ジャイアン鈴木の「仕事が捗るガジェット」 - 第31回

Snapdragon 850を搭載したディスプレイ回転型13.3インチモバイルノートPC


レノボ・ジャパン「Yoga C630」

モバイルノートPCで最も重要な要素はバッテリー駆動時間でしょう。できる限りバッテリー駆動時間を延ばすべく、スマートフォン向けCPUをPCに最適化した「Qualcomm Snapdragon 850 Mobile Compute Platform」を搭載したのが、レノボの13.3インチ2 in 1 PC「Yoga C630」(13万4784円。10%引きのeクーポンがある場合も)です。通常のPCとは違う本製品ならではの注意点も含めてレビューします!

文/ジャイアン鈴木


約18.6時間のバッテリー駆動時間を謳う2 in 1 PC!

Yoga C630は容量60Whのリチウムイオンポリマーバッテリー(4セル)を内蔵した2 in 1 PC。本体重量は約1.25kgと2 in 1 PCとしては比較的軽量ながら、バッテリー駆動時間は約18.6時間を謳います(JEITA 2.0)。実際バッテリーベンチマーク「BBench」で、ディスプレイ輝度40%、バッテリー残量5%までのバッテリー駆動時間を計測しましたが、14時間26分50秒と軽く大台を超えました。1泊2日の出張ぐらいならACアダプターがなくても大丈夫そうですね。

使い勝手におけるこの製品最大の特徴は、利用シーンに合わせてさまざまなスタイルで利用できること。360度ディスプレイを回転できるヒンジ機構が採用されているので、ノートブックモード、タブレットモード、スタンドモード、テントモードとさまざまなスタイルに変形可能です。文字やイラストを書けるデジタイザーペン「Active Pen」も標準で同梱されていますよ。

またYoga C630は標準でLTE通信に対応しています。互換性のあるnanoSIMカードを挿しておけば、Wi-Fi環境がない状況でもディスプレイを開くだけですぐにネットワーク接続機能を利用可能です。

Yoga C630はディスプレイが360度回転可能なヒンジ機構を採用しています。ThinkPadを開発しているレノボの製品だけにヒンジの剛性はしっかりと確保されています

左上からノートブックモード、タブレットモード、スタンドモード、テントモード。ディスプレイを回転させるとキーボードは無効化されるので、キーに触ってしまっても誤操作の心配はありません

デジタイザーペン「Active Pen」が標準で同梱。手のひらによる誤描画を防ぐ「パームリジェクション」機能によって、手を画面に置きながら自然な感覚で文字やイラストを描けます

左側面にnanoSIMカードトレイを用意。3G(WCDMA)はバンド1, 2, 4, 5, 8、4G(FDD-LTE)はバンド1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 12, 13, 14, 17, 18, 19, 20, 25, 26, 28, 29, 30, 32, 66, 42, 43, 46, 48、4G(TDD-LTE)はバンド38, 39, 40, 41をサポートしています

Qualcomm Snapdragon 850を搭載、メモリーは少なめの4GB

Yoga C630に用意されているのは1モデルのみ。CPUは前述の通り「Qualcomm Snapdragon 850 Mobile Compute Platform」(8コア、最大2.96GHz)、メモリーは4GB(LPDDR4X)、ストレージは128GB(UFS)を搭載。ディスプレイは13.3型フルHD IPS液晶(LEDバックライト、10点マルチタッチ対応)を搭載し、指紋認証センサーも標準でキーボード右下に用意されています。

インターフェイスはUSB 3.0 Type-C端子×2、nanoSIMカードトレイ、ヘッドセット端子とシンプルな構成です。ただしUSB 3.0 Type-C端子は両方ともUSB Power Deliveryに対応しており、右側面の端子はDisplayPort出力機能も備えています。右側のUSB 3.0 Type-C端子に対応ディスプレイを接続すれば、最大4K(3840×2160ドット)でデュアルディスプレイ環境を構築できます。

