2画面を活用できる
電子メモパッドのビジネスチャンス

キングジム
ブギーボード BB-16

デジタルメモ「ポメラ」やラベルライター「テプラ」といった人気商品を開発しているキングジム。同社が米国のKent Displaysの液晶画面を採用して商品化した電子メモパッドが「ブギーボード」だ。現在では、キングジムが日本企業のニーズに沿ったブギーボードを開発し、販売を行っている。今回レビューする新モデル「ブギーボード BB-16」(以下、BB-16)は、日本で独自に開発された2分割画面のブギーボードになる。経営理念に「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」を掲げる同社の新製品には、どのようなビジネスチャンスがあるのか。製品をレビューしながら可能性を探っていく。
text by 森村恵一

日本の利用シーンに応えた新モデル

 ブギーボードシリーズの歴史は長い。キングジムによれば、日本で販売を開始したのが2010年からなので、今年で13年目を迎えている。製品のレビューに当たり、改めて基本的な機能をおさらいしておこう。ブギーボードは、記入内容の消去が約2.5〜5万回まで可能な電子メモパッドだ。筆圧による線の太さも調節できるハイコントラストな液晶で、消去ボタンを押すまでは、書いたメモはずっと表示される。機能も操作もシンプルなので、ユーザーのITリテラシーを問わずすぐに使い始められる。そのシンプルな操作性と確実に消せる電子メモとしての機能が評価され、日本ではビジネスの現場で活用されている。具体的な事例は後半で触れるが、そうした日本での需要とユーザーからのフィードバックを基に、2分割画面のBB-16が開発された。

 これまでのブギーボードは、1画面なので消去ボタンを押せば全ての書き込みが消えてしまう。その消える便利さを活用して、日本ではコールセンターでの問い合わせメモや、携帯ショップでの顧客情報などのメモとして活用されてきた。しかし、一度に全ての書き込みが消えてしまうと、使い方によっては困ることもある。メモとして記録したい情報の中には、すぐに不要になるものだけではなく、少々長めに残しておきたい内容もあるからだ。そうした情報の重要性の差に応えるために、BB-16では左右それぞれの画面を好きなタイミングで消せるように分割した。BB-16の画面上部には、ワンタッチで記入した内容を削除する「消去ボタン」と、消去ボタンを押しても記入した内容が消えないようにロックする「消去ロック」が二つずつ搭載されていて、左右の画面を独立して利用できる。To Doリストのように残しておきたいメモを左に書いて消去をロックしておき、右側の画面で短期的なメモを書くといった使い分けが可能だ。

スタイラススタンドを使えば、本体を縦置きで使用可能だ。社内での共有事項を伝える掲示板としても利用できる。

2画面で広がるビジネスチャンス

 BB-16の2画面は、単に2枚の液晶を貼り合わせているのではなく、1枚の液晶パネルを高度な技術で2分割している。そのおかげで、境界線や本体フレームのギリギリまでしっかり文字や図を描ける。そのほかにも、書かれたメモのコントラストの高さや、2画面合計で消去回数が約5万回という長寿命など、Kent Displaysの液晶画面ならではの高性能な電子メモパッドになっている。ブギーボードが日本のビジネスシーンで広く利用されてきた背景には、こうした高性能な液晶画面の見やすさがある。この見やすさと、消えるメモのメリットを生かして、これまでカウンター業務での顧客確認などに数多く導入されてきたのは先述した通りだ。紙にペンで氏名や連絡先を書いてもらうと、個人情報保護の観点から、その処理にも配慮しなければならない。しかし、ブギーボードであれば目の前でメモの内容を消去できるので、顧客の安心感を得られる。

 一方で、日本の接客業務を中心としたニーズの中で、消える画面と消えない画面の使い分けへの需要も生まれてきた。例えば、何を書いてほしいのかをメモとして表示した上で、顧客側で何らかの情報を記入する用件がある場合には、2画面の使い分けがマッチする。BB-16のWebサイトでは「固定の案内文」と「書き換えたい記入欄」といった使い分け例が紹介されている。この使い分けに注目して、すでに大手の家電量販店がBB-16を接客業務で活用する話も進んでいるという。営業時の商談など、対面で何らかの顧客情報を書いてもらう業務であれば、あらゆるシーンにBB-16を提案できると考えられる。

消去ボタンと消去ロックは、画面ごとに内容の消去やロックができる。左に長期、右に短期のタスクを書くという使い分けが可能だ。

ペンや専用アプリで広がる用途

 BB-16は、縦置きでも横置きでも使える「チルトスタンド」が用意されている。固定する画面にしっかりと情報を書き込みたいときには、チルトスタンドを利用すると便利だ。また、付属のスタイラスペンを穴に差し込んで活用する「スタイラススタンド」もある。BB-16をほぼ垂直に立てられるので、小さな掲示板として使うときに役立つ。さらに、BB-16には本体に収納できるスタイラスペンが2本用意されている。キングジムによれば、2画面あるので2人でそれぞれ書き込めるように2本用意したという。

 そのほかに、ブギーボードのスマートフォン専用アプリ「Boogie Board SCAN」を使うと、BB-16の画面を画像データとして保存可能だ。保存した画像データは、編集画面で着色したりテキストを追加したりできる。そして、Google ドライブやOneDriveなどのクラウドストレージとの連携にも対応しており、第三者との記入内容の共有も容易だ。

 手書きのメモという従来からの記録方法が、BB-16という電子メモパッドの活用により、カウンター業務や顧客対応への新たな効率化や安心感をもたらす。機能や操作もシンプルなだけに、使い方の創意工夫でさらなるビジネスチャンスをもたらせるだろう。

Boogie Board SCANでBB-16の画面を読み取れば、手書きした内容を画像データ化できる。メールやクラウドでの共有もしやすい。