本質が問われるデジタルレイバーとビジネスモデルのこれから
RPA
RPAテクノロジーズ
一時期、バズワード的に盛り上がったRPAは、業務のデジタル化の選択肢として一般的になりつつある。ただし、すでに導入している企業では課題も出始めているという。これからのRPA提案はどうあるべきか。RPAテクノロジーズ 代表取締役 執行役員 社長 大角暢之氏が語る。
―RPAソリューションである「BizRobo!」の提供で、国内のRPA市場をリードしてきた御社は、現在のRPA市場の動向についてどう捉えているのでしょうか。
大角氏(以下、敬称略) RPAは、2016年ごろから始まったバズワード的なブームが終わり、幻滅期から一般化へと進む過渡期にあります。多くの企業でRPAが導入されていますが、本格展開にまで至っていないケースが少なくありません。自走化・完全定着化において壁を迎えている企業が多いのですね。
実際の課題についてのアンケート結果では、「現場の業務運用に耐え得る内製体制が必要」「コンサルやSIの活用は無理。高スキル人材および教育が必要」「ロボットの構築と運用の統制」といった内容が共通して挙げられます。
さらに新型コロナウイルスの影響で、本来は効果を発揮すべきRPAについて、次のような新たな課題も露呈しました。「IT部門が全プロセスを管理運用することによるオペレーションの限界」「エンジニアの入館不能に伴うロボット開発および保守運用の停滞」「例外発生時の認知や対応が現地不能により生産性低下」
これらが表しているのは、現場力を伴わないRPAは不能であり、現場型RPAの導入・育成が必要であるという事実です。本来であれば、RPAによる業務の自動化によって出社しなくてもリモートで業務が行える環境の整備が期待されていたのですが、実際にはうまくいっていないケースも少なくないのです。
現場主導のコントロールが重要
―では、RPAはどのように活用すれば、あるべき効果を得られるのでしょうか。
大角 RPAは従来のITと同じ位置付けではなく、人材技術、HR(ヒューマンリソーステクノロジー)として捉えるべきです。つまりデジタルの労働者、デジタルレイバーと考えて、IT部門ではなく実際に利用する現場が主導でコントロールする必要があります。人と同じように現場で教育して育成していくことが重要なのです。現場で働くデジタルレイバーとしてコントロールできている企業では、RPAの効果がコロナ禍でより一層得られているようです。
例えばある企業では、デジタルレイバーとして働くロボットの開発運用を現場で自己完結する体制をつくり、ロボットをうまく活用してテレワーク環境での業務を継続させています。別の企業では、事務作業用のロボットをリモートでコントロールして運用することによって、管理部門の全社員の在宅勤務を実現させています。いずれも現場主導がキーワードとなっています。
同一業界でロボットをシェアリング
―これからRPAの活用が伸びていくと予想される業界や分野はどこになるのでしょうか。
大角 RPAで作られるロボットは、同じ業界や仕事内容である程度共通化できます。そこで、業界や地域による地産地消でのシェアリングトレンドが今後は普及するでしょう。
例えば、すでに医療業界におけるデジタルレイバーのシェアリングが始まっています。医療現場は細かい作業やチェック項目も多く、人的なミスが生じやすい環境でもあります。医療品質を維持するために、現場の方は過酷な環境で働かれています。
そのような現場において、共通的に利用できるRPAのデジタルレイバーを効率的に導入できれば大きな成果が得られます。医療業界全体でのRPAの普及・促進・共有を主眼とした専門協会である「メディカルRPA協会」も1年半ほど前に発足しており、医療業界でのRPAの活用が着実に進んでいるのです。
地産地消という観点では、地域に根ざした企業がけん引役となってRPAを販売するモデルも拡大し始めています。地域の課題は地域の企業が最も理解しています。そうした課題を解決するロボットをRPAで構築し、地域の企業でシェアしていくようなモデルですね。すでに愛媛や新潟、秋田、長崎などの各県でそうした利用ケースが生まれ始めています。
同様に、地方自治体なども共通した業務内容が多いでしょうから、RPAのデジタルレイバーを活用できる領域は広いと考えています。国も含めて、今後は労働力不足がさらに深刻化していくので、その課題を解決するためにもRPAの利用は促進されるべきでしょう。
電子サインやRPAとの連携も加速するデジタル稟議
WORKFLOW
エイトレッド
社内業務のデジタル化を促進するワークフローシステムは、コロナ禍でどのような影響を受けたのか。「デジタル稟議」という噛み砕いた言葉で、ワークフローシステムの導入をさらに加速させようとしているエイトレッド 代表取締役社長 岡本康広氏に聞いた。
―これまでのワークフローシステムの市場動向について、どのように捉えていますか。
岡本氏(以下、敬称略) 以前は、内部統制という視点から、不正の防止やトレーサビリティを確保して証跡を残すためにワークフローシステムが導入されていました。その後、ペーパーレスという流れの中で採用が進み、ここ数年は働き方改革を実現させるための業務のデジタル化目的での導入がゆるやかに加速していきました。そして、新型コロナウイルスの感染拡大が、ワークフローシステムの採用をさらに後押しする形となっています。緊急事態宣言などによってテレワークを基本とした働き方が推奨される中で、業務を継続させるためにワークフローシステムを採用するようなケースですね。
―とはいえ、中小企業などにとっては、ワークフローという言葉自体がまだまだ浸透していない状況ではありませんか?