本体天面

本体底面。放熱口はYoga C630の底面には存在しません

上が本体右側面、下が本体左側面。本体右側面には電源ボタン、ヘッドセット端子、USB 3.0 Type-C端子が、本体左側面にはnanoSIMカードトレイ、USB 3.0 Type-C端子が用意されています。なおUSB 3.0 Type-C端子はどちらもUSB Power Delivery対応で、内1ポート(右側面)はDisplayPort出力機能付きです

上が本体前面、下が本体背面

ディスプレイ面。上部ベゼルには720pのWebカメラが内蔵されています

キーボードは84キーのJIS配列。キーピッチ、キーストロークは製品公式サイトに記載がありませんが、キーピッチは実測19mm前後とフルサイズキーボードと同等の広さが確保されています

本体の実測重量は約1196.5g。カタログスペックの約1.25kgは、かなりマージンが確保された値のようです

ACアダプターと電源ケーブルの合計重量は実測298g。毎日バッグに入れていても負担にならない軽さです

64ビット(x64)アプリが動作しない点に注意

さて冒頭でYoga C630は使い勝手に癖があるとお伝えしましたが、それにはいくつかの理由があります。まず本製品のOSには、「Windows 10 Home in S mode」がプリインストールされています。そのためアプリストア「Microsoft Store」以外から提供されているアプリをインストールするためには、「Windows 10 Home in S mode」から「Windows 10 Home」に切り替える必要があります。

「ホーム→更新とセキュリティ→ライセンス認証」から「Microsoft Storeに移動」を選択すると、「Windows 10 Home」に切り替え可能です

もうひとつ大きな制限があります。それは64ビット(x64)アプリケーションが動作しないことです。64ビット(x64)アプリケーションを実行しても、「このアプリはお使いのPCでは実行できません」というエラーメッセージが表示されてしまいます。「Microsoft Office」などのメジャーアプリには32ビット(x86)アプリケーションも用意されていますが、64ビット版(x64)しか用意されていないアプリケーションを使いたいのであればYoga C630は選択肢からはずれることになります。

64ビット(x64)アプリケーションを実行すると、「このアプリはお使いのPCでは実行できません」というエラーメッセージが表示されます

システム必要条件のアーキテクチャの項目に「x64」しか記載されていないアプリケーションはYoga C630では利用できません

アーキテクチャに「x86」、「ARM」、「ARM64」のいずれかが記載されていればYoga C630で動作可能です

またYoga C630の処理性能は決して高くありません。ベンチマーク「CINEBENCH R11.5」のCPUスコアは1.02pts。たとえば「Core i7-8650U」を搭載する「ThinkPad X1 Yoga」のCPUスコアが5.06ptsなので、Yoga C630の処理性能はその約20%ということになります。一般的な用途であれば十分なパフォーマンスを備えていますが、過度な期待は禁物です。

Yoga C630の「CINEBENCH R11.5」のCPUスコアは1.02pts

長時間駆動&常時接続可能なノマドワーカー特化型2 in 1 PC

正直、Yoga C630はメインマシンではなくサブマシンとして利用したい製品です。この製品だけですべての仕事をカバーするのは厳しいでしょう。しかしメジャーアプリやWebサービスを中心に活用しモバイルワークとして利用するのであれば、インテル系、AMD系のCPUを搭載したモバイルノートPCと使い勝手は変わりません。その場合には「Qualcomm Snapdragon 850 Mobile Compute Platform」を搭載したことによる長時間バッテリー駆動やネットワーク常時接続といったメリットが享受できます。バッテリー残量をそれほど意識せず、どこでもネットワーク接続を利用できるYoga C630は、ノマドワーカー特化型2 in 1 PCと言えます。

ジャイアン鈴木

筆者プロフィール:ジャイアン鈴木

EYE-COM、TECH Win、TECH GIAN、PDA Magazine、DIGITAL CHOICE、ログイン、週刊アスキー、週アスPLUSと主にPC系メディアで編集兼ライターとして勤務。2015年1月よりフリーの編集兼ライターとして活動を開始しました。