製品やサービスと通信を一体化する
新しいビジネスモデル「ConnectIN」とは

2025年1月21日、通信キャリア大手のKDDIは製品やサービスと通信を一体化する「ConnectIN」(コネクティン)を発表した。これは従来の通信契約とは異なり、通信料をメーカーの製品やサービスの価格にパッケージして販売できるビジネスモデルだ。これにより、メーカーはeSIM搭載のPCを買い切りモデルとして販売できる。まずはこのConnectINの仕組みや提供背景を解説していく。

製品と通信を一体化

KDDI
岩本克彦

 携帯通信キャリア大手のKDDIがスタートしたConnectIN。このConnectINを実現する一部の仕組みは、2023年6月に国内特許を取得している。

 ConnectINは前述した通り、一定期間の通信料をメーカーの製品に組み込んで販売できるビジネスモデル。製品と通信を一体化することにより、ConnectIN採用の製品を購入したユーザー企業は、月々の通信量の支払いが不要になる。企業は管理業務が効率化されるほか、年度での通信予算を確保する必要がなくなるのだ。

 KDDIは、メーカーが製品に通信機能を内蔵させる際に必要となる通信回線の手配や、管理、運用、データベース構築、システム開発を提供する。販売台数に応じたレベニューシェアを採用しており、メーカー企業側は初期投資不要で通信を含む機器販売が行える。製品に通信機能が内蔵されていることで、必要なコンテンツの自動アップデートがいつでもどこでも行えるメリットもある。

 こうした新しいビジネスモデルを提供するに至った背景に、IoTの普及がある。車やスマートメーターなど、さまざまな場所に通信が組み込まれてきた。それによる付加価値も大きい。これらにeSIMが組み込まれれば、さらなる利便性向上が期待できる。

 また、AIの普及も背景の一つだ。クラウドでAI処理を行うクラウドAIと、デバイス上でAI処理を行うオンデバイスAIの両側面での進化が加速しており、それらのAIをつなぐ役割として、通信の存在が重視されている。特に昨今はAI PCが注目を集めており、そうした端末に対して、物理的なSIMカード不要で、常時通信が可能なeSIMを搭載するメリットは大きい。

まずはノートPCからスタート

 KDDIではもともと、2023年11月から日本HPと協業したMVNOサービス「HP eSIM Connect」を提供していた。これは法人向けにデータ通信5年間無制限の利用権が付帯したeSIM対応モバイルノートPCを日本HPから販売するものだ。

 KDDI ビジネスデザイン本部 アライアンス営業副部長 岩本克彦氏は「当社では日本HPさまと協業する以前から、通信対応のPCの販売を行っていました。さまざまなモデルのPCを取り扱っていましたが、実際のところあまり売れ行きがよくありませんでした」と振り返る。その背景にはコストや運用の負担があるのではないか、と考えた同社は、日本HPに「通信が一体化したPCモデル」の販売を提案したのだという。

「当時はまだeSIM搭載のノートPCと5年間無制限のデータ通信をセットにしたモデルの需要が未知数でしたので、まずは2機種から提供をスタートしました。日本HPさまにお声がけをした理由として、法人向け通信対応PCのシェアが最も高かったことや、当社での取り扱いが多かったことなどがあります」と語る。

 このHP eSIM Connectは非常に大きな反響があり、販売パートナーやユーザー企業からも好評だったという。日本HPもHP eSIM Connect対応のノートPCを拡充し、多様なラインアップからConnectIN対応のノートPCを選択できるようにしている。

 このビジネスモデルをほかの企業にも広げていくべく、ブランド名称を付けて展開をスタートしたのがConnectINだ。1月21日の発表時点ではダイワボウ情報システム、Dynabook、レノボ・ジャパン、パナソニック コネクト、VAIOといった各社製品へのConnectIN採用が決定している。

 メーカーがConnectINを自社製品に採用するメリットは三つある。一つ目は前述した通り、初期投資が不要になる点だ。データを蓄積・管理するためのデータベース構築や端末の制御や管理を行うシステム開発などはKDDIが担う。「従来、MVNO事業者として通信を販売するためには専用の体制を構築する必要がありましたが、ConnectINではその体制をKDDIが受託します。新たな回線を取り扱うためのリソース不要で、回線を組み込んだ製品を作れるのです」と岩本氏は語る。

 また二つ目に、回線申込受付・不正利用防止法対策のための本人確認業務や申込種別の受付ルール作り、イレギュラー対応といった通信回線の契約管理や体制整備も、KDDIが行う。PCベンダー側が担う必要がないため、こちらも大きな利点だ。

 三つ目に、ユーザーの利用状況に応じた付加価値向上を提案できる点だ。管理者用サーバーやKDDIが提供する月次レポートから、申込者情報や回線情報、トラフィック情報などの利用状況を把握できるため、新しい提案につなげやすくなる。

ビジネスを加速するConnectIN

 もちろんエンドユーザー側のメリットも大きい。製品を購入するだけで月々の通信料金を支払わずに無制限で通信を利用できるため、従業員は通信容量を気にすることなく業務に取り組める。モバイルWi-Fiルーターを持ち運ぶことなく通信できるため、ハイブリッドワーク環境下の業務を円滑化可能だ。また、企業側のメリットとして、月々の通信量支払いが不要となるため管理業務が効率化されるほか、年度の通信予算の確保も不要になる。

「年度の通信予算が不要になることは、特に自治体や官公庁からの反響が非常に大きいポイントでした。またPCを利用する従業員目線で見ると、PC1台でどこでも通信できるため、逐一設定をしたり、Wi-Fiを探したり、テザリングをするような手間をかけずに業務を行える点も魅力でしょう。テザリングをする場合、スマートフォンのバッテリーの減りなども懸念点になりがちですが、そうした問題をクリアして働けます」(岩本氏)

 ユーザー企業はConnectIN対応のノートPCを購入した後、オンラインでの回線申し込みを行う。登録が完了すればシステム管理者に登録完了のメールが届き、設定用のアプリでボタンを押下するとeSIMのプロファイルがダウンロードされ、通信が利用できるようになるという。

 こうしたConnectIN対応のノートPCの存在が登場したことは、販売店にとっても大きなビジネスチャンスだ。岩本氏は「ノートPCに通信がセットになっていることで、従来のWi-Fiモデルと比較すると商品単価が高くなりますので、販売店にとっても売り上げが大きくなるでしょう。ノートPCの9割はWi-Fiモデルですので、ConnectIN対応のノートPCを取り扱うことはほかの販売店との差別化にもつながります」と指摘する。

 ConnectIN対応の製品リリースを発表している企業は現在のところPCメーカーが中心となっているが、電子黒板メーカーとの協議も進んでいるという。岩本氏は「決済端末を開発しているメーカーや、防犯カメラメーカーなどからも問い合わせがありました。これまでもIoTというワードの下、通信と製品を一緒に提供しているメーカーさまもいらっしゃいましたが、従来のビジネスモデルは月額契約での回線契約が常識でした。これがネックとなり、回線を組み込めないというメーカーも少なくなかったのです」と語る。そうしたメーカーもConnectINであれば自社製品に通信をセットで販売できるため、製品開発の幅も広がるといえそうだ。

 1月の発表では、ConnectIN対応のノートPCは法人モデルのみとなったが、将来的には個人向けPCにもConnectIN対応モデルを展開していきたいと岩本氏。「通信を使っていることを感じさせずにどこでも使えて、機能がどんどんアップグレードしていくような製品が、今後さらに展開していくと良いですね」と岩本氏は締めくくった。