Solution Service
あらゆる人事情報をまとめて一元管理
タレントマネジメントを効果的に実践

人が持つ知識・経験・資質を「資本」として捉え、一人ひとりの能力を引き出し、最大限に活用することで持続的な企業価値につなげる「人的資本経営」。人材を有効活用するためには、スキル・実績・人柄などの情報を正確に管理したり、従業員の能力を最大限に引き出すための育成や配置を行ったりするといった戦略が求められる。こうした人材に関する管理業務を担うのが人事部門であり、従来に比べて業務負荷が高まっている。そんな人事部門における業務を“ラク”にするのが、jinjerが提供するクラウド型人事労務システム「ジンジャー」だ。

人的資本経営への注目が加速
企業価値の向上や収益性の改善を目指す

jinjer
堅田康太

 2008年に起きたリーマンショックをきっかけに、海外では金融資本主義から人的資本主義の重要性が叫ばれるようになった。「米国の知的財産に関するアドバイザリー企業であるOcean Tomoが発表した『Intangible Asset Market Value Study』によると、米国市場(S&P500)の時価総額に占める無形資産の割合は、1975年は17%ほどでしたが、年々増加し、2020年には90%を占めたという結果が出ています。投資家からすると、財務情報を見ただけでは企業価値が判断できないため、機関投資家団体からの人材情報に関する開示要求が次第に強まっていることが理由に挙げられます。加えて、人材・働き方の多様化による個の価値の尊重や、ESG投資/SDGsの観点から企業の持続可能性を評価する指標の重要性の高まりを受けて、人的資本経営への注目が加速しました」とjinjer プロダクトデザイン本部 プロダクトマーケティングマネージャー 堅田康太氏は話す。

 海外では、人的資本の開示に関する強化に伴って、国際基準の設定・公表が急速に進んでいる。欧州においては、2014年に欧州委員会(EC)による「非財務情報開示指令」(NFRD)が制定され、従業員500人を超える企業に、環境、社会、雇用、人権の尊重、汚職、贈収賄などに関する非財務情報の開示が義務付けられた。NFRDは「企業サステナビリティ報告指令」(CSRD)へと改正され、2024年以降から適用開始(企業形態によって時期は異なる)となる。米国では、2020年に米証券取引委員会(SEC)が非財務情報の開示項目規程である「Regulation S-K」を改定し、人的資本の情報開示義務化の規制を追加した。

 こうした海外の潮流を受け、日本においても徐々に人的資本経営に関する動きが広まっている。2020年には経済産業省から企業価値の向上や収益性の改善を実現する人材戦略についてまとめた「人材版伊藤レポート」が公表された。2022年には人材版伊藤レポートの内容をさらに深掘り・高度化した「人材版伊藤レポート2.0」を公表。人材戦略を検討する際の「3つの視点・5つの共通要素」という枠組みに基づき、それぞれの視点や共通要素を人的資本経営で具体化させるための、実行に移すべき取り組みやポイントなどが示されている。同年には、内閣官房から人的資本に関する情報開示のガイドラインとなる内容を記した「人的資本可視化指針」が公表された。人材版伊藤レポートと人的資本可視化指針を併せて活用することで、自社の人材の価値を最大限に引き出す人的資本経営を実現できるようになる。

点在する人事データを一元管理
煩雑な作業を解消

 人的資本経営への注目が集まる一方で、企業の実態はどうなのだろうか。「人的資本経営に取り組むに当たって、人事部門にしわ寄せが来ているのが実情です。トップダウンで、人的資本の可視化や人材戦略の実現を決定したとしても、システムの見直しや準備を行う必要があり、すぐには取り組めないでしょう。また、勤怠管理はA社のシステム、給与計算はB社のシステムというように、業務別で管理方法が異なることから、人事データが複数存在していたり、人事データを管理する部署が異なる場合には、どの人事情報が最新か分からないことから、管理がより煩雑化していたりするケースもあります。加えてシステムを取り扱える人材がいるのかといったITスキルに関する課題も生じています」(堅田氏)

 特にデータの管理方法が紙やシステムなどバラバラなケースは、人的資本の情報開示の際に問題が発生しやすいという。人事部門では「労働基準法」に基づき、労働者を雇用した場合「法定三帳簿」を整えて一定期間保存することが義務付けられている。法定三帳簿は「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の三つを指す。どの企業においても必ず管理している重要な情報となる。「労働者名簿を人事管理システム、賃金台帳を給与計算システム、出勤簿を勤怠管理システムで管理するのが一般的な運用方法だと言えます。ただこの運用は、一つのシステムからデータを取得するのであれば良いですが、労働者名簿と賃金台帳の二つのシステムからデータが必要となる場合は、少々面倒なことになります。例えば、人的資本可視化指針において情報開示を求められているのが『男女間の給与格差』『女性管理職比率』『男性の育児休業取得率』です。男女間の給与格差を調べるには、人事、給与の情報、男性の育休取得率を調べるには人事と勤怠の情報が必要となり、データ取得に当たって作業が煩雑になる恐れがあります」と堅田氏は説明する。

