプリケーション販売推進部
部長
塚本 小都
インテル
パートナー事業本部
副本部長
PCクライアントチャネル管掌
栗原 和久
日本マイクロソフト
デバイスパートナー事業本部
マーケティング戦略本部
Commercial Windows 戦略部長
仲西 和彦