低価格と高いパフォーマンスを武器に
日本でのオブジェクトストレージの提供を開始
Wasabiテクノロジーズジャパン「Wasabi Hot Cloud Storage」
Wasabi Technologiesは、2020年6月、Wasabiテクノロジーズジャパンを設立し、日本でのオブジェクトストレージサービスの提供を開始した。競合他社のストレージサービスは料金体系が複雑で、導入後に追加で費用がかかる課金システムになっていたり、導入に必要な予算が立てにくかったりするなどの課題があるという。Wasabi Technologiesはこうした課題を解決するため、低価格と分かりやすい料金体系、高いパフォーマンスを有したオブジェクトストレージサービスを武器に、日本を中心にアジア地域への本格展開に舵を切った。約2万5,000社を超える顧客を抱える同社の販売戦略に迫る。
シンプルな階層構造により
管理の手間やコストを削減できる
2015年、米国マサチューセッツ州ボストンでオブジェクトストレージを提供する企業として創業したWasabi Technologies。2020年には、NTTコミュニケーションズからの要望を受け、同社としてアジア地域初となるデータセンターを日本国内に建設。同年6月から日本国内での本格的な事業展開を開始するため、Wasabiテクノロジーズジャパンを設立した。日本市場に本格参入した背景をアジアパシフィック地域事業代表 副社長 兼Wasabiテクノロジーズジャパン 代表執行役員社長 黒田和国氏は「DXをはじめとした急速なデジタル化によって、企業は膨大なデータ量を抱えるようになってきています。そのため、膨大なデータをシンプルかつセキュアに保存できる大容量クラウドストレージサービスの需要が高まっています」と話す。
一般的に、ファイルストレージやブロックストレージは、ファイル単位、ブロック単位でデータを保存する。膨大なデータを扱う用途には向いているものの、データがいくつもの階層に分かれてしまったり、管理コストが高くなったりする課題がある。その一方、オブジェクトストレージのデータファイルは、オブジェクトと呼ばれる独立したユニットに分割して保存される。複雑な階層構造を持たないため、管理が容易でコストを抑えた運用が可能になる。
しかし、オブジェクトストレージにも課題はある。オブジェクトストレージには、大きく分けて「コールドストレージ」と「ホットストレージ」の二つがある。コールドストレージは低価格だが、保存したデータをダウンロードする、つまりデータを取り出すために時間がかかる。データを取り出すために何週間もかかることさえあるという。一方、ホットストレージは、データを取り出す時間が速いものの、価格が高くなる傾向にある。つまり、価格を抑えてオブジェクトストレージを導入するには、データの取り出しに時間がかかるコールドストレージを選択せざるを得なかった。こうした課題を解決するのが、同社の低価格オブジェクトストレージサービス「Wasabi Hot Cloud Storage」だ。提供するサービスをデータの取り出しが速いホットストレージに限定。独自のアーキテクチャを採用し、ハードウェアの効率化を追求することで、コールドストレージ並みの低価格化を実現している。
独自アーキテクチャを採用し
5分の1程度の価格で導入が可能
Wasabi Hot Cloud Storageは、同等の性能を有した競合他社のクラウドストレージと比較して最大で5分の1程度の価格で導入できる。低価格を実現できた背景には、独自のアーキテクチャの採用と、ハードウェア、ソフトウェアの徹底した効率化がある。「価格を抑えられた理由の一つに、ハードディスクの低価格化が挙げられます。それと同時にハードディスクの使用率の最適化に尽力しました。加えて、技術的な改良によってハードドライブの寿命を伸ばすことにも成功しました。ソフトウェアに対する技術投資も低価格化に寄与しています。当社独自の高速ファイルシステムを開発し、複雑な階層を有しないシンプルなストレージ構造が完成しました。こうした一連の技術改良によって、大幅なコスト削減とパフォーマンスの向上が実現したのです」(黒田氏) また、Wasabi Hot Cloud Storageは、競合他社のオブジェクトストレージサービスに対応した既存のアプリケーションに互換性がある点も特長だ。データのバックアップ、ディザスタリカバリー、コンテンツデリバリーなどにも対応する。それらを実現するために350社以上のテクニカルアライアンスパートナーと連携しているという。
シンプルな料金体系もWasabi Hot Cloud Storageの魅力だ。料金プランは一つだけで他社と比較しても分かりやすく、追加費用はかからない。一般的なオブジェクトストレージサービスの場合、データにアクセスしたり、データを保存したり、取り出したりするたびにデータ転送料金として追加費用がかかることがある。「頻繁にデータを出し入れする場合、こうした追加費用があるのとないのとでは大きな差が生じます。追加費用がかからなければ、予算が立てやすくなる点もメリットです。シンプルで分かりやすい料金体系にすることで、導入のハードルは低くなります」と黒田氏は付け加える。
サイバー攻撃によって情報が流出する事件が後を絶たないが、Wasabi Hot Cloud Storageには、保存したデータの変更や削除などを防止する「Object Lock」機能が採用されている。「Object Lockを有効にすれば、外部から不正に侵入したエンジニアはもちろん、社内のエンジニアであってもデータを転送したり、変更したり、削除したりすることができなくなります。サイバー攻撃から身を守ることはもちろんですが、偶発的なデータの消去を防止できます」(黒田氏)
さらなる販路拡大には
認知度向上が必要不可欠
Wasabi Technologiesは、米国に3カ所、欧州地域に1カ所、日本国内に2カ所のデータセンターとアジアパシフィック(APAC)地域の本社を設置。韓国やシンガポール、マレーシア、ニュージーランド、オーストラリアなどにも事業展開を加速していく方針だ。2021年末現在、全世界で2万5,000社以上の顧客を抱えており、その多くは放送局や映画製作、大学の研究機関やエネルギー関連、行政・金融機関など、いずれも膨大なデータを有している大企業だ。
しかし、黒田氏はさらなる販路拡大には企業の認知度を高める必要があると語る。「Wasabi Technologiesの社名は、ホットストレージの“ホット”、つまり辛さの象徴であるわさびに由来しています。日本人にはなじみ深い社名だと自負していますが、日本国内での認知度はまだ高くありません。そのため、ダイワボウ情報システムさまと連携し、イベントやセミナー、トレーニング会を開催し認知度を高めていくと同時に、販売パートナーさまのサポートも積極的に行っていきたいと考えています」と今後の認知度向上と販売戦略の展望を語った。