 そうした問題を解消し、人事部門で扱うデータを一元管理できるようにするのが、jinjerが提供するクラウド型人事労務システム「ジンジャー」だ。「ジンジャー勤怠」「ジンジャー人事労務」「ジンジャー給与」「ジンジャーワークフロー」など人事部門の現場に必要な幅広いサービスをラインアップしており、人事関連業務の効率化を支援する。人事労務に関わる全てのデータをジンジャーに集約し、「一つのデータベース」上で管理することで、各システムに存在する人事情報の登録や変更の手間を削減できる。「人事にまつわるサービスが一つのデータベースでつながっているので、勤怠集計からの給与計算や、社会保険手続きに関する帳票類の自動入力などといったオペレーション業務の効率化・自動化が行える点が特長です」(堅田氏)

作成から回収までの作業を効率化
タレントマネジメントを効果的に実践

 同社では、2024年1月から新たにクラウド型の人事評価サービス「ジンジャー人事評価」をリリースしている。評価シートの作成、配付、回収までの一連の工程を一元化できる。人事評価データは、報酬体系、組織配置、採用戦略の核となる情報源であり、人材のポテンシャルを最大限に引き出す「タレントマネジメント」においても不可欠な要素となる。

「タレントマネジメントは正しいデータを基に、人材の『育成』、公正で適切な『人事評価』、職務適正を考慮した『配置』、離職率の低下につなげる『定着』のサイクルを一気通貫で回すことで実現できます。しかし、そのサイクルの中で、『人事評価のプロセスで工数がかかってしまう』『人事データの情報連携に手間を感じている』などうまく運用できず課題となっているケースもあります。ジンジャーは給与計算や人事労務のサービスも提供しているため、人事評価と隣接するあらゆる業務とシームレスな連携が可能です。ジンジャー人事評価を活用することで、タレントマネジメントを効果的に実践できるようになります。さらに2024年夏ごろには『ジンジャー人事データ分析』のプロダクトをリリースする予定で、蓄積したあらゆる人的資本を可視化・分析できるようになります」と堅田氏は製品の魅力を語った。

Solution Service
労務管理とタレントマネジメントを兼ね備え
人的資本経営に必要なデータと機能を提供

コーポレートミッションに「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」を掲げるSmartHRは、“well-working”をキャッチフレーズに、日本の労働のアップデートを続けている。その同社が提供するクラウド人事労務労務ソフト「SmartHR」は、人的資本開示に対応した機能も有している。人的資本経営の観点から、SmartHRを活用するメリットを同社に聞いた。

人的資本情報の開示は
“独自性”が重要に

SmartHR
重松裕三

 SmartHR タレントマネジメント事業 事業責任者の重松裕三氏は、人的資本開示の国際資格であるISO 30414 リードコンサルタント/アセッサーを持ち、人的資本経営についてのセミナーにも講師として登壇している。その重松氏は、人的資本について次のように説明する。「よくセミナーでは、従業員が持つスキルや知識、ノウハウ、資質などに焦点を当てた概念が人的資本ですと説明しています。企業が所有している建造物や設備、インフラといった有形資産と同じように、企業に利益をもたらす重要な資産として、投資するべき価値のある無形資産が人的資本です」

 この人的資本を最大化する組織的な取り組みを人的資本経営と呼ぶ。例えば優れたスキルを持った人材を外部から雇用したり、現在自社で雇用している従業員に教育や研修を施してスキルを伸ばしたりして、それによって自社の企業価値の向上に還元していく。

 そしてこの企業の人的資本を開示することが2023年3月決算から有価証券報告書を発行する上場企業を対象に義務化された。開示指標は主に二つあり、比較可能性と独自性だ。比較可能性は男性育児取得率や女性管理職率など、ほかの企業と横並びで比較可能な人的資本の情報だ。独自性はその名の通り、自社独自の取り組みであり、松重氏はこの“独自性”が重要だと指摘する。

