“野帳”の使い勝手をiPadで実現

PAPERLESS

実は意外と建設現場で使われているのがタブレットだ。しかし、せっかく導入したタブレットも図面を見るツールとしてしか使っていないケースがある。手書きのメモも全てタブレットに集約して、遠隔での作業も可能にしてしまおう。

どこからでも働ける環境へ

MetaMoJi
法人事業部
法人第一営業部 部長
今西信幸 氏

 今でこそ多くの企業で当たり前になったテレワークだが、一昔前は営業回りに行っていた従業員がオフィスに帰社してから見積書などの書類仕事をすることになり、長時間労働につながっていた。それが解消されるようになったのは、携帯性の高いモバイルノートPCと、どこからでも仕事ができるクラウドサービスが普及したことが大きい。

 こうした流れは今後、建設業においても増えてきそうだ。建設業では、建設現場の作業が終わると、資料作成やその日の天候チェックなどの業務をするため、現場事務所のPCに向かう。建設現場の作業が終わってから取り組むため、これらの対応は夕方から夜間、残業時間を使って行うのだ。

 こうした働き方を改善しなければ、建設業の長時間労働の解決は望めない。しかし、過酷な現場作業での業務の多い建設企業の従業員は、ノートPCを現場に持ち込むことが難しい。両手がふさがりがちの建設現場では操作が難しいことはもちろん、粉じんの舞う建設現場でノートPCを利用することは故障の原因にもなる。

大林組と共同開発したアプリ

 そこで現在、建設業界ではタブレットの導入が進んでいる。スマートフォンよりも大画面で使えて、ノートPCより直感的に操作できて手書きもしやすい。落下などの衝撃からタブレットを守るケースもセットで導入すれば安心だ。建設現場に持ち出して、その日の天気や作業進捗をタブレットから入力しておけば、事務所に戻ってからの書類作業を削減でき、残業時間の削減につなげられるのだ。

 そうした建設現場での記録ツールとして、MetaMoJiが大林組と共同開発したのがデジタル野帳アプリ「eYACHO for Business 5」(以下、eYACHO)だ。本アプリは、建設現場での利用率が高いメモ帳「野帳」のデジタル化を目指し、野帳のように書き込める自由さと、現場で業務が完結できる利便性の高さを両立させている。300社以上の建設企業に導入されており、現場作業のペーパーレス化に役立てられている。

 MetaMoJiの今西信幸氏は「大林組では、以前からタブレットを導入して業務効率化を図っていました。その中で、建設現場の従業員が当社の手書きノートアプリ『MetaMoJi Note』を利用して手書きのメモをとっていたことをきっかけに、大林組から『野帳の電子化アプリを開発したい』とお声掛けをいただきました。MetaMoJi Noteは多くのユーザーが使いやすい汎用的なメモアプリとして開発されていますが、eYACHOではそのMetaMoJi Noteの使いやすさを踏襲しつつ、建設に特化した便利な機能で、建設業のペーパーレス化を支援しています」と語る。

300社以上の建設企業に導入

 eYACHOを活用することで、建設現場では大きく三つの変化を実現できる。一つ目は、紙の野帳のデジタル化だ。手書きによるメモはもちろん、写真や動画、音声によって作業記録が残せるようになる。また、デジタル化によって検索性が向上したり、図面などの資料を持ち歩き、現場で直接メモ書きするような活用も可能だ。

 二つ目に書類作成時間の削減だ。紙の帳票の見た目のまま、タブレットで簡単に作成できる。入力項目の変更も現場の担当者がその場で行えるため、現場ごとに異なる帳票にも対応がしやすい。タッチ操作で数字などを入力でき、現場の隙間時間を利用した書類作成が可能になる。

 三つ目は遠隔コミュニケーションの高度化だ。図面や設計図に複数人が同時に書き込んで情報を共有できる「Share」機能を搭載しており、現場共有情報への同時書き込みや、現場の情報を上長にリアルタイムで報告できる。例えば新人の現場監督が、現場での施工方法について上長のアドバイスを仰ぎたい場合、従来であれば現場の状況をカメラで撮影して事務所に戻るなどの手間を要し、約1時間のロスが発生していた。しかし、Share機能を利用すれば現場の状況をShareノートに貼り付けて遠隔で上長と打ち合わせるだけでよいため、10~20分でアドバイスをもらえるようになるのだ。

「eYACHOは現在、共同開発を行った大林組はもちろん、青木あすなろ建設や前田建設工業など大手ゼネコンを含めて300社以上に導入されています。また、特にコロナ禍以後は3密回避にeYACHOの利用が有効と考えています。建設現場では朝礼や、打ち合わせ、密閉空間での長時間労働など、3密のリスクが生じがちですが、eYACHOを活用することで、例えば朝礼の内容はそれぞれのタブレットで閲覧できるようになります。離れた場所からでも朝礼に参加できるため、密集や密接を避け、感染リスクを低減しながら円滑なコミュニケーションが実現できるのです」(今西氏)

協力会社をチームドライブに招待すれば、工程表や図面をスムーズに共有できる。ライセンス不要でQRコードから会議に参加できる「Shareゲスト」は、シェアノートのみに参加可能だ。

