POSターミナル市場は横ばいし市場拡大へ

Point of Sales

 矢野経済研究所は、国内のPOSターミナル市場を調査した。2022年度のPOSターミナル市場のメーカー出荷台数は、前年度比106.4%の9万6,773台となった。背景として、コロナ禍において投資を控えていた流通小売業各社がシステムへの投資を再開したことがあり、この影響が市場回復につながった。ただし、メーカー出荷金額では前年度を下回る376億3,900万円(同94.0%)となっている。

 2023年度はさらに回復傾向が顕著となり、出荷台数は10万7,837台(同111.4%)となった。また昨今のインフレーション傾向およびPOS端末のセルフ化によって製品単価の上昇が影響し、出荷金額でも452億2,100万円(同120.1%)となった。

 POSターミナル市場に関わる昨今の業界動向についても分析している。例えば、今後のPOSシステムにおけるニーズは、会計情報の読み取りから精算までを利用者自身で行う「フルセルフレジ」が中心に展開されていくと見込んでいる。理由は、流通小売業における人手不足の深刻度が増しているためだ。特に「レジ係」と「品出し係」に関しては深刻な状況だ。そうした中、これまで急速に普及してきたチェックアウト業務の際人手を要する「セミセルフレジ」であったが、今後はチェックアウト業務が不要となるフルセルフレジに需要がシフトすることが考えられる。そのほか、今後はチェッカーの人員を究極まで削減できるカートタイプのレジとスマホを活用したスマホレジのチェックアウトシステムが大きく需要を伸ばすとも予測している。

コンビニのPOS端末に入れ替え特需

 2025年度の同市場の出荷台数は11万2,781台(同105.0%)とみている。出荷金額は、競争激化からセルフタイプレジの製品単価低下が見込まれ、同90.4%の428億5,700万円と予測する。

 2026年度と2027年度には、同市場は大幅な増加が期待される。理由として、大手コンビニエンスストアチェーンのシステム更新による、POSターミナルの入れ替え需要がある。コンビニのPOSシステムは前回も3大チェーンがほぼ同じ時期に一気に入れ替えたため、次回もほぼ同じような時期に一度に需要が集中する見通しだ。

 上記を踏まえ、2026年度の同市場の出荷台数は13万5,337台(前年度比120.0%)、2027年度は17万5,938台(同130.0%)への拡大を予測する。出荷金額では2026年度が514億2,800万円(同120.0%)、2027年度は703億7,500万円(同136.8%)になる見込みだ。

※メーカー出荷(台数、金額)ベース。
※2024年度は見込値、2025年度以降は予測値。
※POSシステムは、サーバーやPOSターミナル(端末)、POSソフトウェア、その他周辺機器から構成されるが、本調査ではPOSターミナル(端末)の市場規模を算出した。ただし、クラウド上のPOSソフトウェアを市販のタブレット(端末)で利用するサービス、タブレットPOSは対象としていない。

販売・仕入・在庫管理製品はCRMも要考慮

Stock Management System

 ノークリサーチは、中堅中小企業の「販売・仕入・在庫管理」製品/サービスの訴求機会について調査した。本調査によると、2023年から2024年にかけて、富士通の「GLOVIAシリーズ」、OSKの「SMILEシリーズ」、オービックの「OBIC7」といった上位三つの関連製品/サービスのシェアの差が縮小した。この結果から、販売・仕入・在庫管理製品を導入済みの場合でも、昨今では製品/サービスの変更や他分野への代替が発生していると分析している。

 販売・仕入・在庫管理製品に影響を与えやすい分野としては、CRM(Customer Relationship Management)がある。例えば、CRMの導入状況別の販売・仕入・在庫管理製品の導入状況の調査では、導入済みのCRMを変更したユーザー企業で、導入済みの販売・仕入・在庫管理製品を変更した割合が48.6%に達した。上記を踏まえ、販売・仕入・在庫管理製品のシェア拡大を図るには、CRMとの兼ね合いも考慮することが大切だとノークリサーチは指摘する。

 さらに、導入済みのCRMを変更しようとするユーザー企業(緑帯)では、販売・仕入・在庫管理製品において「経済環境を踏まえた今後の予測が立てられない」「少量多品種の商材に対応した売り上げ分析ができない」という課題を挙げる割合が高い。これを踏まえ、販売・仕入・在庫管理の拡販を図る際には経済環境を加味した売り上げ予測を可能にすることや、少量多品種の商材ポートフォリオにも対応できる売り上げ分析機能を実装するといった取り組みを進めることを推奨している。

XRソリューション市場はAR/MR分野が成長

Extended Reality

 デロイト トーマツ ミック経済研究所は、VR/AR/MRを総称したXRソリューション市場について調査した。

 2023年度のビジネス向けXRソリューション市場の売上高は、369.2億円(前年度比27.3%)となった。同年度の売上高の内訳は、「VR」が274.1億円(構成比74.2%)、「AR/MR」が95.1億円(構成比25.8%)だ。 市場拡大の背景として、現在の同市場は、効果的な活用方法が明確になりつつあり、特定の業種や用途で先行的に導入が進んでいることがある。例えば、製造業や建設業で技術伝承・教育目的での利用などが挙げられる。また、生成AIを組み込んだXR商材も登場し、デバイスの音声操作やその場での質疑応答が可能になっている。2028年度までの同市場の年平均成長率は20.6%増と成長を継続し、2028年度には941.2億円に達する予測だ。

 同市場のうち、ビジネス向けAR/MRソリューション市場も活発化が見込まれる。2023年度の同市場の売上高は、95.1億円(前年度比28.6%増)だ。理由として、製造業や建設業、エネルギーやインフラ業などの現場作業のサポートにAR/MRソリューションを組み込む事例の増加がある。さらに、ARグラスの技術進化と普及が進むにつれて、コンテンツの利用増加や、ARグラス越しに見える世界がメディアとなり、映し出された映像上に広告を出すなどの新しいビジネスモデルの誕生も期待される。

※2022年度と2023年度の数値は実績値、2024年度の数値は見込値、2025〜2028年度の数値は予測値。