これまでビジネスでの生成AIの活用に向けて多くのPoCが行われているものの、現場での実践に至らずPoCで終わってしまうケースが少なくない。そうした状況から「生成AIの活用はこれから」「もう少し様子を見る」と考える企業が多い。しかし言うまでもなく企業のDXの推進・実現に生成AIの実践的な活用は不可欠であり、ITビジネスのプレーヤーにとっては新たなビジネスチャンスを生み出すテクノロジーだ。生成AIの活用を促進し、それに伴うIT製品の需要を喚起するには、実践的なユースケースをエンドユーザーに示す必要がある。そこで昨年12月18日に初開催された「生成AI大賞2024」に応募した139件の生成AIの活用事例の中から、最終審査で受賞した優れたユースケースを紹介する。
生成AIの実装を目的に事業会社が団体を設立
Generative AI Japanの目的と
「生成AI大賞」がもたらす効果
昨年12月18日、生成AIの優れた活用事例を表彰する「生成AI大賞」が初開催された。生成AI大賞には139件もの応募があり、二次選考を経て8件の活用事例が選出され、1件のグランプリと2件の特別賞、5件の優秀賞が授与された。このアワードを立案、開催したのがGenerative AI Japan(GenAI:ジェナイ)だ。GenAIは昨年1月に設立されたばかりの新しい団体で、生成AIの社会実装に寄与することを目的としている。GenAIの設立の経緯と、生成AI大賞の狙いについてGenAIの発起人で業務執行理事および事務局長を務める國吉啓介氏に話を伺った。
進化を続けるテクノロジーを
どう役立てるべきかを議論する
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國吉啓介 氏
GenAIの発起人である國吉氏はベネッセコーポレーションでデータソリューション部 部長を務める。同社では生成AIが普及する以前より業務や顧客に提供するサービスにAIを活用してきた。例えば学習サービス「進研ゼミ」でのAIを活用して受講者一人ひとりに適した学習コンテンツを提供する取り組みや、介護事業での介護施設の入居者の状況観測データをAIで可視化して、適切なケアをフィードバックする取り組みが挙げられる。
このように同社がAIの活用を進めていく中で、生成AIの普及が本格化し始めた。生成AIによってAIの活用がしやすくなり、生成AIの活用がもたらす効果への期待が高まった。その一方で課題や懸念もある。
その点について國吉氏は「当社は教育や介護の事業で子供や高齢者と向き合っているため、生成AIがどのような影響をもたらすかを見極めながら、注意して活用する必要があります。またAIのテクノロジーが進化を続ける一方で、それをどう生かせばお客さまの価値につながるのか、そのためにどうデータ環境を整えていくのか、日々悩みがありました」と説明する。
國吉氏が話すこうした悩みは生成AIを活用しようとする企業の多くが直面しており、それは市場調査や國吉氏が他社のAI活用に携わる人たちとの交流でも明らかだった。そして「生成AIを実装してお客さまや企業や社会の役に立つ活用方法とは何かを、1社だけで議論しても限界があると思いました。同じ考えを持つ人が大勢いることも分かり、多くの企業や団体が連携し、共に議論し、課題解決を考えるコミュニティが必要だと考えました」と振り返る。
ユースケースを基に日本社会に役立つ生成AI活用を議論し、共創できる場を作りたいと考える國吉氏は「一部の生成AI先進企業だけではなく、幅広い企業がAIのテクノロジーをうまく活用し、日本全体の産業競争力を高めることにも貢献していきたいと考え、幅広い事業会社が参加しやすい一般社団法人としてGenAIを立ち上げました」と説明する。
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ユーザー企業に加えてIT企業も参画
生成AIの活用促進と社会提言を行う
ベネッセコーポレーションの國吉氏とGenAIの顧問を務める同社 専務執行役員 家庭学習カンパニー長 橋本英知氏、そしてウルシステムズ 代表取締役会長 漆原 茂氏が発起人となり、慶應義塾大学 医学部 教授 宮田裕章氏が代表理事となりGenAIが発足した。
そして生成AIのユーザー企業をはじめアマゾン ウェブ サービス ジャパンやグーグル・クラウド・ジャパン、日本マイクロソフトなどITベンダーが理事に就任した。現在(2025年2月時点)で会員は事業会社を中心に70社以上が集まっている。業種は実にさまざまで、多様な企業が参加しているのも特徴だ。