「独自性のある事項の開示に当たっては、自社のビジネスモデルや経営戦略とひも付けて『なぜその項目が大事なのか』という理由を述べたり、自社における定義やその進捗達成度をしっかり開示したりすることが必要です。人的資本はただ開示して終わりではなく、その指標がどういったビジネス的な背景に基づいて開示しようと考えたのか、その事項を今後どのように伸ばしていくのかといった、目指すべき部分をしっかりと開示していくことが重要です。マーケットで売れる商品のライフサイクルがどんどん短くなっている昨今、そのマーケットトレンドへのタッチアップや、技術革新への対応ができる人材が求められており、現在自社に在席している従業員がどういったスキルを持っていて、どういったトレンドに対応できるのか、といった人材の可視化がますます重要になるでしょう」と重松氏。

企業の人的資本開示に役立つ
SmartHRの四つの機能

 重松氏は、企業と投資家では、重要な投資対象が異なるとも指摘する。企業は設備対象への投資を重視しているのに対し、投資家は人材への投資を最も重視しているのだ。「伸びている会社に共通する要素として、人材にちゃんと投資しているという点があり、その点を投資家は重視しているのです」と続けて語る。

 こうした人的資本経営を実現する上で、SmartHRの機能はさまざまなシーンで有効となる。重松氏はその機能特長を四つあげた。

 一つ目に「ラクラク分析レポート」機能。SmartHR上に蓄積されている従業員データを簡単に可視化できるツールだ。例えば男女間賃金格差や女性管理職の比率、男性育児休業取得率といった、有価証券報告書に記載が求められる三つの項目を簡単にグラフ化、レポート化できる。蓄積されたデータを基に、すぐに人的資本情報の開示が行える。

 二つ目が「従業員サーベイ」機能だ。本機能では従業員のエンゲージメントやキャリア希望など、組織や従業員の状態をアンケートによって可視化する。「従業員のエンゲージメント(会社への愛着や思い入れ)を可視化するアンケートを実施できるエンゲージメントサーベイや、勤務環境を調査するハラスメントサーベイなどのほか、自社独自のアンケートを作成して収集することも可能です」と重松氏。サーベイを実施したスコアを人的資本として開示するような使い方にも生かせる。

 三つ目が「スキル管理」機能だ。従業員の資格やスキルの情報収集、一元管理を簡単に実現できる。資格の情報はもちろん、受講した研修なども記録可能だ。またスキルマップによって、従業員の資格の保有状況や研修の受講歴、スキルの習熟度などを可視化できる。部署ごとの傾向や、組織全体での分布状況を一目で把握可能だ。

 四つ目は「配置シミュレーション」機能だ。SmartHR上に蓄積された労務データや人事評価などの情報に基づき、効果的な人事配置のシミュレーションを実施できる。例えばスキル管理で集めたスキル情報や、従業員サーベイで収集したキャリアの希望情報を基に、さまざまな配置の検討が、ドラッグ&ドロップで簡単に行えるのだ。

SmartHRに蓄積されたデータから、従業員データを簡単に可視化できる。人的資本情報の開示にも役に立つ。
従業員のエンゲージメントやキャリア希望などをアンケートして、その結果を可視化できる。上の画面はエンゲージメントサーベイの分析画面だ。
従業員の資格やスキル情報を一元的に管理できる。部署ごとのスキル傾向や組織全体での分布状況も把握可能だ。
蓄積された労務データや人事評価に基づき、効果的な人事配置のシミュレーションを実施できる。さまざまな配置の検討もドラッグ&ドロップで行いやすい。

従業員サーベイを活用し
人的資本開示をスムーズに

 これらのSmartHRの機能を活用して、人的資本情報の開示を行っている事例もすでに存在する。総合色彩科学メーカーの東京インキは、SmartHRの従業員サーベイ機能を活用し、プリセットサーベイに用意されている項目の中から、開示内容に合った項目を利用し、短期間で人的資本情報の開示を実現できたという。

 重松氏は「人的資本経営を目的としたSmartHRの導入は徐々に増えています。一方で人的資本情報の開示に当たって、独自性の部分の開示に困っているお客さまは多いですね。人的資本の開示に当たっては経営戦略と人事戦略の連動が重要になりますが、人事が経営に踏み込めていなかったり、経営が人事にコミットできていなかったりといった例も多くあります。まずは、人事がきちんと経営戦略を理解し、それを達成するために人をどのように集め、育てるのかを考える必要があるでしょう」と指摘した。

 SmartHRでは、今後ますます重要性を増していく人的資本経営に資する機能の開発に取り組んでいく方針だ。「Smartは労務管理とタレントマネジメントの両方でデータを集めることができるため、結果的に人的資本経営につなげることが可能です。業務を効率化しながら自然と人的資本開示に適したデータの蓄積が可能である点が大きな強みですので、ぜひ使ってもらえたらうれしいですね」と重松氏は人的資本経営に向けた、SmartHR活用のメリットをアピールした。