働き方改革のキーワード - 第22回

「議事録」は働き方改革の武器になる


グループウェアも広義の議事録だ

「会議こそ働き方改革の本丸」とはよく聞くが、どんな最新ソリューションを導入しても出席者が会議のイロハを知らなければ猫に小判だ。会議変革の鍵は「議事録」にある。議事録の適切な作成・運用こそが素早い意思決定を可能にする。スマートにITを援用して「議事の議事録化」を達成しよう。

文/まつもとあつし


そもそも議事録ってなんだろう?

 日本人は会議が苦手とよく指摘されます。書類を読み上げることに大部分の時間を使っていたり、参加しても全く発言しない人がいるなど、海外のビジネスパーソンから見ると奇異と映る会議が日々行われています。働き方改革、ホワイトカラーの生産性向上が叫ばれるなか、情報共有と意思決定の場としての「会議」もその形を変える必要があるのです。

 その変革の鍵となるのが「議事録」です。議事(アジェンダ)と議事録(メモ)は対の関係にあり、限られた時間の中で関係者が集い、的確に意思決定を行うためには、この2つがまず欠かせません。

 政治の世界でも議事録のあり方に注目が集まっています。実は日本において議事録を始めとした公文書の扱いについての法律(公文書法)が成立したのは2009年と最近のことなのです。その公文書もいまニュースとなっているように、開示請求があったにも関わらず破棄されていたり、ほとんどの箇所が黒塗りで開示されるなど意思決定の過程を私たちが知るには十分ではない運用が続いています。

 日本は議会制民主主義を採用しており、私たちの代表として議員が国や地方自治体の議会で意見を交し、政策を決定していきます。その執行は行政を担当する組織(役所など)が行います。私たち自らがこのプロセスに直接は関わらないため、誰がいつどのような意思決定を行ったのか、その検証が行なえるようになっていなければならず、その上で極めて重要な文書の1つが議事録ということになります。

 ビジネスの世界でも、株式会社であれば株主に対して説明責任がありますし、顧客に対しても情報開示の必要性が特に指摘されています。またいざ訴訟ともなればフォレンジック(コンピューターやサーバーなどの記録を調査すること)が行われますので、適切な記録を残しておくのは全ての事業者に求められていると言えるでしょう。

スマートワーク時代の「議事録」とは?

 皆さんの会社では会議の前に議事は共有され、それに目を通していることが前提となっているでしょうか? 「さあ会議をはじめようか」と部屋に集まり、「さて何について話し合おう」では全く生産的ではないのはもちろんなのですが、以前ご紹介したように、クラウド上に議事を用意しておき、会議を行いながらそれを更新することで、議事録をある程度完成させ、会議後は出席者に「コメント可」で共有し修正点があればそこで指摘を入れてもらうという方法を採れば、効率的に議事録を用意することができます。

コミュニケーションツールを利用することで、簡単に議事を元にした議事録作りが可能だ。

 議事録のポイントは、何が「どのように」決まったかを明らかにし、記録として残すことです。そうすることでその場に居なかった人でも、あとからそのプロセスを確認しそこから様々なことを学べます。いわゆる「組織学習」のために欠かせない教材にもなると言えるでしょう。

 さらに一歩推し進めれば、グループウェアでの日々のコミュニケーションも、いわば意思決定のプロセスをリアルタイムで記録していった「議事録」であるとも言えます。異なる組織間や遠隔地とのコミュニケーションにオンラインミーティングツールも活用されるようになっている中、議事録の形も少しずつ変化していくはずです。スマートワーク実現のための強力な武器としてあなたの会社の「議事録」のあり方も見直してみませんか?

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筆者プロフィール:まつもとあつし

スマートワーク総研所長。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ASCII.jp・ITmedia・ダ・ヴィンチニュースなどに寄稿。著書に『知的生産の技術とセンス』(マイナビ新書/堀正岳との共著)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)など。