GenAIの活動は「先端技術の共有と連携」や「ビジネスユースケースの共有と実装支援」、各社のラボと連携した「共創・協業」「教育・学び」、そして「生成AI活用のルール作り・提言」という五つのテーマにおいて、研究会やイベントを通じて活用事例の収集とその知見化を進め、生成AIの活用促進と社会提言を行うというもの。
上記の活動を通じた設立1年目の成果としては、毎月実施している技術動向・ユースケースの研究会での発表内容が情報処理学会の論文に掲載されたこと、イベントのセミナーへの登壇による情報発信や公的機関との連携・提案をしたこと、そして国内最大規模の生成AI関連アワードとなる「生成AI大賞2024」を開催したことなどが挙げられる。
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初開催ながら139件もの応募
生成AIの進化の速さが要因
生成AI大賞2024は昨年9月上旬から募集が開始され、10月上旬の締め切りまでに139件の応募があり、応募時に提出されたエントリーシートと取り組み紹介シートの内容で第一次選考が行われた。その審査基準は「課題設定(解決すべき課題の解像度)」「実装の工夫(技術面および組織や体制における工夫の深度)」「インパクト(実用面での成果と新規性)」「ガバナンス(法制度や倫理面での配慮)」「将来性(持続性および応用可能性)」の五つだ。
第二次選考は昨年11月に実施され、オンラインにてプレゼンテーションと質疑応答による審査が行われた。その結果、昨年12月18日に開催された生成AI大賞2024に8社が選出され、最終プレゼンテーションと質疑応答による最終審査によって各賞の受賞者が決定された。
生成AI大賞は今回が初開催だったにもかかわらず139件もの応募があったことについて國吉氏は「メディアやほかのAI関連団体と連携して告知していただいたことが認知を広げたのだと思います。また生成AIは進化が速いため、世の中に開示して意見をもらった方が早くブラッシュアップできると考えて、発表の場として応募していただいたケースもあるのではないでしょうか。技術的な特許を守ることよりも、活用で得られた成果が価値のあるものなのか、事例を公表することで意見が聞けて自社の成果の価値が分かるという側面もあると思います」と説明する。
ちなみに応募時から第二次選考、最終選考までプレゼンテーション資料の差し替えが頻繁に生じたといい、生成AIの進化の速さを物語っている。こうした審査期間中に頻繁に情報を更新する行為を通じて、生成AIの活用状況を振り返り、さらなるブラッシュアップが進むという効果もあったのではないだろうか。
國吉氏は生成AI大賞2024の最終審査の結果について「こうした課題に対してこのように生成AIを活用すると、このように課題が解決されるという、具体的に理解できる活用事例が選ばれました。まずは生成AI大賞2024で受賞した8件の活用事例を広く共有していただくことで、生成AIの実装を促進して日本の産業と社会にも貢献したいと考えています。また生成AI大賞2024で公表された活用事例に関心のある企業をつなげて、効果を共有したりブラッシュアップしたりする機会も提供していきます」と語っている。
【CASE 1】Railway
名古屋鉄道
新しいことに積極果敢に挑戦
生成AIで新たな価値を創造していく
中部圏の公共交通を担う企業として、街や人、地域と共に歩んできた名古屋鉄道。2024年8月に名鉄グループ経営ビジョンスローガン「名鉄×WAO!(メイテツワオ)」を策定し、「安全」を基盤に「驚き」「感動」「憧れ」につながる価値を提供し続けている。新しいことに積極果敢に挑戦していくことをグループを挙げて推奨しており、「生成AIプロジェクト」はその一環だ。
生成AIを活用して
事業の構造改革を図る
2024年6月25日に創業130周年を迎えた名古屋鉄道。愛知県と岐阜県を中心に約440kmの鉄軌道路線を持ち、これまで大勢の人々の移動を支えてきた。そんな同社が課題として挙げるのが、駅員や乗務員の慢性的な人手不足である。「現在、全276駅あるうちの200駅以上が駅員を配置していない駅員無配置駅となっています。また、当社には50代以上の社員も多く在籍しており、今後の定年退職に伴う人手不足も懸念されます。社員の業務負担なども考慮し、解決を図っていました」と名古屋鉄道 デジタル推進部 グループDX担当 シニアアソシエイト 山田敏大氏は話す。
