“ビジネスを止めない”を設計思想にした
「dynabook eSIM Startin’」とノートPCの組み合わせ

KDDIがConnectINを発表した2025年1月21日の記者発表会で、ConnectINのビジネスモデルを採用したMVNOサービス「dynabook eSIM Startin’」を発表したDynabook。dynabook eSIM Startin’のサービスと、対応するビジネスノートPC、そしてeSIM搭載であるが故のビジネスメリットについて取材した。

約50%のコスト削減が可能

 Dynabookが提供をスタートしたMVNOサービス「dynabook eSIM Startin’」(以下、Startin’)は、ConnectINのビジネスモデルを採用し、eSIM対応のモバイルノートPCに、4年間のデータ通信無制限の利用権を付属する。モバイルWi-Fiルーターなどを持ち運ばなくても使いたい時にすぐにau回線(5G/LTE)を使用して、通信サービスを利用可能なのだ。

 Startin’をスタートした背景について、Dynabook 国内マーケティング本部 本部長の杉野文則氏は「当社では何年も前からMVNO事業を展開しており、法人のお客さまに回線契約のサービスを提供していました。そうした中で今回のConnectINというビジネスモデルについて、KDDIさまに話を伺い、4年間のデータ通信をパッケージで商品化できることに魅力を感じました」と語る。

 MVNO事業に加えて、同社は以前から5GモジュールやLTEモジュール搭載のノートPCを販売していた。それらの需要がここ数年、少しずつながら上がってきていたという。そうしたPC販売の動向もKDDIとの協業を後押しした。

 今回スタートしたStartin’は、4年間無制限のデータ通信の利用権が付属する。この4年間という長さを設定した理由について杉野氏は「当社のお客さまのPCリプレースのサイクルとして、もっとも多いのが4年間のためです。Startin’対応モデルの場合と、通常のPC購入と4年間のデータ通信費を比較すると、Startin’対応モデルの方が圧倒的に安く、およそ半額ほどになると見込んでいます」と語る。なお、4年間の間に端末が故障した場合、本体の修理が可能であればその端末で継続して4年間の通信が可能だが、買い替えになるとシリアル番号が変更になるため、データ通信も契約し直しになるようだ。

dynabook eSIM Startin’に対応したビジネスノートPC「dynabook X83/LY」。クイック設定の携帯ネットワークの項目を見ると、確かにauの回線に接続されていることが分かる。

ダウンタイムを極力減らす設計

 ビジネスノートPCの通信にeSIMを採用するメリットについて杉野氏は「物理的なSIMカードによる通信の場合、まずそれを従業員に配布して、個々人にSIMカードを挿入してもらう必要がありました。しかしeSIM搭載のノートPCであれば、PCを配布してアクティベーションツールを起動し、EIDと呼ばれる識別番号をネットワーク環境下で登録すれば利用可能です。アクティベーションツールを配布することは手間かもしれませんが、事前に配っておいたり、Windows Storeから直接ダウンロードしてもらったりすることで、そういった手間も削減できます。また『Microsoft Intune』を経由した配布も行えますので、物理的なSIMカードよりも大きく管理負担が軽減できるでしょう」と指摘する。物理的なSIMカードの場合、挿入口に対して裏表に差してしまったり、紛失してしまったりといったトラブルもあるため、それらに対応する負担がゼロになる点もうれしいポイントだろう。

ConnectINに対応したdynabook X83/LYには、ConnectINアイコンのシールが貼られている。
(左)Dynabook 早瀬 健
(右)Dynabook 杉野文則

 Dynabookは、Startin’対応端末として「dynabook X83/LY」をラインアップしている。本製品は、2023年夏に発表された13.3インチモバイルノートPCで、大きな特長として「セルフ交換バッテリー」機構を採用している点がある。これはバッテリーが劣化したり消耗したりした場合、PC利用者自身が新しいバッテリーに交換できる機構だ。バッテリーは強度や絶縁性に優れたフィルムで保護されており、PC内部の基板に触れることなく安全に交換できる。

「ノートPCを使っていると、バッテリーだけ劣化してしまい使えなくなるケースが少なからずあります。そうした際に、代わりのバッテリーと交換することで、ダウンタイムを極力短く抑えられます。これはStartin’の考え方に近い設計です。つまり、これまでは業務のためにWi-Fiスポットを探す手間や時間が必要でした。しかし、Startin’による通信使い放題によって、場所やデータ量を気にせずに業務が行えるようになります。バッテリーや通信によって業務ができない時間を作らない付加価値を生み出せる組み合わせであると自負しています」と杉野氏は語る。

