スケジューリングによって合理性のあるテレワークを実現
━━株式会社 グローバル・パートナーズ・テクノロジーに聞く
日本の多くの中堅企業にとって、継続的にIT戦略を立て、実践していくのは難しい作業だ。こうした企業をCIO(最高情報責任者)的な立場で支援し、ITでサポートしていく企業が株式会社 グローバル・パートナーズ・テクノロジーだ。同社がテレワークを本格的に導入した経緯やその成果について聞いた。
文/豊岡昭彦
グローバル・パートナーズ・テクノロジー、働き方改革のポイント!
①テレワークのテスト運用期間に全員が1回はテレワーク実施
②テレワークの計画書を提出し事前チェック
③行き過ぎたテレワークを避け、本格運用では1人週3日まで
CIO機能のアウトソーシングを受けるユニーク企業
株式会社 グローバル・パートナーズ・テクノロジー(以下、GPT)は、ユーザー企業の基幹システムなどの発注を支援する企業だ。ユーザー企業がシステム開発会社に出す発注の要件を明確にし、ユーザー企業の持続的なIT体制強化を実現するIT調達支援サービスを提供している。GPT社の代表取締役社長である坂本俊輔氏は、その事業内容について次のように語る。
「ユーザー企業がITを外部のシステム開発会社に依頼する場合、その発注内容があいまいなことが多く、結果的に満足のいくものができないことが多いのです。そこでこうした発注をフォローすることを考えて、この会社を立ち上げました。さらに、弊社のユーザー企業の規模では、システム部門といっても数名しかいないため、IT戦略の立案・遂行の責任者であるCIO(最高情報責任者)を置くことが難しく、それをサポートするために、現在はCIO支援サービスやIT事業立案支援サービスも提供しており、これを総称して『CIOアウトソーシング事業』と呼んでいます」
実際のCIOのように、ユーザー企業に常駐はしないが、CIO的な立場で、ユーザー企業のIT投資の効果を持続的に最大化していこうという事業だ。従来のIT系コンサルティングファームやシステム開発企業とは異なり、自社ではITを納品しないこと、システム開発企業から委託されないことなど、中立性を保った状態で、ユーザー企業のIT体制を支援することが特徴だ。
GPTの社員は14名で、そのうち13名がコンサルタント。数人ずつでチームを組み、複数のユーザー企業を担当する。特別な場合を除き、ユーザー企業には常駐せず、打ち合わせベースで戦略や企画を立案し、提案していくため、スタッフの技量と経験が重視される世界だ。
東日本大震災をきっかけにテレワークを考える
そんなGPTが2017年から本格的に取り組んでいるのがテレワークだ。6か月間のテスト運用を経て、2018年4月に制度化、現在まで10カ月以上が経過した。
坂本氏の「家族は大切にする」という方針のもと、従来から子どもの病気などの場合に在宅勤務をしたり、早退して自宅で作業することは認められていたが、本格的にテレワークを仕事に組み込もうと考えたきっかけは2011年3月の東日本大震災だった。
「地震は金曜日にあったのですが、月曜日は自宅待機にして、自宅で仕事をするようにしました。それで、自宅でもけっこう大丈夫ということがわかりました。その後、チャットのシステムやテレビ会議システム、クラウドストレージなどを導入して2017年10月からテスト運用を始めました」
週に2日、3人までの希望者に、自宅やサテライトオフィスなどで、週に1日以上必ずテレワークを実施することとし、その他の全員についてはテスト運用期間中に1回以上テレワークを実施することにした。このテスト運用には全員が参加、その結果、デメリットもあるが、メリットが大きいということになり、2018年4月に正式に制度化した。
メリットは、通勤などの移動時間がないので時間が節約できること、出先でもコミュニケーションが取れることなど。そして、テレワークをしてもスタッフの生産性がほとんど下がらないことがわかった。
内閣官房の政府CIO補佐官も担当し、坂本氏は社外にいることも多く、社員が会社にいてもコミュニケーションは不十分になりがちだった。しかし、社員のテレワークを進め、チャットやウェブ会議の導入により、テレワーク開始前よりもコミュニケーションが改善されたという。
「とはいえ、対面のコミュニケーションが少なくなり過ぎることは会社としては問題です。例えば、実際には必要のないような、たわいない会話の中にビジネスのヒントがあったり、仕事の助けになったりするわけです。ですから、“行きすぎたテレワークは避けよう”ということで、1人週3日までに制限した上で、制度化しました」
3か月計画でスケジュール管理を
制度化するにあたって、スタッフには3か月ごとの運用スケジュール(テレワークの計画)を提出してもらい、それを坂本氏がチェックすることにした。つまり、当日になって今日は自宅勤務ということではなく、事前に〇曜日は自宅勤務、あるいは特定の条件に該当する日は自宅勤務、というように各人が計画を立て、それに沿って仕事を進めるのだ。
「最初はいいかげんな計画もあって、駄目出しをしたのですが、最近は具体的な計画が出てくるようになりました」
これによって、テレワークの取り方だけでなく、そもそもの仕事の進め方を計画的に行うようになり、その効率もアップさせることにつながった。
事務担当のスタッフも含め、全員がテレワークができるようにしているため、電話への対応で誰か1人は必ず出社するようにしたり、電話を転送するなどの工夫も必要だったが、おおよそうまくいっているという。
また、対面コミュニケーションを活発化するために、マネージャークラスが部下と飲食する場合には1人5,000円までの援助を支給する制度も導入した(ただし、マネージャー同士の飲食には支給しない)。
「合理的に効率よく仕事をする」ことが信条と語る坂本氏なので、もともと無駄な会議などはほとんどなかったという同社。そのため、チャットシステムを導入したことで、もともと少ない会議が劇的に減るようなことはなかったという。現在は14名の小所帯だが、4月には新卒の社員も入社。社員も増やして行きたいと語る。
「理想としては、社員が外部の企業のCIOになって、空いた時間で弊社の仕事を手伝ってくれるような、そういう社員をどんどん育てていきたい」
坂本氏にとって、テレワークは仕事を円滑に進めるための方法の1つに過ぎない。社員が自社に留まることよりも、各人が実力をいかんなく発揮し、仕事にもプライベートにも1日24時間を効率よく使えるような働き方……。それこそが坂本氏の目指す“働き方改革”なのだ。
筆者プロフィール:豊岡昭彦
フリーランスのエディター&ライター。大学卒業後、文具メーカーで商品開発を担当。その後、出版社勤務を経て、フリーランスに。ITやデジタル関係の記事のほか、ビジネス系の雑誌などで企業取材、インタビュー取材などを行っている。