トランシーバーのようにスマホで音声通話

COMMUNICATION

コロナ禍により多くの企業でDXが進んだが、それは建設現場も例外ではない。そうした中で、より円滑に遠隔での作業指示を行いたいというニーズも増えてきた。そこで有効になるのが、1対Nへの作業指示を可能にするアプリだ。

周辺機器との組み合わせで使いやすく

サイエンスアーツ
営業本部
小林 靖 氏

 建設現場に人が集まりにくい状況にある今、遠隔で作業の指示を行いたいというニーズが増加している。具体的には、映像をリアルタイムで共有することで作業指示を行いやすくするのだ。

 映像、音声、位置情報を利用した業務用チームコミュニケーションアプリ「Buddycom」を提供するサイエンスアーツの小林 靖氏は、建設現場における遠隔支援の需要を次のように語る。「建設現場では高所の作業支援や、クレーン車の操縦指示を行うため、音声で遠隔指示を行うトランシーバーが活用されています。しかし、音声だけの作業支援は、自分の視界に見えているものを口頭で説明する必要があり、情報の共有にハードルがあることも事実です。当社で提供するBuddycomは、スマートフォンアプリのマイクボタンを押すことで1対Nに対して音声の一斉配信が可能です。また、映像配信にも対応しているため、建設現場における情報共有に映像をプラスできます」

 Buddycomは、スマートフォンアプリに表示されたボタンを押すだけで、リアルタイムに双方向のグループ通話がスタートできるコミュニケーションツールだ。ユーザー数やグループ数の制限なしで1対複数の通話が行える。通話した音声は自動でテキスト化されるほか、実際の通話音声も記録される。また通話音声が設定した言語に翻訳して再生される「トランシーバー翻訳」の機能も備えており、外国人労働者とのコミュニケーション支援にも活用できる。

 またBuddycomは、Bluetoothスピーカーマイク「AINA PTT Voice Responder」やBluetoothイヤホンマイク「Bbradio2」を利用することで、スマートフォンを取り出さなくても音声通話が可能になる。また、ウェアラブルカメラ「EW-1」も周辺機器にラインアップしており、Buddycomと接続することで手軽に映像配信が可能になるのだ。

Bluetooth スピーカーマイク「AINA PTT Voice Responder」とBuddycomを組み合わせればリモートコントロール可能。
「EW-1」は、作業着に固定すればハンズフリーで録画できるウェアラブルカメラだ。音声のみでは伝わらない情報を共有できるため、建設業界からのニーズは高い。
BuddycomはiOS 10.0以降、Android 5.0以降で動作する。スマートフォンでもタブレットでも使用できるほか、Windows 10で使えるベータ版も提供している。

音声+映像の遠隔指示が重要に

「遠隔で作業指示を行う場合、手元や視界の情報を映像で共有した方がスムーズにコミュニケーションできます。実際、遠隔で映像と音声による作業指示を実現するためスマートグラスの導入を検討している建設企業もありますが、導入コストの負担や多機能過ぎて使いこなしにくいなどの課題から導入に二の足を踏んでいるケースも少なくありません。そこで当社のBuddycomとウェアラブルカメラを組み合わせ、導入コストを抑えつつ音声と映像による遠隔作業指示を実現するケースが増えてきています」と小林氏。実際、作業支援のためのウェアラブルデバイスを探している中で、同社のBuddycomにたどり着くユーザーも多いという。

 建設現場には、危険性を排除するために機材点検や危険予知運動などの安全管理業務が求められる。通常、安全管理業務は、担当支店から各現場を回って安全管理のチェックを行う。その業務にBuddycomを導入することで、遠隔から映像で各現場の様子を確認しながら、音声で指示を出すことが可能になる。Buddycomには、現場の状況をライブ動画で共有しながらグループ通話が可能なライブキャスト機能が搭載されており、映像と声による正確な情報共有が可能になる。

テレワーク環境整備にも使える

「トランシーバーからのリプレースとしても、Buddycomは有用な選択肢です。トランシーバーは同時に複数人への通話が可能なメリットがありますが、通信距離が限られているため建設現場内の情報共有しか行えず、支店と現場のような離れた場所をつなぐことは難しいツールです」と小林氏は課題を指摘する。その点Buddycomは3G、4G、LTEといったモバイルデータ通信やWi-Fiによって通信するため、エリア制限がなくリアルタイムのやりとりが可能だ。音声と映像を組み合わせたチームコミュニケーションツールとして、Buddycomは最適な製品と言える。

 小林氏は「建設現場におけるスマートフォンやタブレット、特にiPadの普及率は高いです。しかし、十分な活用ができていないのも現状で、導入したデバイスでどのような活用をすればよいのか、各社悩みを抱えています。クラウドストレージやARなど、さまざまなツールの導入を進めることでDXに取り組んでいますが、そのツールの一つとしてBuddycomも選択してもらうケースが増えています。導入のハードルが低く、またトランシーバーの機能を統合できることで利便性も高まるためです。特にアフターコロナではテレワークで業務ができる環境を提供していることが、会社のブランド価値の向上につながると考えられており、遠隔で建設現場への作業指示が可能になるBuddycomは訴求力の高い製品と言えるでしょう」と語った。