発注業務の自動化で従業員の負担を軽減
発注業務において、ヒューマンエラーは気を付けていても起こり得る問題だ。そこで、ロボット・IoTデバイスの企画と開発を行うユカイ工学、BtoB受発注システムを提供するCO-NECT、LoRaWANを使ったIoTプラットフォームを提供するセンスウェイの3社が共同で開発したのが自動発注サービス「CO-NECT自動発注」だ。発注業務を自動化し、発注ミスや従業員の作業負担を削減する。
発注業務も柔軟な働き方に対応
コピー用紙やペンといった消耗品を備蓄するオフィス、食材を調達する飲食店、資材を扱う工場、衛生用品を利用する医療機関などモノを扱う業種において欠かせないのが在庫管理と発注業務である。
商品や資材の在庫状況を把握し、適切な数量を発注する。一見単純そうな作業ではあるが、商品の発注先によって電話やファクス、メールなど発注方法が異なるため、それぞれ発注書を作成しなければならない。また、発注書へのデータ入力は従業員による打ち込み作業が求められるなど、想像以上の工数や負担がかかる。人が介在する作業はヒューマンエラーが生じやすいことも問題視されており、これらの発注作業にも改善が求められている。
「新型コロナウイルスの感染拡大の影響に伴い、感染防止対策として人の移動が制限されています。オフィスに出社しなければ在庫状況が把握できない運用体制をとっている企業や得意先への直接訪問で受注している企業などにとってコロナ禍の状況は、業務が滞る要因へとつながります。こうした現状を受け、オフィス以外の場所からでも在庫管理を行いたいというニーズが高まっています」と話すのはユカイ工学 取締役COO 鈴木裕一郎氏だ。
そうした在庫管理における課題を解決するためユカイ工学、CO-NECT、センスウェイの3社が共同で開発したのが自動発注サービス「CO-NECT自動発注」だ。CO-NECTが提供しているスマートフォンやPCでいつでも受発注ができるBtoB受発注システム「CO-NECT」に、ユカイ工学が提供する重量センサーや赤外線センサー、Webカメラなどを用いたIoTシステムを連携することで在庫数を可視化して自動で仕入れ先に発注を行う。センサーから取得したデータをクラウドにアップする際に必要となるネットワーク環境は、センスウェイの無線通信規格LoRaWANを使用したIoTネットワークサービス「SenseWay Mission Connect」を利用する。
「3社の技術を組み合わせることで、テレワークなどの働き方が求められるコロナ禍においても発注業務を継続できます。在庫管理や発注業務を自動化することで、人件費削減にもつながります」(鈴木氏)
センサーは業種ごとに自由に選択
CO-NECT自動発注の仕組みは、重量センサーやWebカメラなどをオフィスや倉庫、店舗に設置して在庫管理をしたい商品の重さや個数を計測、集めたデータはクラウドサーバーに送信して可視化する。あらかじめ定めておいた数量や重量を下回るとユーザーにメールやLINEなどを通してアラートを送り、受発注システムのCO-NECTが仕入れ先に自動で発注する。
「IoTセンサーと受発注システムを連携したCO-NECT自動発注によって、商品の欠品や在庫過多の要因となる在庫のカウントミスや発注ミスを削減します。発注業務に費やしていた従業員の負荷も減らせるでしょう」とユカイ工学 エンジニア 山田康太氏は話す。
在庫管理といっても資材、食材、液体など取り扱う商品は業種によってさまざまだ。CO-NECT自動発注のデータ計測で使用するセンサーは、ユーザーの利用環境に合わせて柔軟に変えられる。「例えば、液体の計測は重量センサーでも可能ですが、赤外線センサーで水量の減少を検知する方法も選択できます。重量に関しても5トン以上を量りたいというようなニーズがあればオーダーメイドのセンサーを当社で用意します。検知する商品を問わず対応できるのが特長の一つです。センサーはACアダプターと電池での稼働どちらにも対応しているため、設置場所に困ることもありません」(山田氏)
受発注システムのCO-NECTは、仕入れ先がCO-NECTを導入していなくても、発注書をファクスやメールなどの仕入れ先の形式に変換して自動で送信が可能だ。同じ店舗やチームで発注情報や履歴などの共有も行えるため、発注ミス、発注漏れを防げる。
データの通信方式にはLoRaWANを採用している。ユカイ工学 エンジニア 小畑承経氏は「LoRaWANは非常に消費電力が低く、長距離の通信に特化しています。LoRaWANの使用する920MHz帯は、ほかの無線ネットワークが存在する環境下でも安定的に通信を行うことが可能です。通常なら電波干渉が起きてしまう無線設備の入った工場内などでも安定して運用できます」と優位性を説明する。
サービス業での需要も見込む
CO-NECT自動発注は今後、サービス提供に向けて実証実験を行い、改良を進めていく予定だという。実証実験の導入予定先には、シャンプーやリンス、ヘアカラー剤などの消耗品の在庫管理や発注業務を行う美容院や重量のある資材を扱う工場の倉庫での利用を予定している。
「美容院のようなサービス業では、発注や棚卸しなどの業務に追われてスキルアップが図れないなどの悩みを抱えています。そこで、CO-NECT自動発注を導入することで、業務改善につながる需要があると見込んでいます」(鈴木氏)
倉庫での実証実験では、通常の重量センサーでは対応していない数トンの重量などの計測も実践していくという。
「さまざまな業種での実証実験を行い、多くの実績を積むことで、在庫管理や受発注業務の課題を抱える企業のニーズを満たしたIoTセンサーを提案できると考えています。CO-NECT自動発注を通してユーザーの利便性の向上に努めていきます」(小畑氏)