脱はんこが生んだ電子サイン普及への追い風

電子サイン

アドビ

テレワークの一般化で脱はんこなどの認識も浸透しつつある中、導入が拡大しているのが電子サインだ。業務手続きにおける新たな仕組みとして市場拡大に期待が持てる電子サインの動向や、電子サインソリューション「Adobe Sign」の展望について、アドビ ドキュメントクラウド戦略部 製品担当部長の昇塚淑子氏が話す。

アドビ
ドキュメントクラウド戦略部
製品担当部長
昇塚淑子氏

―コロナ禍のこの1年は、電子サイン市場にとってどのような影響がありましたか。

昇塚氏(以下、敬称略) 電子サインにとっては、エポックメイキングな状況になりました。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出された後も、業務手続きのために出社しなければならないといった課題が顕在化する中、手続きの電子化を政府自らが着手し始めたのが大きいですね。法令部分の足かせがなくなり、脱はんこの流れも加速しているのです。

―電子サインには、電子契約や電子署名などの言葉もありますが、どのように理解すれば良いでしょうか。

昇塚 電子サインは、電子形式の文書やフォームに対する同意または承認の意思を、法的に有効な形で記録するための手段を指します。用途としては、契約書、申込書、機密保持契約書、取引申請書や入札書類、行政機関の給付申請書などが挙げられます。電子サインは同意書や記録物に対して合意または記録の受理を示すための電子プロセスを意味する一方、電子署名は特定の具体的な種類の電子サインで、証明書ベースの電子署名を指す場合に使われることが多いですね。

 電子署名法の正式な見解では、電子署名は当事者型と立会人型に分けられます。当事者型は当事者のデジタルIDを使って署名をします。立会人型は、サービスプロバイダーが手続きのやり取りを仲介して、利用者同士の固有性を認証し、サービスプロバイダーのデジタルIDを使って署名をする仕組みになります。アドビでは、当事者型を電子署名、立会人型を電子サインとしています。

デジタルエクスペリエンスを向上

―御社が提供する電子サインソリューションのAdobe Signは、当事者型と立会人型のどちらに対応するのでしょうか。

昇塚 Adobe Signは、当事者型と立会人型のどちらにも対応しています。Adobe Signは「Adobe Document Cloud」という枠組みの中で「Adobe Acrobat DC」とともにラインアップされていて、Adobe Acrobat DCと連携して活用することが可能です。Microsoft製品の推奨ソリューションであり、Microsoft 365やMicrosoft Dynamics 365を使って、どこにいてもあらゆる文書に署名が可能になります。

―Adobe Signはどのような企業に提案しやすいのでしょうか。

昇塚 業務の手続きの電子化という観点では、特定の業種や規模にかかわらず訴求できます。コロナ禍が収束した後も、リモートワークを定着させる企業は少なくないでしょう。また、脱はんこなど、従来までなかなか手がつけられなかった領域での改革も進み始めました。そうした中で、電子サインソリューションは、業務システムの一翼として導入が拡大していくはずです。

 BtoBだけでなくBtoCにおけるカスタマージャーニーの面でもAdobe Signの導入は有効です。商品やサービスの購入時に紙書類で手続きが行われていたケースをデジタル上で完結できるようにすれば、エンドユーザーの利便性は非常に高まります。

 Adobe Signは、BtoBやBtoCにおけるデジタルエクスペリエンスの提供を実現するソリューションと言えるでしょう。

連携ソリューションを拡充

―販売パートナーの支援などは用意されていますか。

昇塚 Adobe Signと他の業務ソリューションとの連携を進めています。上述したMicrosoft 365やMicrosoft Dynamics 365のほかにも、kintoneやAgileWorks、Google Drive、boxなどとコーディング不要で連携できるようにしているので、すでにそれらのサービスを導入されている企業への付加価値提案だけでなく、組み合わせ提案も気軽にでき、売上の向上が期待できます。

 また、Adobe Signの導入支援サービスなどを提供していただくソリューション販売パートナーや、他社システムやサービス、ユーザーの内製システムとの連携を支援するSI/連携ソリューションパートナーなども拡充しています。

 昨年の4月からパートナープログラムも発足させ、パートナーカンファレンスも開催しました。現在の追い風に乗ってパートナーへの支援を強化していくとともに、Adobe Signの販売を拡大させていきます。

ネットワークの可視化やID管理の強化ニーズが高まっている

MANAGEMENT

ゾーホージャパン

ゾーホージャパンが提供するITの運用管理ソフトウェア「ManageEngine」は、国内の一般企業や官公庁・自治体に対して5,000ライセンスを超える販売実績を持つ。そのManageEngineの引き合いもまた、新型コロナウイルスの影響で増えているという。ManageEngine事業部の後藤浩介氏とマーケティング事業部の五十嵐寛文氏が最新の状況を解説する。

