アンテナ設計にこだわる
eSIM搭載端末が使える
KDDIのConnectIN記者発表会において、Dynabookと共にConnectIN対応を発表したのがVAIOだ。後日発表とされていたサービス詳細が2025年3月13日に発表され「法人向けデータ通信プラン」の名称で、法人向けに5年間データ通信無制限の通信利用権が付属するモバイルPCの発売がスタートした。その詳細を見ていこう。

無線WAN搭載率30%のVAIO PC
VAIOは、2007年の3Gの時代から、無線WANをPCに搭載してきた。そうした時代に先駆けた接続性へのこだわりは現在も続いており、アンテナの設置部分や、アンテナ性能にこだわった物づくりを続けている。実際に無線WANを搭載した法人向けPCの需要は高く、同社の法人向けPCの無線WAN搭載率は30%を超えている。国内法人向けノートPCの出荷台数全体は横ばいながら、VAIOの法人向けノートPCは高い成長を維持している。その成長を支えているのが、この無線WAN搭載PCの存在だという。
VAIO 開発本部 プロダクトセンター シニアUXマネージャー 鈴木陽輔氏は「ハードウェアの設計に加えて、当社は2015年からPC向けに最適化されたVAIOオリジナルのSIMカードの販売にも取り組んでいました。一方でPCのeSIM対応を進める中で、eSIM搭載についても検討を進めていました。そのタイミングでKDDIさまから、今回のConnectINのお話をいただきました」と協業の経緯を語る。
ConnectINを採用した法人向けデータ通信プランは、ノートPCに5年間のデータ通信無制限の通信利用権が付属する。5年間という期間を設定した理由について鈴木氏は「当社の法人向けPCのライフサイクルのメインが4〜5年であるためです。正直、期間の設定は4年と5年で悩みましたが、最近5年の案件が増えていることもあり、この期間を設定しました」と語る。なお、契約期間中に端末が故障し、通信モジュールが変更になった場合でも、eSIMの再発行手続きをオンラインで行うことで移行手続きが取れるようだ。

従業員の増減にも対応しやすいeSIM
法人向けデータ通信プラン対応のPCでeSIMを使えるようにする手続きも全てオンラインで完結する。回線の本人確認や開通の続きなどはKDDIに委託しているという。
月額通信料のSIMカードと比較して、法人向けデータ通信プランによるeSIMの通信環境はどういったメリットがあるのだろうか。鈴木氏は「例えば5年間、月額で通信料金を支払うと相当な額になると思います。一方で法人向けデータ通信プランはPCと5年間の無制限データ通信が一体になっていますので、PC本体と通信料金を別に支払う場合と比較すると間違いなくコストを抑えて利用できるでしょう。また管理者にとってのメリットも大きいです。月額で通信料を支払っている場合、毎月の支払いはもちろん、従業員が退職したり採用したりして回線が減ったり増えたりした場合の管理も必要になります。それらの管理の手間が大きく低減できる点はメリットといえるでしょう」と語る。
一方で、VAIOでは自社オリジナルのプリペイド型SIMカードを販売している。これらとのeSIMの棲み分けはどのように進めていくのだろうか。「当社で販売しているSIMカードはプリペイドタイプのため、今回の5年間使い放題のeSIMとは別物と考えています。ある一定の期間、通信環境が必要な人に購入いただけるのが当社のSIMカードであり、用途としては異なるでしょう」と鈴木氏は説明した。

アンテナ設計にもこだわる
今回、法人向けデータ通信プランに対応した端末は「VAIO Pro PK-R」「VAIO Pro PK」「VAIO Pro PJ」「VAIO Pro PG」の4機種※だ。この内、13.3インチワイドモニターを搭載したモバイルPCであるVAIO Pro PGは、法人向けデータ通信プランと同日に発表された新製品となる。
VAIO Pro PGは、VAIOが提唱する“シン・モバイルワーク時代”におけるビジネスモバイルPCのベストバランスを追求したノートPCだ。同社のPCラインアップではアドバンスド(ミドルレンジ)の立ち位置のモデルで、価格と性能のバランスが良いモデルだという。
「13.3インチサイズの端末のため、かばんにも収納しやすく新幹線のテーブルでも使えます。本体重量約1,019kg(最軽量構成時)と軽く、持ち運びやすいモバイルノートです。本製品でこだわっているのが、アンテナです。新設計となる無線WANと無線LANのコンボアンテナを搭載し、ディスプレイ上部の狭額縁はそのままに、5Gにも対応しています。またアンテナの位置にもこだわっており、使用時に最も高い位置となるディスプレイ上部に搭載することで、周辺環境の影響を受けにくく、安定した高速ワイヤレス通信が可能です。この場所はカメラも組み込むためスペースが狭く、そこにアンテナを搭載するのは技術的に難しいのですが、安定した通信接続を実現するためこだわったポイントです」と鈴木氏。
またVAIOは、長野県安曇野市にある本社・工場に5Gまで測定が可能なアンテナ測定設備を完備しており、快適な通信が行えるか否かを確かな環境でチェックした上で製品化している。
「ConnectINを採用することを発表して以降、大変大きな反響をいただいています。法人向けデータ通信プラン対応の端末の反応も非常に良いですね。VAIOとしても、KDDIさまの力を借りて、当社のサービスとして展開できることを非常にうれしく思っています。VAIOだから、eSIMが付いているから選んでもらえるような訴求力のあるプランだと思いますので、ぜひお客さまに提案いただけたらうれしいです。また、法人向けデータ通信プランが実現する新しい働き方は、当社が提供する次世代リモートアクセスサービス『ソコワク』との相性も非常に良いため、組み合わせての提案もお薦めです」と鈴木氏。VAIOではリモートワークの生産性を向上するモバイルモニター「VAIO Vision+ 14P」をはじめとした周辺機器も提供しており、通信が付属したPC本体に加え、ソリューション、周辺機器を組み合わせることで、エンドユーザーの要望に合わせた提案が行えるだろう。
※これらのモデルのLTE/5G搭載時に対応

(左)5G/LTE無線WAN+無線LANのコンボアンテナを新規開発し、ディスプレイ上部に搭載した。
(右)スピーカー・オーディオジャック子基板とのサイズバランスを調整し、アンテナスペースを確保することで、十分な5Gパフォーマンスを発揮できるようにした。