文書をくっきりと見せる有機ELはビジネス利用にぴったり
テーマ:有機ELモニター搭載PCの魅力
今回は、最近増えてきた有機ELモニターを搭載するPCの魅力や使い勝手の良い機能について紹介していこう。これからPCを選ぶ際には、チェックするべき条件の一つになってくるはずだ。
黒が締まって見える有機EL
最近のモバイルノートは、有機ELモニターを採用した製品が増えている。そもそも有機ELは、従来から採用されていた定番の液晶とは異なる仕組みのモニターだ。液晶は、バックライトを搭載していて背面から照らすことで画像を表示している。だから、黒く表示されている部分も背面ではバックライトが光っているのだ。最近はミニLEDなどで光り方を制御しているケースもあるが、おおむねそんな仕組みとなっている。
ところが、有機ELは映像素子そのものが光っている。つまり、非常に小さな色の電球が並んでいると思えばいいだろう。黒い部分は光が消えているわけだ。
ここが大きな違いで、黒が締まって見えるのだ。また、色合いもくっきりしていて鮮やかに感じるだろう。
すでに、スマホは多くの機種が有機ELを採用しており、液晶の製品は少なくなった。また、テレビでも採用モデルが増えているのはご存じの通りだ。
今回紹介する、「ThinkPad Z13」は上位モデルが有機EL(OLED)を採用する。有機物質を使った映像素子がOLEDだが、基本的には有機EL=OLEDと考えていいだろう。有機ELの一種に、アクティブマトリックス方式にも対応するAMOLEDなどもあるが、今回はまとめて有機ELとして紹介していく。
実際に見ると驚くほど美しい
今回は、ThinkPad Z13を借用してチェックしているが、このモニターはハッとするほど美しい。これまでに有機ELのPCを見たことがない人は、驚くはずだ。なにしろ、この上位モデルはWQXGAという解像度で、2,880×1,800ドットだ。つまり、一般的なフルHD(1,920×1,080ドット)に比べると、画面を構成するドット(光りの点)の数が多い。つまり、ざらつきが少なく美しい映像が表示できるわけだ。モバイルノートの場合は、画面サイズが小さくて解像度が高いほど、より緻密で美しくなる。WQXGAよりも4Kのほうがより緻密で美しくなるのだが、ThinkPad Z13は、13.3インチだ。つまり、16〜17インチの4Kディスプレイと比べても遜色のない緻密な映像が表示できるのだ。
そもそも、有機ELは、液晶とは光り方が全然違っていて、見た目が派手やかで非常にきれいだ。有機ELを見ると「自然な色合いではない」という人も一定数いる。例えば写真を編集しているような方からは、色が派手すぎて利用に向かないという感想を聞くことも少なくない。これは、確かにその通りで色合いが強すぎると感じる製品を見かけるケースも多い。
ところが、仕事で使う上ではこの美しさがとても大きなメリットになる。実際に使ってみると分かるのだが、黒の締まりが良いと文字がくっきりと表示できる。
例えば、WordやExcelの資料を開いても文字がパキッと表示されてとても見やすい。特に小さな文字が読みやすいと感じるはずだ。言うまでもなく、メールやブラウザーなどの文字も見やすい。一般的に仕事で使う白バックに黒い文字が全て見やすいと思って間違いない。実は、仕事にこそお薦めのモニターなのだ。
もう一つの特長が、輝度を下げた時でも文字が読みやすいことだ。輝度を下げて、同じくらいの明るさにそろえた液晶モニターと、並べて比べるとずいぶん差がある。
モバイルノートはバッテリーを持たせるために輝度を下げることがままある。こんな時でも使い勝手が良い。また、明るい屋外で文字が読みづらいときにも、有機ELを最大輝度にするとずいぶん見やすく感じるだろう。これは、PCよりもはるかに明るい屋外で使われる機会の多いスマホで標準的に採用されていることからも分かる。
バッテリー稼働時間に注意
有機ELは、モバイルノートに向くモニターの種類で、今後もどんどん数が増えてくるだろう。だが、少し注意したいこともある。そもそも有機ELは、光っていない部分は電力を消費しない。例えば、黒い部分は電力を使わないのだ。液晶よりも省電力だと感じるかもしれないが、PCにおいてはどうもそう簡単な話ではないようだ。
全く同じ製品で同じ解像度で比較できていないのだが、有機ELを採用したモニターは消費電力が大きくなりがちだと感じている。それはメーカーも分かっているようで、基本的には画面がダークモードに初期設定されている。
これは、スマホのダークモードと同様で、メニューなどが黒や濃いグレーバックに白文字で表示される画面デザインだ。光っていない部分を減らすことで消費電力を抑えようとしているわけだ。使い方にもよるのだが、スマホの場合はダークモードがそれなりに効くと感じている。
ところが、PCの場合は、メニュー回りなどをダークモードにするのは良いとしても、そもそも文章を黒バックに白文字で表示する気にはなれない。スマホよりもメニューが小さく表示エリアが大きいので、効果も限定的になるわけだ。
さらに、有機ELを採用したモデルは解像度が高くなるケースが多い。こちらも消費電力が大きくなる要因だ。
画面がきれいなので、高輝度で使っているとバッテリーがグイグイ減ってしまう。僕は、モバイルノートでも輝度を最高に上げて使うことが多い。特に明るい屋外では輝度を上げた方が見やすいので、モバイル中こそMaxで利用している。
こんな使い方をする方は、有機ELモデルを購入する際に、バッテリー駆動時間が長い製品を選ぶべきだろう。ThinkPad Z13も最大22.8時間と十分な長さだ。ただ、最高輝度で使っていると、実際には10時間以下しか稼働しないケースが多くなる点は心しておこう。
消費電力に若干の課題があるのだが、今後は、有機ELを搭載したPCがどんどん増えてきそうだ。すでに、多くのメーカーから搭載モデルがリリースされており、高い人気となっている。価格も下がってきているので、中級モデル以上は有機ELが当たり前になりそうだ。
ただ、個人的に気に入らないのは、グレア(光沢)モニターが多いことだ。画面を美しく見せるために、有機ELの多くのモデルがグレアモニターなのだ。仕事に使うモバイルノートは、少しでも映り込みを減らすためにアンチグレアを採用してほしい。有機EL+アンチグレアが増えてほしいと願っている。