加えて、名古屋鉄道を中核に連結子会社104社と持分法適用会社14社(2024年10月時点)で形成される名鉄グループも問題を抱えていた。「名鉄グループは、交通・運送・不動産・レジャーサービス・流通・航空関連サービス・その他の七つのセグメントで構成されています。課題が生じるきっかけとなったのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。外出制限などによって人々の行動や習慣が変わったことで、ほぼ全ての事業がダメージを受けました。この状況に対応するため、事業の構造改革が求められたのです」と山田氏は振り返る。
名古屋鉄道と名鉄グループは、両者の課題を解決するため、DXを重要な経営戦略に位置付け、その一環として生成AIの活用を進めることになった。
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3段階の活用レベルを設定
生成AIの利用を促進
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生成AIの取り組みは2023年度から始まった。まず生成AIの効果検証を行うため、2023年7月に、エクサウィザーズが提供する法人向け生成AIサービス「exaBase 生成AI」を導入した。名鉄グループの社員約400人に展開し、文書や議事録の作成、情報収集、企画のアイデア出し、外国語の翻訳などに活用するといった検証が行われた。この検証で、累計1,200時間以上の業務削減効果を得られたという。
2023年度の検証で生成AIの効果を確認したことで、2024年度からはより広くグループ各社に展開できるような体制を整えていった。「3レイヤーでの生成AI活用プロジェクト」と題して、3段階の活用レベルを設けてツール整備と活用支援を実施するというものだ。活用レベルは、「Basic(基本)」「Advanced(高度)」「Expert(専門)」の3段階に分かれている。
Basic(基本)では、名鉄グループの社員に生成AIを気軽に活用してもらうことを目的として、チャット形式の生成AIを構築した。「グループウェアで使用している『Google Workspace』に馴染み深い、『Google Chat』をインターフェースに採用して生成AIチャットボットの『AIめっちゃん』を構築しました。情報収集、アイデア出し、文書作成、要約などさまざまな活用がされています。AIめっちゃんを展開したことで、グループ各社ごとにツールを整備する必要がなくなりました。また、利用状況は『Looker Studio』を用いて可視化しています。アクティブユーザー数や利用頻度などのデータを把握して、利用促進のためのさらなる施策が講じやすくなりました」(山田氏)
Advanced(高度)では、RAG※やプロンプトテンプレートの活用など機能拡張を実現するツールを展開する。活用事例として、顧客の問い合わせに対する回答支援などがある。運用担当者が顧客からの問い合わせ内容をプロンプト入力すると、関連ドキュメントのデータを抽出してその答えを提示してくれる。RAG環境を導入したことによる効果として、累計30時間以上の業務削減効果(見込み)や入れ替わりの多い職場環境における新任担当者の業務負荷の軽減などが挙げられる。
Expert(専門)では、生成AIの組み込みサービスを創出していく。生成AIを業務に組み込んだり、顧客向けのサービスに組み込んだりするなど、ツールという枠を超えた活用を目指している。具体例として、「遺失物管理システム」への生成AIの組み込みがある。撮影した遺失物の画像を生成AIが認識・分析し、その結果からシステムの登録情報を作成するという仕組みを構築した。「コロナ禍以降、鉄道の利用が回復したことで遺失物の点数が増加していました。対応する係員の負担が増えており、課題解決のため生成AIの活用を始めました。生成AIの導入により、最短5秒で登録が完了するようになりました」(山田氏)
※RAG(検索拡張生成):LLMの出力を最適化するプロセス。特定の分野や組織内部のナレッジを組み込み、より正確で関連性の高い回答を提供する。
業務改善や新たな価値の創造を継続
生成AI活用レベルの向上を目指す
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山田敏大 氏
生成AIを活用する上で、情報の取り扱いやセキュリティリスクなどに注意が必要だ。名鉄グループでは、生成AIの利用に関する注意事項(ガイドライン)を展開し、ガバナンスを強化しながら、生成AIの活用を推進している。ガイドラインでは、主に入力可能なデータの限定や出力データに対する取り扱いについて案内し、統制を図っている。ガイドラインと管理体制を整備することで、情報漏えいなどのセキュリティリスクも抑えていく。
