少子高齢化の中で人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高めるために、多様な人材の能力を生かしてイノベーションを生み出す「ダイバーシティ経営」が経済産業省を中心に推進されている。女性が管理職に就きやすい職場環境のつくり方や、多様化する人材同士の分断を回避する方法を解説している書籍を読み、自社でダイバーシティ経営を実現するためのヒントをつかもう。
図解!ダイバーシティの教科書
本書では、女性が管理職に就きやすい職場環境を整える方法を解説している。20代女性の従業員は、30代ごろに経験する割合が高い結婚や出産などのライフイベントを重く捉える傾向がある。そのため、入社1年目の時点で昇進意欲が下がってしまいやすいと著者は指摘する。第3章では、企業で取り組むと良い女性のキャリアデザイン教育を説明。女性の管理職の割合を高めるには、20〜30代前半の女性従業員に向けて、キャリア構築支援の研修を実施することが望ましい。今後ライフイベントを迎える可能性が高い女性従業員に研修を行うことで、ライフイベント後のキャリアに対する不安を事前に解消できる。産休からの復職といったライフイベントを通過した後も、キャリア構築への上昇志向を促進し、女性管理職の登用につながる。女性従業員の昇進に対する不安や課題を払拭し、女性管理職を増やすための施策が学べる一冊。
フォールトライン
組織の分断回避へのアプローチ
年齢や職歴の違いによるメンバー間の分断を表す言葉に「フォールトライン」がある。本書では、子供を持つ従業員と子供を持たない従業員の間に形成されつつあるフォールトラインの解消方法を解説している。第13章では、フォールトラインに対して経営者が取れるアプローチを紹介。経営者は、子供を持つ従業員と子供を持たない従業員の両方に、仕事に対する助言などのメッセージを発信すると良い。経営者が両者に配慮したワークライフバランスのコミットメントを示すことで、子供を持つ従業員も、子供を持たない従業員も、自分が組織の一員として受け入れられている意識を持てる。両者が共に組織に大切にされていると思える環境をつくることで、優秀な人材の流出を防ぎ、企業の競争力を高めることにつながる。フォールトラインの発生を抑え、従業員に不公平感を感じさせない職場環境づくりの取り組みが参照できる。
女性優遇 ≠ ダイバーシティ
本書では、従業員にダイバーシティの推進を意識させる方法について解説している。著者は、社内の男女比率を半々にするだけでは、従業員にダイバーシティの推進を意識させるのは難しいと指摘する。Chapter3では、Googleのダイバーシティの取り組みを紹介。Googleは、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを自社のWebサイトで公開している。そのWebサイトでは、採用における男女比率といったダイバーシティの推進で改善している事柄だけでなく、男女それぞれの離職率のような今後改善すべき点も公開している。ポジティブな内容に限らず、改善が必要な点も全て公開することで、社内・社外を問わず自社がダイバーシティに積極的に取り組んでいる姿勢を示せる。これにより、従業員がダイバーシティの推進を意識することにつながる。ダイバーシティ推進のために従業員の意識を改革するコツを知るのに有効だ。