異なるシステム間でのデータ連携を実現

HULFT(ハルフト)」は、セゾン情報システムズ(現・セゾンテクノロジー)が開発したファイル転送ソフトウェアです。名称は「Harmonious Universal Link File Transfer」(開発当初は「Host Unix Link File Transfer」)の略で、企業内や企業間で発生する売上データ、顧客情報、ログデータなどを、効率的かつ安全に転送するためのミドルウェアとして広く利用されています。

HULFTはマルチプラットフォームに対応しており、UNIX、Linux、Windows、z/OSなど、幅広いOSで利用可能。AWSやAzure、GCPなどのクラウド環境にも対応しています。全機種でUTF-8ファイルの送受信が可能で、異なるシステム間でのデータ連携を実現します。

HULFTの基本的な仕組みは、送信側のシステムからデータを受け取り、ネットワークを経由して受信側のシステムへ安全かつ確実にデータを転送することです。HULFTでは、3つのプログラム(管理・送信・集信)が連携し、TCP/IP通信でファイルを転送。LANやWAN、公衆回線など、さまざまなネットワーク環境で利用することが可能となっています。

また、単なるファイル転送だけではなく、ファイル転送に関連する前後処理を統合的に扱うHULFTは、多彩な機能を備えています。データの圧縮・解凍処理や暗号化によるセキュリティ強化、文字コード変換機能を搭載しているほか、転送失敗時の再送機能(チェックポイント)も実装されています。さらに、スケジュール設定による自動転送や、一度に複数拠点へ配信できる同報配信機能、ファイルトリガ(指定したファイルで行われた操作を監視し、操作の検知に合わせてジョブを自動で実行する機能)によるジョブ自動起動などの利便性の高い機能も提供しています。

高信頼性・安定性と多様なプラットフォーム対応

HULFTには、以下のような利点があります。

1. 信頼性の高いデータ転送
転送中にエラーが発生した場合でも、自動再送機能によってデータ転送の信頼性を確保します。大量のデータや頻繁な転送にも対応可能で、安定した運用が可能です。

2. 幅広いプラットフォーム対応
異なるOS間でシームレスにデータ連携を行うことができ、クラウド環境とも連携可能なため、オンプレミスとクラウド間のデータ統合を容易にします。

3. 高度なセキュリティ
データ暗号化やアクセス制御機能を備えており、機密情報を安全に転送できます。転送中の盗聴や改ざんを防止し、企業間のデータ保護を強化します。

4. 自動化と効率化
スケジュール設定やジョブフローによる自動実行機能を提供し、業務効率を向上させます。文字コード変換や操作履歴管理など、多くの作業が自動化されるため、運用コストの削減を図ることができます。

5. ネットワーク負荷軽減
データ圧縮転送や間欠転送機能によってネットワーク資源の使用効率を最適化します。また「Zstandard(ZSTD)」と呼ばれる新しい圧縮アルゴリズムに対応した圧縮方式を利用すれば、処理速度がより向上し、CPU負荷が軽減されます。

6. 柔軟性と拡張性
ファイル単位で転送方法を選択できるほか、多拠点への同報配信も可能です。また、HULFT-HUBなどのHULFTファミリー製品との連携により、運用管理をさらに効率化することもできます。

また、HULFTにはさまざまなオプション製品があり、用途に応じた拡張が可能です。例えば、HULFT-HUBは多対多のファイル送受信を効率化。HULFT-WebConnectは安全なインターネット経由の拠点間連携を実現し、HULFT IoTはIoT機器とのデータ連携を可能にします。

クラウド型データ連携プラットフォームのHULFT Squareでは、データ連携スクリプトの開発、実行を直感的に、グラフィカルに行うことができます。アイコンをドラッグして設定するだけで、データ接続と連携を作成できます。

成長を支えるデータ連携基盤ツールの活用シーン

HULFTは、さまざまなビジネスシーンで、企業が抱えるデータ連携の課題解決に貢献しています。

例えば、サプライチェーン連携。製造業や流通業では、取引先との間で受発注データや在庫情報などを迅速かつ正確に連携させる必要があります。HULFTは異なるシステム間のデータ連携を自動化し、転送状況の可視化や障害時の自動リカバリーにより、サプライチェーン全体のデータ流通を効率化します。これにより、リードタイムの短縮や在庫の適正化、生産計画の精度向上などを実現できます。

また、顧客に関するデータはCRM、MAツール、基幹システムなど、複数のシステムに分散していることが一般的です。HULFTを活用することで、これらのシステム間でデータを統合し、顧客の360度ビューを構築することが可能になります。これにより、マーケティングの効率化や顧客サービスの品質向上、パーソナライズされた提案などを実現できます。

営業、マーケティング、経理など、部門ごとに異なるシステムを利用している場合も、HULFTによるデータ連携により、部門間のデータ共有を効率化できます。例えば、営業部門の顧客データをマーケティング部門のキャンペーン管理システムと連携させることで、よりターゲットを絞った効果的なマーケティング活動が可能になります。

オンプレミス環境とクラウド環境の間でデータ連携を行う場合は、セキュリティや転送性能が課題となります。HULFTはクラウド対応の製品ラインアップを提供。オンプレミスとクラウドのハイブリッド環境でも安全かつ高速なデータ連携を実現します。これにより、クラウド移行やクラウドサービスの活用を促進し、ITインフラの最適化を支援します。

企業のM&A後には、異なるシステム間のデータ統合が大きな課題となることがあります。HULFTは多様なシステムに対応しており、統合プロジェクトにおけるデータ連携の基盤として活用できます。データフォーマットの変換機能やマッピング機能により、異なるデータ構造の統合も容易に実現できます。

海外拠点との間でデータ連携を行う場合は、ネットワークの遅延や不安定性、セキュリティリスクなどが課題となります。HULFTは転送の信頼性を保証する機能や高度な暗号化機能を備え、グローバルネットワーク環境でも安全かつ確実なデータ連携を実現します。また、マルチバイト文字の対応など、国際的なデータ連携における課題も解決します。

HULFTは日本国内で非常に高い導入率を誇り、大企業や金融機関を中心に広く採用されています。例えば、全国銀行協会会員銀行や日本自動車工業会会員企業では導入率100%とされています。

企業のITシステム運用において欠かせないツールとなっている、HULFT。現在もさまざまな業界の多くの企業でデータ活用を促進し、ビジネス価値の創出に貢献しています。