eSIMの需要はビジネスから教育まで
日本HPが語る「HP eSIM Connect」の魅力

2023年11月16日、日本HPはKDDIと協業し、法人向けにデータ通信5年間無制限の利用権付きeSIM対応モバイルPCの販売をスタートさせた。ConnectINの前身ともいえる本協業の経緯と、その効果について、日本HPの岡 宣明氏に詳しく話を伺った。

通信はハイブリッドワークの課題

「コスト削減と生産性向上を両立」そんなキャッチフレーズの下展開されているのがHP eSIM Connectだ。

 HP eSIM Connect対応モデルはPCの購入代金に通信費が含まれているため、LTE/5Gによる通信を5年間無制限かつ追加料金なしで利用できる。

 このHP eSIM Connectは、日本HPとKDDIの協業によってスタートした。その背景について、日本HP パーソナルシステムズ クライアントビジネス本部 CMIT製品本部長 岡 宣明氏は次のように振り返る。「eSIM自体は以前からある技術で、2017年に発売された『Apple Watch Series 3』に搭載されたことで広く普及しました。一方で、スマートフォンやPCにはこのeSIMの搭載があまり進んできませんでした。そうした中で、KDDIさまがこのeSIMに対する取り組みをいち早くスタートされました。当社としても4〜5年前からPCへのeSIM対応の通信モジュール搭載を進めており、そうした通信への取り組みの方向性がマッチしたことも協業のきっかけでした」

 それでは、ノートPCにeSIMを搭載するメリットはなんだろうか。最大のメリットは、オフィスの外で働く際に、PCを開くだけですぐに安定した通信環境で業務に取り組めることだろう。モバイルWi-Fiルーターやスマートフォンのテザリングで通信を行うケースもあるが、接続にワンステップ手順が必要となる。また物理的なSIMカードをノートPCに差し込んで、月額で通信料を支払う方法もあるが、SIMカードの管理の手間や、毎月キャリアに支払う通信費のコストの負担が大きいことから、導入に二の足を踏んでいる企業も少なくない。

 実際、日本HPがオンラインで調査を行った「ハイブリッドワークの課題」では、「4G LTEや5Gの導入を妨げる理由としているのが通信コスト」と回答した※割合は66%と6割を超えている。こうしたハイブリッドワークに潜む通信の課題を解決するため生まれたのが、HP eSIM Connectなのだ。

※エンタープライズ企業のIT導入担当者、または決済権限者が回答した。

発売されたばかりの14インチAI PC「HP EliteBook X G1i 14 AI PC」も、今後HP eSIM Connectに対応を予定している。

常時接続がノートPCの価値を向上

日本HP
岡 宣明

 HP eSIM Connectは冒頭で述べた通り、2023年11月16日にリリースされている。当時は「HP Dragonfly G4 法人限定 HP eSIM Connectモデル」「HP ProBook 445 G10 法人限定 HP eSIM Connectモデル」の2機種のみがHP eSIM Connectに対応していた。現在はビジネス向けノートPC10機種、教育向け端末4機種がHP eSIM Connect対応端末としてラインアップされている(2025年3月時点)。「まずはハイエンドモデルとミドルレンジモデルをHP eSIM Connect対応モデルとしてリリースしました。これが非常に好評でして、ほかのモデルもHP eSIM Connectに対応させてほしいという要望が多くありました」と岡氏は語る。そういった要望に応えてHP eSIM Connect対応モデルを拡充していったのだ。

 HP eSIM Connect対応のノートPCを選択するビジネスユーザーに傾向などはあるのだろうか。岡氏は「やはりPCを持ち運ぶ機会の多い職種からの需要が高いですね。HP eSIM Connect対応PCの中で最も売れ行きが良いのはハイエンドモデルの『HP Dragonfly G4』です。これは軽量で持ち運びがしやすいため、外に出ることの多い職種の方に適しています。また、せっかく良い端末を手に入れるのですから、従来のようにモバイルWi-Fiルーターやスマホのテザリングを使うのではなく、PCを開いたらすぐにネットワークにつながっている環境で仕事をしたい、というニーズもあるように思います。当社の端末は基本的にデュアルSIMを採用しており、eSIM+他社SIMカードという組み合わせで使っていただくケースもあります」と語る。

 eSIMで常に通信できることで、実はノートPC自体の価値が向上するというメリットもある。例えばAI PCだ。NPUを搭載したAI PCはAI処理を高速化し、業務効率を向上できることで知られている。高度なAI処理をローカルで行えるため、セキュアである点などが魅力だが「現時点で、完全にローカルで完結するAIはまだほとんどありません」と岡氏は指摘し「だからこそ、AI PCでどこでも同じAI体験をできるようにするためには、やはり通信が必須ですし、それを実現するにはeSIM搭載のノートPCが適しているでしょう」と続けた。

 日本HPではMDMソリューション「HP Protect and Trace with Wolf Connect」(以下、Wolf Connect)を提供しており、本ソリューションとHP eSIM Connect対応端末を組み合わせることで、ハイブリッドワーク環境下のセキュリティも強固にできる。「eSIMのLTEと5Gの通信モジュールはブロードバンドですが、実はユーザーが使っていないナローバンドが一緒に入っています。このナローバンドはIoT機器などに組み込まれているような、送受信できるデータ量が少ない通信ですが、これが常にWolf Connectサーバーと通信します。これにより、OSが落ちていたりブロードバンドがつながっていたりしなくても、管理者は端末がどこにあるか特定して、万が一紛失した場合は遠隔でロックをかけられます。また、盗難などされてしまい、取り戻すことが難しい場合は、復元が難しいパージによってデータ削除をリモートで行います」と岡氏。常に持ち運んで使う端末だからこそ、HP eSIM ConnectとWolf Connectを組み合わせることでセキュリティを強化するとよいだろう。

HP eSIM Connect対応のノートPCは、ビジネスノートPC10機種+教育向け端末4機種の合計14機種とラインアップが幅広い。写真で掲載している5機種は、全てHP eSIM Connect対応の端末だ。
※中央のHP EliteBook X G1i 14 AI PCは今後対応予定

教育現場にもeSIM搭載端末を

 同社のHP eSIM Connectは、ビジネスPCのみならず、教育現場に導入が進むGIGA端末にも対応している。「学校内のWi-Fi環境に問題があったり、持ち帰り学習でも円滑な通信を行いたいという要望があったりする場合、当社のHP eSIM Connect対応のGIGA端末を選択されるケースがあります。NEXT GIGAにおける国の予算の範囲内ではWi-Fiモデルになりますが、追加予算のある自治体などは、当社のHP eSIM Connect対応端末を選択するケースもありますね」と岡氏は語る。実際に、沖縄の伊平屋島では、HP eSIM Connect対応の「HP Fortis x360 G5 Chromebook」を試験導入し、家庭学習やリモート授業、校外学習などで積極的に活用したという。校務用端末としてHP eSIM Connect対応端末を選択する学校現場もあり、今後さらに教育現場でのeSIM搭載端末の導入が広がっていきそうだ。

 岡氏は「HP eSIM Connectをリリースして1年以上がたち、サポートを含めたナレッジが蓄積されてきました。これまではある程度絞り込んでHP eSIM Connect対応端末を提案してきましたが、今後はほとんどのモデルでHP eSIM Connectを利用できるよう、ラインアップを拡充していきます。販売パートナーさまにとっても、お客さまの業務に合わせたソリューションを組み合わせて、セキュリティやネットワークを提案できることは、新たな付加価値になるのではないかと思います。PCを紹介する際は、ぜひネットワークも含めて紹介していただけたらうれしいですね」とメッセージを送った。