岡本 確かにそうした面はあります。社内業務のデジタル化やデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが遅れている企業にとっては、ワークフローという言葉はまだ馴染みがない場合も少なくないですね。当社では、ワークフローが何かということを分かりやすく表現するために「デジタル稟議」という言葉も用いています。何か決裁をとる行為をデジタル化(=デジタル稟議)するためのソリューションが、ワークフローシステムとなります。
当社では、ワークフローとはそもそも何かの解説も含めて、ワークフローの理解促進と認知拡大のために「ワークフロー総研」というWebサイトを運営しています。同サイトでは、ワークフローの調査リポートや対談記事、寄稿記事などを配信し、エンドユーザーのワークフローの導入の加速と、それによる企業の意思決定の迅速化や、業務改革・生産性向上に貢献していきます。
各種の稟議や申請を一つにまとめられる
―エイトレッドでは中堅・中小企業向けの「X-point(エクスポイント)」や大手・中堅企業向けの「AgileWorks(アジャイルワークス)」といったワークフローシステムを提供されていますが、どのような特長があるのでしょうか。
岡本 ワークフローとは、業務手続きのデジタル化のことであり、業務と業務をデジタルでつなぐ存在です。稟議や決裁が必要な業務はさまざまあり、多様な申請が行われる中で、例えばX-pointは各種の稟議や申請を一つにまとめられる使いやすいインターフェースを備えている点が特長です。稟議や申請は企業によって経由する人のルートが複雑になっている場合も少なくありません。そうした状況にも対応できる汎用性を備えています。
中堅・中小企業向けのX-pointは、ノーコード・ノープログラミングで使える簡便さも売りです。クラウドとパッケージの双方を選択できます。一方、AgileWorksはアドオン開発で基幹システムと連携させられる柔軟性があります。X-pointとAgileWorksはいずれも紙帳票をイメージした入力フォームを作れるので、従来まで使用していた手書きの申請書と同じ感覚で使用できる点も評価されています。
―ユーザー企業の導入状況について、顕著な傾向はありますか?
岡本 最近は電子契約サービスやRPAツールと連携させるケースが増えてきています。そうしたトリガーがあると利用が拡大しやすいですね。まずは利用者限定などでスモールスタートさせて、徐々に範囲を広げていくような使われ方もしています。
帳票のテンプレートを用意
―X-pointやAgileWorksを販売していく上で、これからの注力ポイントを教えて下さい。
岡本 販売パートナーの皆さまと一緒に売上を拡大させていくために、より売りやすいソリューションにしていきます。例えば個別開発が不要なように業界ごとの帳票のテンプレートを用意したりします。テンプレートの活用によって、販売パートナーの皆さまは、さまざまな業種のエンドユーザーに対して提案がしやすくなります。
加えて、先述したように電子契約やRPAなど他のソリューションとの連携も加速させていきます。これらの導入事例や製品の情報などは定期的に発信していきますので、販売パートナーの皆さまの声もぜひ聞かせていただきたいですね。