生成AIで進化したOCRでデータ活用を促進「DX Suite」
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して働き方を改革していく上で課題となっているのが、紙ベースの資料だ。2022年1月にペーパーレス化を促進するために電子帳簿保存法が改正されるまで、税務関係など一部の書類は紙での保存が義務付けられていた。その影響で多くの企業には財務関係の書類を含めて請求書や契約書などの紙が膨大に保管されており、書類のデータ化はDX推進にとって重要なテーマとなっている。そうした課題に応えてくれるのが、生成AIで進化したOCRによってデータ活用を促進するAI InsideのAI-OCRサービス「DX Suite」だ。
紙も画像もPDFもデータ化できる
コロナ禍を経て、会議資料や業務マニュアルといった書類のペーパーレス化が進んだ。しかし企業における全ての書類がペーパーレス化されているわけではない。財務関連の書類や古い図面、法改正前の契約書といった一部の書類は、紙のままで保管されデジタル化が遅れている。それに加えて、文字や数字ではなく画像で保存されている書類も多い。さらに、デジタル化はされているものの、データとしては利用できないPDFファイルも増えている。
こうしたアナログ的な保管資料のデータ化に貢献してくれるサービスが「DX Suite」である。DX Suiteは、AI insideが独自に開発した文字認識AIを搭載し、高度な読み取り精度を誇るAI-OCRサービスだ。あらゆる帳票内の活字や手書き文字を事前学習不要で高精度に読み取り、紙の情報をデジタルデータに変換できる。2024年のアップデートでは生成AIによる非定型帳票の読み取り精度も大幅に向上させた。そのおかげで、さまざまな書類のデータ化を大幅に効率化し、データマネジメントの高度化とDX推進を後押ししてくれる。
対象となる業種や業務は多岐にわたるが、経理などのバックオフィス業務では、注文書や発注書、請求書、納品書、契約書、履歴書などのデータ化を促進する。また、金融業界ならば、住宅ローン申込書や口座振替依頼書、保険加入申込書、健康診断書といった各種書類をデジタルデータに変換できる。そして、自治体や大企業からデータ入力業務を請けているBPO(業務委託)事業者であれば、給付認定申請書や就労証明書などを効率良くデータ化することが可能だ。
DX SuiteがほかのOCR製品よりも優れている点は、読み取り精度の高さや対応する帳票の幅広さにある。まず読み取り精度では、実際のビジネスで利用されている大量のデータを学習したAIを活用することで、高精度な読み取り精度を実現している。累計のAIリクエスト実績は85億回を超え、契約者は約3,000社、約6万名のユーザーが利用している。また読み取れる帳票は、プリセットされている1,200種類の対象帳票に加えて、登録されていない帳票でも「項目抽出」機能により、読み取りたい項目を調整できる。さらに図面などの特殊な帳票も、ページ内の全ての文字列を一括で読み取る「全文読取」機能で対応可能だ。
非構造化データの構造化で業務改革
DX Suiteは、AI-OCRを活用したデジタルデータ化アプリケーションとして、非構造化データを構造化できる利点がある。企業内に眠っている紙帳票のデータをデジタル化し、生成AIなどで利活用が行える状態にできれば、データを活用したDX推進やデータ駆動の意思決定が行えるだろう。
生成AIの活用には、信頼できる企業内データの整備が求められている。そうした需要にも、アナログデータを高精度にデジタルデータ化するDX Suiteは、データマネジメントの高度化で応える。実際に毎月平均450件の帳票を手入力でデータ化していた大手運送事業者では、DX Suiteを導入することで、年間で6万時間弱の事務作業の削減を実現した。また、新型コロナワクチンの予診票を全自動でデータ化したSIerでは、人件費を約40%削減している。そのほかにも、1万7,000件の申請書を人の手で処理していた市役所では、業務時間を全体で500時間削減し、デジタル化により各区役所から申請情報の閲覧が可能になった。さらに何百枚もの書類を手入力し目視点検していた保険会社では、新契約処理業務にかかるコストを約40~50%削減している。
大手企業や官公庁だけではなく、多くの企業はまだまだ紙を活用している。取引先の業務に紙が垣間見られたら、DX SuiteによるDX推進と働き方改革を提案できる可能性は高いだろう。
ワークスタイル改革を提案するポイント
DX Suiteは、クラウドサービスとオンプレミスの両方で提供されている。オンプレミスでは、AI insideが独自に開発したエッジコンピューター「AI inside Cube」が月額サブスクリプションで提供される。ハードウェアの選定やシステム設計、大規模な初期投資は不要だ。
クラウドであれオンプレミスであれDX Suiteとワークスタイル改革を組み合わせた提案は、DX推進のファーストステップとなる。業務のDX推進は、デジタル化とデジタル活用という二つのステップを経て、最終的なDXへと至る。その第1ステップとなるデジタル化において、DX Suiteは重要な役割を担う。中でもファクスをベースにした受発注を行っているような事業者には、AI-OCRによる帳票のデジタル化というニーズは高い。また、生成AIの本格的な活用のためには、先に触れたように精度の高いデータが求められている。特に、法務や社内規定のようにデータの正確性が重要な分野では、過去の書類を高い精度でデータ化する必要がある。そうしたニーズを発掘していくと、DX Suiteを提案できる領域は広がるだろう。
さらに、紙だけではなく、PDFのデータ化も提案のポイントになる。DX Suiteは生成AIを活用した新機能群「Extensions」の一つとして、画像やPDFの文字情報を読み取り、指定したExcelの項目に自動で転記する「ファイル転記」機能を備える。ペーパーレス化は促進したものの、膨大なPDFファイルを抱えている企業にとって、Excelへの自動転記による埋もれた情報の利活用は、まさにDX推進の大きな原動力となる。そのほかにも、PDFで送られてきた融資申込書などを審査用フォーマットに自動転記するなど、業務の効率化や省力化にも活用できる。紙でもPDFでも、人が見て確認して転記や再入力している業務であれば、幅広い分野でDX Suiteによる働き方改革を実現可能だ。