ワーキング革命 - 第9回

G Suiteによる新しい働き方を議論・体験

PwCコンサルティングが2016年6月に「Google イノベーションゾーン」を開設した。同ゾーンでは、G Suite(旧Google Apps for Work)のサービスを活用した新しい働き方を顧客と共創する。その取り組みの背景や効果について、PwCコンサルティングに取材した。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売/価格480円)からの転載です。

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さまざまなメンバーでアイデアソン

 Google イノベーションゾーンは、Googleのクラウドサービスを活用した新たな働き方を議論する場だ。企業の経営者や社員が参加して、ワークショップを開催する。さまざまな職階や所属、世代、経歴のメンバーがアイデアソンを行い、変革を実現するために自由な発想をぶつけ合う。ここから生まれたプランは、IT環境のプロトタイピングを行って、効果を体験する。

 PwCコンサルティングでは、自社のワークスタイル変革の経験をもとに、コンサルティングを通じて顧客企業の運営を支援していく。その共創サービスの概要は、大きく三つに分かれている。一つは、Googleのクラウドで提供されるツールの機能を紹介したり、働き方の変革の機会を共有するために、1~2時間ほどのセッションを行う「イマージョン・ラボ」。

 二つ目は、働き方の変革機会を特定し、クラウドツールを活用した変革後の姿や変革の施策を検討する2~4時間ほどのアイデアソンを行う「トランスフォーメーション・ラボ」。そして三つ目が、「プロトタイピング・ラボ」。ここでは、トランスフォーメーション・ラボで検討した変革施策をクラウドツールを使ってプロトタイピングする。

 そして、変革のビジネスケースを精査し、プロトタイピングの成果を通常業務にパイロット展開する。このような体系立てたラボを提供できるようになった背景には、PwC Japanグループがこの数年で取り組んできたGoogleとのアライアンスがある。

グローバルでGoogleを採用

 PwCグループがグローバルでGoogleのクラウドサービスを採用しようと決めた理由は、次の5点になる。

  1. コンシューマー向けの技術の利点を活用
  2. リスクとコストを適切にマネージ
  3. データ起点のサービスをクローバルスケールで提供
  4. Googleと連携したサービス提供
  5. セキュアなコラボレーションソリューション

 この五つのポイントについて、PwCコンサルティング プロジェクトマネジメントプロフェッショナルの井手健一 シニアマネージャーは、次のように説明する。

「ここ数年の若い層は、旧来型のエンタープライズ向けITよりも、SNSに代表される消費者向けの製品に慣れ親しんでいます。その利点を取り入れるために、ハングアウトに代表されるコミュニケーションツールの活用が重要でした。また、クラウドサービスを利用するとITの運用コストを低くできるだけでなく、全世界でサービスを利用したり提供できたりする利点もあります。大量のデータを分析する際にも、Googleのクラウドは適していました。さらに、PwCグループとしてGoogleのサービスをコンサルティングサービスの一環として提供できるようになります」

 日本では、2015年の6月からPwC JapanグループとGoogleの日本法人が正式にアライアンスを結び、コンサルタントのチームが中心となって働き方の変革に取り組んできたという。

便利さの体験が重要

 Google イノベーションゾーンの開設にあたり、自らがGoogleクラウドサービスによる働き方の改革に取り組んできたPwC Japanグループは大きな成果を得た。

「例えば、会議の準備にかかる時間を1/4に短縮できました。また、Gmailを使うことで旧来のクライアント・サーバー型メールシステムに比べて、作業時間を1/10以下に低減できています。さらに、Googleドキュメントを複数ユーザーがリアルタイムで同時に編集可能になり、議事録や企画書などの書類作成にかかる時間と労力も、大幅にカットできました。Googleクラウドサービスによって、個人の生産性だけではなく、部門やチームでの働き方、さらにはグローバル全体でも、一体感のあるコラボレーションを実現しています」と井手氏は評価する。

 例えば、米国のクライアントにプレゼンテーションを行うときに、Googleのハングアウトで日本とマレーシアを結び、それぞれの専門パートを担当するスタッフが説明を行った。その結果、米国のクライアントは、PwCグループがグローバルで連携してコンサルティングを実践していると実感し、高く評価した。

「Google イノベーションゾーンでハングアウトによるチャットやビデオ会議の様子を紹介するだけで、旧来のエンタープライズ向けITやテレビ会議システムしか経験してこなかったお客様は、大きな驚きと感動を示します。また、Googleドキュメントによる同時編集などは、いくら言葉や資料で説明しても、容易に納得してもらえません。しかし、実際にラボで体験してもらうと、その場で便利さを実感してもらえます」と井手氏はコラボレーション系ツールを体験してもらうことの大切さを話す。

 すでに、Google イノベーションゾーンを訪れた大手企業の中には、具体的な検討を開始している例もあるという。PwCコンサルティングでは、今後も積極的にGoogle イノベーションゾーンを活用した働き方改革のコンサルティングを推進していく。

「当社としても、G Suiteを積極的に活用することで、働き方の傾向を分析し改善する取り組みを継続していきます。また、G Suiteによるコラボレーションの充実は、生産性の向上だけではなく、一人で多くの仕事を抱えてしまわないように、助け合える環境を実現してくれると期待しています」と井手氏は今後の展望にも触れた。

(PC-Webzine2016年12月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

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