ホワイトボード一体型の電子黒板で
効率的で理解しやすい授業スタイル

教育現場において、教材を大きく提示したり、動画教材を見せたりできる大型提示装置の需要は大きい。実際に文部科学省が調査した「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」では、2023年3月時点の普通教室の大型提示装置整備率は88.6%と、多くの学校で普及が進んでいるデバイスだ。その大型提示装置に、今一つのトレンドが生まれている。それは画面の大型化と常設化だ。

既存の大型提示装置にある課題

 プロジェクターやデジタルテレビ、電子黒板などを指す大型提示装置。普通教室において高い整備率を誇る一方で、すでに利用されているデジタルテレビタイプでは表示領域が小さかったり、可搬型の電子黒板やプロジェクターは教室に常設されていなかったりして、使いたいときに使いにくいという課題がある。

 探究活動とICT教育に力を入れている三輪田学園中学校・高等学校は、2015年に校内へのWi-Fi整備を進め、2018年からは教職員端末にiPad Air、学習者用端末にiPadを段階的に導入するなど、GIGAスクール構想以前から教育現場のICT化を進めてきた。一方で、大型提示装置としては可搬型の電子黒板やプロジェクターを整備していたが、台数が限られていたことと、普通教室に常設していなかったことから日常的な活用が定着しない側面もあった。普通教室にはデジタルテレビが設置されており、そこにApple TVを接続することでワイヤレスの教材提示も行われていたが、画面サイズは30〜40インチ程度と小さく、教室の全ての生徒が提示された教材を確認するには厳しい状態だった。

「そうした教材提示の見にくさを補うため、多くの授業では教員のiPad Airの画面を生徒のiPadに配信する形で対応していました。しかしその場合、生徒の目線は常に下を向いてしまいます。iPadで正しく教材を見ているかどうか、教員側では判別がつかず、前を見て授業を受けさせたいという思いがありました」と語るのは、三輪田学園中学校・高等学校 ICTデジタル部 多田 隆氏。

MAXHUB—CHALK—は両脇にホワイトボード、中央に大型のタッチディスプレイが一体化した電子黒板だ。ディスプレイに教材を表示しながら、左右のホワイトボードに式を書き込んだり、ディスプレイ上の教材に文字を書き込んだりと、授業や教員によって柔軟に活用されている。スピーカーの質も高く、英語のリスニングでよく活用されているようだ。

一体化による使いやすさ

 そこで同校が2023年9月に導入し、現在活用しているのが「MAXHUB—CHALK—」だ。MAXHUBは中国メーカーの視源ホールディングスが製造するデジタルホワイトボードブランドであり、MAXHUB—CHALK—はその中の教育用電子黒板の名称だ。三輪田学園中学校・高等学校では、教育分野の展示会であるEDIX(教育総合展)の記事でMAXHUB—CHALK—の存在を知り、日本国内でMAXHUB—CHALK—を販売しているナイスモバイルに問い合わせを行った。

「大型提示装置のリプレース先を検討した際に、プロジェクターも検討しましたが、教室に常設するにはコストがかかります。かといって使う時だけ教室に持っていく方式では、従来の電子黒板などと同様に使われなくなってしまいます。また、内蔵スピーカーの質があまり高くなく、英語のリスニングに使いにくい側面もありました。そうした問題を解決し、必要としている機能が全て搭載されていたのが、MAXHUB—CHALK—だったのです。本校の校長の想いとして『ICT教育で頭一つ出る』というものもあり、『日本初上陸!』というMAXHUB—CHALK—を本校で活用したいと考えました」と語るのは、三輪田学園中学校・高等学校 技術・情報科教諭 佐藤仁美氏。

 現在、同校で活用されているMAXHUB—CHALK—は、そういった同校の教育理念に賛同したナイスモバイルより寄贈を受けたものだ。MAXHUB—CHALK—はホワイトボードと86インチの大型タッチパネルが一体化された電子黒板だ。ホワイトボードは黒板にも変更可能だ。現在は英語や数学の分割授業をメインに使用している普通教室に1台、設置されている。

「左右にホワイトボードが固定されているので、教員はそこに授業の目標を書き、中央のディスプレイにノートなどを表示して書き込んでいくような使い方が一般的です。書き込んだ内容はQRコードで生徒の端末に配布できるため、授業が非常に効率的に行えます。通常のホワイトボードだと、目標を書いても授業を進める内に消してしまいますが、MAXHUB—CHALK—であれば授業中ずっと残しておけます。また、スピーカーが内蔵されているため、英語の教員からはすぐにリスニング教材の音を再生できると好評です」と多田氏は実際の使用感を語る。

 生徒にとってもMAXHUB—CHALK—の導入効果は大きいようだ。これまでのテレビ画面への投映と比較して表示サイズは大幅に大きくなったため、教材が非常に見やすくなったという。

三輪田学園中学校・高等学校のCreative roomはグループワークが行いやすい机配置だ。充電保管庫にあるMacBook Airを活用して創造的な学びに取り組める。

より創造性を育てる環境へ

 三輪田学園中学校・高等学校のこうしたICT教育への取り組みは、電子黒板にとどまらない。同校では2018年からPC教室(現:Creative room)のデスクトップ型PCを廃し、MacBookを整備している。MacBookにはアドビの「Adobe Creative Cloud」がインストールされており、文化祭のポスターやパンフレットなどは、生徒自身が「Adobe Illustrator」で制作しているという。これらのMacBookは、2023年12月以降、M2チップを搭載した最新のMacBook Airにリプレースする予定だ。それに伴い、2024年度からはCreative roomに3Dプリンターなどのデバイスを導入し、より生徒の創造性を刺激する環境の構築を目指していく。

「これまでのICT教育がファーストステージならば、2024年度からはセカンドステージです。本校ではこれまでMDMを活用し、端末運用の制限を厳しくやっていましたが、これを来年度からは緩和し、デジタルの利用を通じて社会に積極的に関与する能力を育てるデジタル・シティズンシップ教育を進めていく方針です」と佐藤氏は、同校のICT教育の展望を力強く語ってくれた。