ゾーホージャパン
ManageEngine事業部
マーケティング部 ITOMカンパニー リーダー
後藤浩介氏

―コロナ禍も踏まえて、ITシステムの運用管理面ではどのような課題が生じているでしょうか。

後藤氏(以下、敬称略) 課題に直結するキーワードは二つあります。「クラウド化」と「テレワーク」です。周知の通り、クラウド化はコロナ以前から進んでいました。アプリケーションのSaaS化だけでなく、AWSやAzureなどを利用してインフラ自体もクラウドに移行するような流れです。そのため、現在はクラウドとオンプレのハイブリッドクラウド環境が増えてきているのですが、それぞれを管理するツールが別々になってしまっていて苦労されているケースが多いようです。

 解決策としてはクラウドやオンプレなど会社のネットワークを構成するサービスや機器を統合的に管理できるツールの導入が望ましいでしょう。また、クラウド化に伴う社外向け通信の増加で輻輳が起きてしまうケースも頻出しています。そこで、そうした通信の可視化で輻輳を解消したいというニーズも増えています。

 一方、新型コロナウイルスの影響でテレワークが一気に普及したことで顕在化したのがVPNの課題です。在宅環境からのVPNアクセスが集中して通信の輻輳が起きてしまったのです。こうした状況を回避したり軽減するためにVPNの通信を可視化できるソリューションの需要が高まっています。

ゾーホージャパン
マーケティング事業部
インサイドセールス部 IDMカンパニー リーダー
五十嵐寛文氏

五十嵐氏(以下、敬称略) クラウド化やテレワークという二つのキーワードに合致する傾向として、Microsoft 365の普及も挙げられます。そうした中で、いつでもどこでも仕事をできるようにするMicrosoft 365の管理の強化や、連携するオンプレのActive Directoryの運用を効率化したいというニーズが高まっています。

プラットフォームを問わず統合運用

―クラウド化やテレワークの普及で生じた課題に対して、御社が用意するITの運用管理ソフトウェア ManageEngineには、具体的にどのようなツールがそろっているのでしょうか。

後藤 まず、クラウド、オンプレ、仮想、物理を問わず統合的に管理できる「OpManager」を提供しています。企業ネットワークを構成するサーバーや各種ネットワーク機器がどのプラットフォームにあっても監視・管理・障害対応を可能にします。可視化によって一元的な管理を効率的に実施できるのです。運用の自動化機能なども標準ライセンスで利用できるのが特色です。設定も簡単で、IPアドレスの範囲を指定するだけで装置を一括登録できたり、監視設定用のテンプレートで自動的に設定を反映させられます。管理者の負担を軽減できるのです。

 ネットワーク内の通信状況の可視化には、「NetFlow Analyzer」を用意しています。帯域の利用状況の監視を可能にするため、IPアドレスごとのアプリケーションの利用状況や帯域占有率などが分かります。ネットワーク遅延の原因となる通信を特定したり、その後の適切な対策が容易になるのです。VPNの通信の可視化は「Firewall Analyzer」で可能です。VPNのログのグラフ化によりひと目で状況を把握できるようになります。

 NetFlow AnalyzerやFirewall Analyzerの機能は、OpManager上での統合利用も可能です。ドアノックツールとしてまずはOpManagerを提案し、その後にNetFlow AnalyzerやFirewall Analyzerの提案でクロスセルを狙えます。

Microsoft 365とADの管理を強化

五十嵐 Microsoft 365やADの管理面では、オンプレのActive DirectoryとMicrosoft 365の統合的な管理を実現する「AD360」をラインアップしています。ユーザーアカウントの管理やパスワード管理のセルフサービス化、Active Directoryの変更監査、企業アプリケーションのシングルサインオン、セキュリティログの収集・可視化などを一元的に実現します。

 マイクロソフトが提供する標準の管理ツールでは、PowerShellを駆使しないと細かい点の管理などが難しいのですが、AD360を利用すればPowerShellの専門知識がなくても手軽に管理が行えます。人事異動などで従業員が異動するとその対応のために管理者が残業をしなくてはならなかった状況を変えることができるのです。Microsoft 365とのセット提案が有効でしょう。

―これからの見通しと、期待できるビジネスチャンスについて教えてください。

後藤 クラウド化やテレワーク対応はこれからも継続していくでしょう。その際に生まれてくる課題に対して、OpManagerやAD360は解決策を提供できます。いずれも導入しやすい価格設定と、標準ライセンスで幅広い機能を利用できる点がこれまでのお客さまから評価されています。

五十嵐 販売パートナーの皆さま向けにはオンラインデモを通じて商談のアドバイスなども提供しています。顧客の基幹システムに入り込めるソリューションにもなるので、フックツールのような感じで気軽に提案していただきたいですね。