耳をふさがずに“聴きながら聞こえる”
ソニーが提案する新しいリスニング体験
ソニー「LinkBuds」
最初の緊急事態宣言が発令されてから2 年以上が経過して、マスクやソーシャルディスタンスの維持はあるものの、テレワークからリアルワークへと戻す企業が増えてきた。その一方で、取引先企業に合わせる形でZoomやTeams などを活用したWeb 会議も増えている。2022 年は、オンラインとオンサイトのハイブリッドな働き方を率先して選ぶ傾向が強くなるだろう。そうした人たちにとって、Web 会議の音声を聴きながら、周囲の音や電話の呼び出し音などを耳をふさがず聞き取れるイヤホン「LinkBuds」は、ハイブリッドなリスニング体験を提供し、ビジネスをサポートしてくれる。
text by 森村恵一
オンラインとリアルをつなぐ
イヤホンには大きく分けて、外部の音を完全に遮断するカナル型と、周囲の音が比較的聞き取りやすいインナーイヤー型がある。今回紹介するイヤホンLinkBuds は、前述した2種類の中ではインナーイヤー型に該当するのだが、製品名には“リアルとオンラインをリンクさせる”という思いが込められており、これまでにない新しいリスニング体験をもたらしてくれる機能を有している。
LinkBudsが開発された背景について、ソニーの担当者は「テレワークやオンライン授業での利用など、音楽を聴くという従来の目的以外にも、イヤホンやヘッドホンの使用スタイルが多様化している」と指摘する。確かに、テレワークのためにイヤホンやヘッドホンをかけ続けるのは、耳にも首にも負担がかかる。また、カナル型のイヤホンで耳をふさいでしまうと、家庭や職場で周囲の音が聞こえなくなるので、外部とのコミュニケーションが遮断されてしまう。特に、家庭内でイヤホンやヘッドホンをしたままだと、同居している家族などと意思疎通がとれなくなる。かといって、スピーカーからWeb会議の音声を流しっぱなしにすると、企業秘密の漏えいにもつながりかねない。
こうしたテレワーク事情に加え、ソニーは若い世代のユーザーのデバイス利用用途にも注目している。例えば、「Z世代においては、好きな音楽を聴きながら、スマートフォンでゲームをしたり、Web ブラウジングをしたり、友達や家族と会話をしたりする『ながら聴き』が広がっている」と分析する。このながら聴きのニーズの広がりを踏まえ、ライフスタイルの変化を先取りした“オンラインとリアルをつなぐ”新しいイヤホンとしてLinkBudsが誕生した。
LinkBudsは、一般的なイヤホンとは異なり音声を出力する部分にドーナツ状の穴が空けられている。耳を完全にふさがないので、音楽を聴いていても外部の音を聞き取れる仕様だ。また、着用していても耳の穴に空気が入ってくるので、カナル型イヤホンにみられる圧迫感も少ない。外部の音が完全に遮断され、没入感のあるリスニングスタイルを好むユーザーもいるが、LinkBudsであれば、外部の音を自然に聞きながら、イヤホンを通じて聴きたい音楽や必要な通知音、Web会議や友人との通話など、あらゆる音と開放的につながることが可能だ。耳をふさがないというユニークな装着方法を採用しているにもかかわらず、激しく動いてもイヤホンが耳から外れにくい構造になっており、長時間LinkBudsを付けたまま運動しても疲れにくいというメリットもある。
行動の変化を感知して自動再生
LinkBudsを実際に使ってみると発話した自分の声も自然に聞こえるので、従来のイヤホンと比べて疲れにくく、会話が弾みやすかった。
また、5億サンプルを超えるAIの機械学習で構成した装着者の声とそれ以外の環境ノイズを分離するアルゴリズムにより、話している自分の声をクリアに抽出する。つまり、騒がしい場所でも快適なリモートコミュニケーションを実現してくれるのだ。
AI機能は、周りの声だけではなく、エアコンの空調音やPCのタイピング音などのノイズも抑えられる。インタビューをしながらタイピングする筆者にとっては、タイピング音を気にしないで会話できるので利便性が高い。
LinkBuds は、Bluetooth でPC やスマートフォンと接続することで細かい設定が可能だ。ペアリングモードに設定したLinkBudsをPCに近づけると、接続ガイダンスのポップアップがPCなどの画面上に表示されて簡単にペアリングできる。
LinkBudsは、搭載しているセンサー技術やサービスと連携して、新しいリスニング体験を提供してくれる点も魅力だ。例えば、「Quick Access」機能を使えば、LinkBuds 本体をタップするだけで、スマートフォンにインストールされた音楽ストリーミングサービス「Spotify」などの楽曲を楽しめる。また「Auto Play」機能では、LinkBuds を耳に装着したり、歩き出したりすると、その行動の変化を感知して、コンテンツを自動で再生できる。LinkBuds装着時に耳の少し手前のこめかみ部分をタップすると、曲の再生などが行える「ワイドエリアタップ」という操作方法を採用。ワイドエリアタップでは、Google やAmazon の音声アシスタントを呼び出すことも可能だ。
今後もテレワークと出社のハイブリッドワークが加速し、いつでもどこからでもWeb会議を実施できるマルチな働き方が加速していくだろう。LinkBuds は、そんなリアルとオンラインが融合する働き方の橋渡しをしてくれる。