常時接続でセキュリティも強化

 DynabookはStartin’対応のノートPCと組み合わせることでよりビジネスを効率化するソリューションも展開している。それが「PCアセットモニタリングサービス」だ。Dynabook ソリューションビジネス統括部 国内ソリューション企画部 部長 早瀬 健氏は「PCアセットモニタリングサービスは、PC1台1台の利用者や位置情報、状態を管理できる資産管理台帳システムです。PC側にエージェントをインストールしてもらうことで、PCの情報を定期的にサーバーにアップし、状況をモニタリングします。例えば長くPCやスマホを使うと、バッテリーの持ちが悪くなりますが、このようなバッテリーをはじめとした機器の不調検知も本サービスで行えます。また、本サービスではPCの位置情報も取得しています。しかし、ネットワークに接続していない場合はその位置情報を正確に調べることができません。eSIMが搭載されていれば、PC単体で常時ネットワークに接続できますので、このような位置情報を精度高く特定可能です。万が一紛失した場合でも安心でしょう」と語る。

 執筆時点のStartin’対応端末は、dynabook X83/LYのみだが、今後順次対応端末を増やしていく予定だ。「昨年11月に、dynabook X83/LYと同じくバッテリーを取り外せるタイプのノートPCから14インチサイズの『dynabook X74』を発表しましたが、こちらの製品も近々Startin’に対応予定です」と早瀬氏。将来的には、学校向けの端末なども対応していきたい考えだ。

 最後に杉野氏は、次のように販売パートナーへメッセージを送った。「Windows 10のサポート終了(EOS)が迫っていることもあり、PC市場は活況を呈しています。またAIを今後4年間使うPCを選ぶに当たって、当社のStartin’に対応しておりバッテリーも取り外せるユニークさを持ったdynabook X83/LYは、訴求力の高い製品といえるでしょう。時代の先を見据えたハードウェアと通信インフラがセットになった本製品を、ぜひ提案してほしいと思います」

バッテリー取り外し機構を採用したdynabook X83/LY。バッテリーが劣化した場合など、ユーザー自身が取り外して交換可能だ。ダウンタイムを極力抑えて運用できる。

アンテナ設計にこだわる
eSIM搭載端末が使えるVAIOの「法人向けデータ通信プラン」

KDDIのConnectIN記者発表会において、Dynabookと共にConnectIN対応を発表したのがVAIOだ。後日発表とされていたサービス詳細が2025年3月13日に発表され「法人向けデータ通信プラン」の名称で、法人向けに5年間データ通信無制限の通信利用権が付属するモバイルPCの発売がスタートした。その詳細を見ていこう。

法人向けデータ通信プランに対応した、新製品のVAIO Pro PG。高級感のあるブロンズの筐体もビジネスシーンにはうれしい。

無線WAN搭載率30%のVAIO PC

 VAIOは、2007年の3Gの時代から、無線WANをPCに搭載してきた。そうした時代に先駆けた接続性へのこだわりは現在も続いており、アンテナの設置部分や、アンテナ性能にこだわった物づくりを続けている。実際に無線WANを搭載した法人向けPCの需要は高く、同社の法人向けPCの無線WAN搭載率は30%を超えている。国内法人向けノートPCの出荷台数全体は横ばいながら、VAIOの法人向けノートPCは高い成長を維持している。その成長を支えているのが、この無線WAN搭載PCの存在だという。

 VAIO 開発本部 プロダクトセンター シニアUXマネージャー 鈴木陽輔氏は「ハードウェアの設計に加えて、当社は2015年からPC向けに最適化されたVAIOオリジナルのSIMカードの販売にも取り組んでいました。一方でPCのeSIM対応を進める中で、eSIM搭載についても検討を進めていました。そのタイミングでKDDIさまから、今回のConnectINのお話をいただきました」と協業の経緯を語る。

 ConnectINを採用した法人向けデータ通信プランは、ノートPCに5年間のデータ通信無制限の通信利用権が付属する。5年間という期間を設定した理由について鈴木氏は「当社の法人向けPCのライフサイクルのメインが4〜5年であるためです。正直、期間の設定は4年と5年で悩みましたが、最近5年の案件が増えていることもあり、この期間を設定しました」と語る。なお、契約期間中に端末が故障し、通信モジュールが変更になった場合でも、eSIMの再発行手続きをオンラインで行うことで移行手続きが取れるようだ。