また、名鉄グループでは、生成AIの活用を促進させていくための支援も行っている。内製のセミナーを月1回以上の頻度で開催し、活用を推進する。セミナーは、「初級」「中級」「上級」の三つのレベルに分け、各々の活用レベルやテーマに適した参加者が受講しているという。
上記に加え、専用ポータルサイトも開設している。活用事例、セミナー情報、ツールの利用方法などを公開し、社員が誰でも簡単に情報にアクセスできるような仕組みを整えているのだ。
今後も名鉄グループでは、生成AIの活用レベルの向上を目指し、取り組みを進めていくという。Basic(基本)層では、ツールに画像・映像ファイルの添付機能や画像生成機能の追加を行い、活用ケースの増大と月間アクティブユーザー数の向上を図っていく予定だ。また、Expert(専門)層の事例創出にも注力していく。問い合わせメールの内容をAIが解析し、適切な部署や担当者へ転送する業務の効率化を目指すといった計画もある。「3段階の構造によって名鉄グループは、生成AI技術を組織全体に浸透させていきます。多様なニーズに対応しながら、業務改善や新たな価値の創造を継続していく予定です。ただ生成AIを導入するだけでなく、社員一人ひとりが生成AIを理解し、その可能性を最大限に引き出せるように、これからもさまざまな取り組みを進めていきます」と山田氏は展望を語った。
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【CASE 2】Legal Advice
弁護士ドットコム
プロンプトの工夫と信頼性の高いデータでAIが的確に相談に回答する「チャット法律相談」
「まだないやり方で、世界を前へ。」をビジョンに掲げる弁護士ドットコムは、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」をはじめ、クラウド型電子契約サービス「クラウドサイン」や税理士紹介サービス「税理士ドットコム」などを提供し、テクノロジーの力で専門知を身近にする取り組みを進めている。リーガルテックにいち早く着手した同社は、生成AI関連サービスの開発にも積極的に取り組んでいる。国内でもまだ珍しいBtoC向け生成AIサービスの開発秘話を聞いた。
膨大な弁護士の回答をベースに
信頼性の高い法律相談AIを開発
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仮屋崎 崇 氏
弁護士ドットコムでは2007年から「みんなの法律相談」をリリースしている。本サービスは一般ユーザーからの法律に関する疑問に対して、弁護士が回答を行う無料の法律相談サービスだ。みんなの法律相談に寄せられた140万件以上の相談データから抽出された質問や回答を生成AIに学習させることで開発したのが「弁護士ドットコム チャット法律相談」(以下、チャット法律相談)である。2023年5月12日からα版の試験提供をスタートしており、2024年12月からは本格提供を開始した。
チャット法律相談の開発の経緯について、弁護士ドットコム リーガルブレイン開発室 弁護士 仮屋崎崇氏は「法律の世界には、『2割司法』という言葉があります。これはトラブルを抱える人の内、司法サービスにアクセスできる人は全体の2割であるという課題を示しています。つまり全体の8割が泣き寝入りをしてしまっているんですね。その法律へのアクセスのハードルを下げるため、当社では『IBM Watson』が登場した当時から、AIを法律相談に活用できないか検討を進めていました。しかし、当時は会話形式での法律相談が難しく、開発を断念していました。そうした中2022年末にChat GPT-3.5が登場し、その回答精度の高さに驚くと同時に『法律相談に使えるのではないか?』と考え、2023年2月からチャット法律相談の開発をスタートしました」と当時を振り返る。
およそ3カ月間という非常にスピーディな速度で開発されたチャット法律相談だが、開発に当たって課題はなかったのだろうか。仮屋崎氏は「まず一つ目の壁として、弁護士法72条があります。これは『弁護士以外の人が報酬をもらって弁護士業務を行ってはならない』というものです。そのため有料サービスでの提供はできません。しかし、公開することにより、市民の司法サービスへのアクセスのハードルを下げることに役立つと考え、今回1日5回を上限に無料で相談できるサービスとして提供を行っています。二つ目にChat GPTはインターネット上の情報を学習しているため、正確な法律知識に基づいた回答ができるのかといった懸念がありました。しかし当社ではみんなの法律相談に寄せられた弁護士の回答があり、それらの膨大なリーガルデータを活用することで適切なサービスとして提供できるのではないか、という考えがありました」と語る。
