働き方の変化に合わせ法人市場は回復傾向

PC

 MM総研は2023年度の国内PC出荷台数を調査した。2023年の国内PC出荷台数は前年度比4.1%減の1,077.5万台と、3年連続で減少した結果となった。内訳として、個人市場は前年度比11.7%減の339.3万台と引き続き減少した半面、法人市場は前年度比0.1%減の738.2万台とほぼ2022年度と同じ結果となった。

 個人市場の減少の背景として、2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法の分類が5類に移行されたことに伴う、巣ごもり需要の反動が挙げられる。しかしネット通販の強化や10万円以下の商品ラインアップの強化などが下支えし、販売台数の落ち込みに歯止めがかかったとMM総研は分析している。一方で法人市場は2022年度とほぼ変わらない結果となったが、その要因として、ハイブリッドワークをはじめとした働き方の変化が挙げられる。働き方の変化に対応するために、高性能なノートPCが企業の間で求められ、従業員のPCの買い替えが進んだのだ。それに伴い、法人市場はGIGAスクール端末を除くと、前年度比2%増の706.1万台と、増加に転じた結果となった。

 2024年度のPC出荷台数は、前年度比12.1%増の1,208.3万台になる見込みだ。個人市場は2.4%増の347.4万台と若干の回復をみる一方で、法人市場は16.6%増の860.9万台と大幅な回復を予測している。

 出荷台数の拡大の要因として、2025年10月に迫るWindows 10の延長サポート終了によるPCの更新需要の本格化が挙げられる。OSの更新需要は2025年度上期まで続き、出荷台数の拡大につながる見込みだ。さらに、GIGAスクール端末の更新も出荷台数の拡大を後押しするとみている。GIGAスクール端末の更新は2025年度下期がピークとなることが予測されており、OSの更新需要と併せて、2025年度は2024年度を上回る販売台数となる見込みだ。

2024年度のPC市場ではAI PCに注目

 同調査では、2024年度のPC市場における注目点としてAI対応の半導体を搭載したPC「AI PC」を挙げている。

 2024年5月にマイクロソフトは、AIの処理に優れたPC「Copilot+PC」を発表した。さらにクアルコム製のNPUを搭載したPCが、各メーカーから6月以降順次投入される。こうしたAI PCの登場による日本市場の変化について、同社 取締役研究部長 中村成希氏はこう語る。「日本は人口減といった社会背景に加え、世界に発信できるコンテンツが豊富にあるため、世界的に見てもAIを活用して生活スタイル変革や働き方革新を提唱しやすい環境にあります。パーソナルAIがキラーコンテンツとなり、PCを利用して一人ひとりが自分専用のAIを持つ時代が来るか、日本市場での動向が世界的に注目されるでしょう」

サイバー攻撃の増加を背景に市場拡大

Cyber Security

 アイ・ティ・アールはWebアプリケーション脆弱性管理市場の市場予測を発表した。同調査によると、2022年度のWebアプリケーション脆弱性管理市場の売上金額は前年度比21.6%増の27億6,000万円となり、2023年度は前年度比28.3%増の35億4,000万円が見込まれる。

 市場拡大の背景として、Webアプリケーションの利用拡大に伴う、Webアプリケーションの脆弱性を突いたサイバー攻撃の増加が挙げられる。サイバー攻撃の被害に遭うと、機密情報や個人情報の漏えい、企業活動の停止など膨大な損害を被ってしまう。そのため、DevSecOpsの一環として出荷前診断などの脆弱性診断を行い、強固なWebアプリケーションを構築する動きが加速しているのだ。さらに、2023年1月に経済産業省が2024年度末を目途として、ECサイトの脆弱性診断の実施を義務化する方針を発表していることも市場の成長を後押ししている。

 これらの要因によって今後も市場は安定した成長が見込まれることから、2022〜2027年度の年平均成長率は15%となり、2027年度には売上金額が55.6億円に達する予測だ。

 同社 コンサルティング・フェロー 藤 俊満氏は同市場の将来動向についてこう語る。「アプリケーションのクラウド移行やクラウドサービスの利用増加に伴い、クロスサイトスクリプティングなどの手法を使ったWebアプリケーションへの攻撃が増加しており、アプリケーション領域に対する脆弱性診断が重要になっています。クラウド移行やクラウドサービスのリリース前には、ポートスキャンだけではなくWebアプリケーションの脆弱性診断が必要となることから、Webアプリケーションの脆弱性診断サービスの市場は今後も拡大するとみられます」

※ベンダーの売上金額を対象とし、3月期ベースで換算。
※2023年度以降は予測値。

人材不足を補うために遠隔接客サービスの導入が進む

Remote Customer Service

 シード・プランニングは遠隔接客・リモート接客・遠隔指示といった遠隔接客サービス市場を調査し、「遠隔接客サービスにおけるロボット・AI・アバターの最新動向 2024〜遠隔接客サービスの市場動向とロボット・AI・アバター活用動向〜」にまとめた。同調査によると遠隔接客サービス市場の市場規模は、2018年の17億円から増加の一途をたどり、2022年には81億円となり、2025年には127億円が見込まれている。

 市場規模の拡大として、新型コロナウイルスの感染拡大による非接触・3密回避の推奨が挙げられる。非接触・3密回避を行いながらも事業を継続する手段として遠隔接客サービスに注目が集まり、2020〜2022年にかけて20社以上が参入したのだ。さらに2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法の分類が5類に移行された後は、人材不足を補うサービスとして遠隔接客サービスの導入が進んでいる。導入分野としては小売業が78.6%と最も多く、そのほかでは金融・保険(47.6%)、受付(45.2%)、自治体・行政(42.9%)、観光業(42.9%)での導入が多い結果となった。

 また同調査では、遠隔接客サービスのAI・アバターの活用状況についても調査している。アバターを採用している企業が50%、AIを採用している企業は31%という結果となった。また、AIを採用している企業は、全てアバターも採用していた。生成AI技術の発展に伴い、遠隔接客サービスにおいても生成AIを搭載したアバターの登場による業界の動向が注目されると、シード・プランニングは分析している。