VAIO 鈴木陽輔

従業員の増減にも対応しやすいeSIM

 法人向けデータ通信プラン対応のPCでeSIMを使えるようにする手続きも全てオンラインで完結する。回線の本人確認や開通の続きなどはKDDIに委託しているという。

 月額通信料のSIMカードと比較して、法人向けデータ通信プランによるeSIMの通信環境はどういったメリットがあるのだろうか。鈴木氏は「例えば5年間、月額で通信料金を支払うと相当な額になると思います。一方で法人向けデータ通信プランはPCと5年間の無制限データ通信が一体になっていますので、PC本体と通信料金を別に支払う場合と比較すると間違いなくコストを抑えて利用できるでしょう。また管理者にとってのメリットも大きいです。月額で通信料を支払っている場合、毎月の支払いはもちろん、従業員が退職したり採用したりして回線が減ったり増えたりした場合の管理も必要になります。それらの管理の手間が大きく低減できる点はメリットといえるでしょう」と語る。

 一方で、VAIOでは自社オリジナルのプリペイド型SIMカードを販売している。これらとのeSIMの棲み分けはどのように進めていくのだろうか。「当社で販売しているSIMカードはプリペイドタイプのため、今回の5年間使い放題のeSIMとは別物と考えています。ある一定の期間、通信環境が必要な人に購入いただけるのが当社のSIMカードであり、用途としては異なるでしょう」と鈴木氏は説明した。

法人向けデータ通信プランでは4機種をサポート。写真はその内2機種だが、いずれもauの回線に接続していることが分かる。

アンテナ設計にもこだわる

 今回、法人向けデータ通信プランに対応した端末は「VAIO Pro PK-R」「VAIO Pro PK」「VAIO Pro PJ」「VAIO Pro PG」の4機種※だ。この内、13.3インチワイドモニターを搭載したモバイルPCであるVAIO Pro PGは、法人向けデータ通信プランと同日に発表された新製品となる。

 VAIO Pro PGは、VAIOが提唱する“シン・モバイルワーク時代”におけるビジネスモバイルPCのベストバランスを追求したノートPCだ。同社のPCラインアップではアドバンスド(ミドルレンジ)の立ち位置のモデルで、価格と性能のバランスが良いモデルだという。

「13.3インチサイズの端末のため、かばんにも収納しやすく新幹線のテーブルでも使えます。本体重量約1,019kg(最軽量構成時)と軽く、持ち運びやすいモバイルノートです。本製品でこだわっているのが、アンテナです。新設計となる無線WANと無線LANのコンボアンテナを搭載し、ディスプレイ上部の狭額縁はそのままに、5Gにも対応しています。またアンテナの位置にもこだわっており、使用時に最も高い位置となるディスプレイ上部に搭載することで、周辺環境の影響を受けにくく、安定した高速ワイヤレス通信が可能です。この場所はカメラも組み込むためスペースが狭く、そこにアンテナを搭載するのは技術的に難しいのですが、安定した通信接続を実現するためこだわったポイントです」と鈴木氏。

 またVAIOは、長野県安曇野市にある本社・工場に5Gまで測定が可能なアンテナ測定設備を完備しており、快適な通信が行えるか否かを確かな環境でチェックした上で製品化している。

「ConnectINを採用することを発表して以降、大変大きな反響をいただいています。法人向けデータ通信プラン対応の端末の反応も非常に良いですね。VAIOとしても、KDDIさまの力を借りて、当社のサービスとして展開できることを非常にうれしく思っています。VAIOだから、eSIMが付いているから選んでもらえるような訴求力のあるプランだと思いますので、ぜひお客さまに提案いただけたらうれしいです。また、法人向けデータ通信プランが実現する新しい働き方は、当社が提供する次世代リモートアクセスサービス『ソコワク』との相性も非常に良いため、組み合わせての提案もお薦めです」と鈴木氏。VAIOではリモートワークの生産性を向上するモバイルモニター「VAIO Vision+ 14P」をはじめとした周辺機器も提供しており、通信が付属したPC本体に加え、ソリューション、周辺機器を組み合わせることで、エンドユーザーの要望に合わせた提案が行えるだろう。

※これらのモデルのLTE/5G搭載時に対応

VAIO Pro PGの内部構造。
(左)5G/LTE無線WAN+無線LANのコンボアンテナを新規開発し、ディスプレイ上部に搭載した。
(右)スピーカー・オーディオジャック子基板とのサイズバランスを調整し、アンテナスペースを確保することで、十分な5Gパフォーマンスを発揮できるようにした。