プロンプトの調整によって
相談者に寄り添う回答を実現
そうした工夫の下開発されたチャット法律相談は、仮屋崎氏が述べた通り1日5回を上限に回答する無償サービスとして提供されている。執筆時点では離婚・男女問題のみに限定されている。
使用する際はまずチャット法律相談のWebサイト(https://chat.bengo4.com/)にアクセスする。利用規約とプライバシーポリシーを確認し「同意して相談を始める」ボタンを押下すると、チャット法律相談のチャット画面に遷移する。チャット画面上で「円満に離婚したい」といった悩みを投げかけると、AIが「お困りのことと存じます」といった相談者に寄り添う言葉とともに、悩みを解決するためのポイントを回答する。また、テキストの回答のみならず「みんなの法律相談」から近しい事例のURLを引用して紹介することで、信頼性も担保するという。利用者の多くは3回程度のやりとりで完了するため、5回までの上限があっても十分な相談が行えているようだ。
「開発に当たって、応対するAIのチューニングに非常に苦労しました。スムーズな応対ができるようプロンプトを組んでいますが、当初はAIによる回答が非常に長文でした。もともと弁護士の回答を学習しているため、長文の回答文章をそのまま出力していたのです。それをいかに減らしていくのか、といったことや、機械的な冷たさのあった応対のテキストを、相談者に寄り添うようなテキストに生成できるよう工夫を凝らしました。3カ月ほどの開発期間のほとんどをこのプロンプト調整にあてましたね」と仮屋崎氏。現在のチャット法律相談はChat GPT-4の言語モデルを使用しており、プロンプトエンジニアリングによって相談者に寄り添ったスムーズなコミュニケーションが可能になっている。
リーガル特化のLLM開発を目指す
“リーガルブレイン構想”
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ハルシネーション対策も行っている。チャット法律相談は「みんなの法律相談」上の弁護士の回答を学習しているため、誤った回答を出力するリスクを大きく低減している。また回答時は情報ソースとなった「みんなの法律相談」のWebページも表示するため、情報に誤りがないか相談者自身がチェックできる。
相談内容によっては、弁護士への相談を促す回答も行うという。仮屋崎氏は「当社では弁護士検索が行える『弁護士ドットコム』も提供していますので、もしAIに弁護士への相談を促された場合は、こちらを使っていただければと思います。チャット法律相談をリリースした後に弁護士の方々に意見を伺ったところ『これいいね』とポジティブに受け止めていただいていました。特に弁護士の業務は、相談があっても半分以上が受注につながらないケースも少なくありません。そうした判断は相談者から事実関係や証拠の確認を行いながら進めていく必要があるため、相談者の悩みを言語化できた状態で受注につながる相談が受けられる可能性がある、という点に魅力を感じているようでした」と語る。将来的には男女問題だけでなく、労働問題や不動産のような、ほかの相談テーマにもチャット法律相談が対応できるようにしていきたい考えだ。
弁護士ドットコムでは、BtoC向けの生成AIサービスだけでなく、BtoB向けの生成AIサービスも提供している。例えば弁護士向けのオンラインリーガルリサーチサービス「弁護士ドットコムLIBRARY」や、企業の法務部門向けのリーガルリサーチサービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」にはAIアシスタントが搭載されている。例えば弁護士ドットコムLIBRARYでは、ユーザー側が文章形式で質問を投げかけるとAIがキーワードだけでなく文脈も理解し、キーワードが含まれていない場合でも関連する書籍のページを見つけ出して表示してくれるという。
弁護士ドットコムではこうしたあらゆるリーガルデータと生成AIを横断的に組み合わせることで、リーガル分野に特化した大規模言語モデル(LLM)を作る「リーガルブレイン構想」を掲げており、今後も生成AIに関連した取り組みをより広げていく方針だ。
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