電子ペーパーの新たなビジネスチャンス

シャープ
ePoster EP-C131

電子ペーパーディスプレイ「ePoster」は、電子インクで電力0Wのカラー表示を実現し、液晶モニターでは実現できないサイネージの用途を拡張するディスプレイだ。ePosterには現在四つのモデルがそろっているが、今回は13.3インチカラーモデル「ePoster EP-C131」(以下、EP-C131)をレビューする。EP-C131はモバイルモニターのようなコンパクトサイズで、軽量かつ薄型のデザインを実現し、最大で約2,000枚のカラー画像を保存可能だ。低消費電力で明るい光源があれば高い視認性を得られるePosterは、どのようなビジネスチャンスがあるのか探っていく。
text by 森村恵一

拡大する電子ペーパー市場

 電子インクを活用した電子ペーパーは、スーパーで見かける電子値札や、電子ブックに電子ノートなど、モノクロ表示を中心に普及している。自ら発光せず周囲の光を反射して表示するため、太陽光が差し込む会場の案内板や受付前に置くPOPなど、視認性や電源の問題で液晶ディスプレイの設置が難しかった場所において需要を開拓してきた。

 しかし電子ペーパーが活躍するのは、液晶ディスプレイの代用だけではない。今まで紙のポスターが使用されていた場所でも、新たな魅力を備えたサイネージとして活用できる。

 シャープの電子ペーパーディスプレイのePosterは、紙のポスターと比べて印刷にかかる時間やコストを削減し、印刷用紙の消費や輸送などの環境負荷を軽減する。加えて、画面表示を切り替えれば内容を変更できるので、貼り替え作業を行う必要がない。これにより、貼り替え作業やポスターの廃棄にかかる費用の削減、剥がし忘れ防止、サイネージの耐久性向上を実現可能だ。

 これまで紙のチラシやポスターを使っていたサイネージの多くは、ePosterに置き換えられる可能性を秘めている。

無線による一括の書き換えに対応

 ePosterの13.3インチカラーモデルであるEP-C131の本体サイズは、幅約306.4×奥行き約20.9×高さ約229.9mmとコンパクトだ。表示画面サイズは約270.4×約202.8mmで、アスペクト比は4:3とA4用紙に近いサイズを実現している。

 EP-C131の背面には、スマートフォンなどで利用するモバイルバッテリーを取り付けられるくぼみがある。内蔵バッテリーがないため、本体重量は約0.7kgと軽量だ。

 本体はペーパースタンドを使って机に置いたり、背面のねじ穴を使って壁に掛けたりできる。使用環境は、画面書き換え時の周辺温度が15〜35度、設置時は0〜50度に適応する。多様な設置方法に対応し、幅広い温度で使用可能なため、室内から屋外までさまざまな環境で活用が行える。

 EP-C131の画面の書き換えは、PCとUSB接続して配信する方法、USBメモリー経由で配信する方法、スマートフォン専用アプリ「EPD Assistant Tool」(Androidのみ対応)からBluetooth接続で配信する方法の3種類で実行できる。対応する画像フォーマットは、jpg、png、bmpだ。

 本体背面にある「MODEボタン」を長押しすると、表示する画像をMODEボタン操作で選ぶ「マニュアルモード」と、表示する画像を自動で書き換える「オートモード」の切り替えが行える。

 さらに、シャープが提供するコンテンツ配信・表示システム「e-Signage S」を使えば、無線LANを活用して複数台のEP-C131の画面を一括で書き換えられる。e-Signage Sは、遠隔操作による画像データの配信のほか、指定日時での画像の自動配信や機器の状態監視、ePosterと液晶ディスプレイの共有管理も可能だ。クラウドサービスなので、ライセンスを契約すればサーバーなどの設備投資なしで運用できる。

 複数台のEP-C131に対する自動配信の仕組みを構築すると、サイネージのソリューションとしての提案力も増す。

スマートフォンアプリ「EPD Assistant Tool」(Androidのみ対応)から画面の表示を書き換えられる。
ペーパースタンドに立てかけて使用できる。窓口などに置く広告や顧客へのお知らせで活用可能だ。

多様な現場の情報発信に貢献

 サイネージとしての利用を促進するために、EP-C131には専用のポールスタンドとフレームスタンドが用意されている。会場の案内やメニューの表示など、これまで紙で対応していた各種案内をEP-C131に置き換え可能だ。タクシーの車内広告での利用も検討されており、Wi-Fiによるリモートでの一括更新を組み合わせて活用すれば、即時性のある広告が可能になる。そのほかにも、多種多様な案内板のリプレースや、プレゼン用のスライドの表示、セールスカタログの提示などさまざまな用途が想定できる。

 電力0Wで表示し続けられる便利さと、モバイルバッテリーでスライドショーを表示できる機能を活用すると、EP-C131で展開できるサイネージのニーズはまだまだ発掘できるはずだ。

 ePosterにはEP-C131のほかにも、42インチモノクロモデルの「EP-421」、25.3インチカラーモデルの「EP-C251」、7.3インチ4色両面モデルの「EP-C070」といったラインアップがある。EP-C131をきっかけに電力0Wのデジタルサイネージへの興味を喚起できれば、案内したい情報の内容やロケーションに合わせて、ほかのePosterを提案する機会も出てくる。

 例えばEP-421は、ホテルの宴会場の案内板としての利用実績がある。ePosterの公式ホームページでは、EP-C070に商品の割引情報を案内するといった、定期的に変化する情報をタイムリーに提供する利用例も紹介されている。アイデア次第でさまざまな提案の幅が広がるので、機会があればぜひ、カラーモデルの発色の良さも体験してほしい。