契約書のデータベース化でバックオフィスのDXを推進「Contract One」
“契約データベースから、収益を最大化する”を提唱する「Contract One」は、契約の管理に特化したクラウドサービスだ。名刺管理サービスで有名なSansanが開発したContract Oneは、契約書の管理にまつわる法務部門や総務の課題を解決し、バックオフィスのDX推進に貢献する。あらゆるビジネスに必須となりつつある契約書のデータベース化により、どのような効果があるのか。その仕組みと革新性について探っていく。
契約管理に特化
Contract Oneは、契約業務に関連するデジタル変革(DX)において契約書の管理に特化している。契約業務のDX推進というと、コロナ禍で急速に普及した電子署名が有名だ。脱印鑑を旗印に、2020〜2022年にかけて各社の電子署名が日本でも普及した。その一方で、これまで見落とされてきたのが、契約を締結した後の紙の書類を中心とした管理業務だ。
契約書が必要になる業務といえば、一般的な企業のビジネスモデルでは購買や営業が思い浮かぶ。営業部門にとっては、取引先との受注までは契約書のやりとりに携わるが、発注をもらってしまえば業務の中心は伝票処理になる。購買部門でも、納入先との契約が完了すれば、以降は発注書などのやりとりが中心だ。そのため、契約書を管理するのは法務部門や総務部の仕事となる。
法務部門を設置できるほどの企業であれば、法律の専門家が契約書の作成から管理まで携わるケースも多い。そうした法務のプロフェッショナルが、締結した契約書の管理業務に追われてしまうと、業務変革にとっては支障となる。本来であれば、契約内容に関するチェックや管理を行わなければならない担当者が、契約書の保管や閲覧に忙殺されてしまうと、業務の負担になるだけではなく法務部門としての本業を遂行できないリスクもある。
Sansanの調査によれば、すでに70.9%の電子契約が導入されている中にあって、76.1%が紙の契約書を頻繁に利用しているという。その結果、64%が紙の契約書の管理に課題があると答えている。また、契約内容が的確に管理されていないと、取引先との更新のタイミングを失してビジネスの損失につながるリスクもある。さらに、複数の部門から同一の取引先と交渉するケースでは、過去の契約内容が的確に把握されていないと、不利な取引条件で契約してしまう心配もある。こうしたリスクを回避して、法務や総務部門の働き方改革につながる契約データベースがContract Oneだ。
アナログ情報をデジタル化する
Contract Oneの契約データベースには、3種類の契約書を登録できる。一つは、過去に蓄積されてきた紙の契約書だ。Sansanでは、名刺管理サービスで培ってきたスキャン代行を通して、紙の契約書の全内容をデータ化する。データ化には、同社独自の技術を活用し、人的なダブルチェックも含めて契約内容を正確に全文登録する。
二つ目は、PDFで保存されている契約書の登録だ。PDFの契約書をContract Oneにアップロードすると、その内容をAIを活用したOCRで解析して、紙の契約書と同様にテキスト化されたデータとして登録する。
そして三つ目は、電子契約書だ。クラウドサービスなどで保管されている電子契約書も、Contract OneはAPI連携により契約内容を解析してデータ化する。
これら三つの方法でデータ化された契約内容は、Contract Oneの中で契約の親子関係を自動的にひも付けし、日付などをチェックして契約の状況を自動で判定する。ちなみに、Sansanのスキャン代行では、もしも契約の終了や延長期日が空欄になっていても、人手によるチェックによって、契約データベースには正確な日時が追加で登録される。こうしてデータベース化された契約情報は、法務部門だけではなく、ライセンスを提供されている全ユーザーが閲覧可能になる。実際の閲覧画面では、契約先名や契約書のタイトルに期日などの一覧が表示される。
さらに、Contract Oneは「Azure OpenAI」を利用した「AI要約」機能を備えており、契約内容の要点を的確に把握できる。長文で専門用語の多い契約書でも、AI要約機能を使うと五つくらいの要点が箇条書きで表示される。営業担当者が取引先との過去の契約を参照するときに活用すれば、短時間で端的に契約条件などを把握できるようになる。もちろん、契約データベースには閲覧権限を設けられるので、契約書に合わせて参照できるユーザーを制限することも可能だ。
ちなみにSansanの調査によれば、1件当たりの紙の契約書を受領して管理するまでにかかる平均時間は63分で、保管された契約書の参照にかかる時間は20分になるという。63分と20分という時間を考えると、契約データベースによる保管と閲覧の時短は、法務部門や総務部門の業務時間を大幅に低減できる働き方改革になるだろう。
名刺管理のSansanと連携
Contract Oneは単独のサービスとして導入できるが、名刺管理のSansanと連携すると営業部門が名刺や取引先を閲覧したときに、自動的に契約データベースをひも付けして表示する。取引先との契約内容が見える化されると、営業部門にとっては商談などで活用できる機会も増える。また、契約データベースの検索では、契約書のタイトルや契約先名だけではなく、契約内容までデータ化されているので、詳細な契約先名まで調べられる。そのおかげで、二次や三次請け先まで的確に把握できるようになり、取引先の透明性が確保されコンプライアンスの貢献にもつながる。今後、電子署名などの導入が進んでいったとしても、各サービスが管理している契約書は、PDFデータが基本で契約内容の文面までは検索できない。それに対して、Contract Oneの契約データベースは独自のスキャン代行やOCR技術により、社内のあらゆる契約内容の見える化を実現する。
Sansanの調査では、紙の契約書を使う頻度が高い業界は、建設や不動産で88.1%に及ぶ。続いて、商社や卸業が88%と続く。さらに、運輸や物流で81.4%、金融が80.3%、広告・放送・出版では80%になる。こうした企業で法務部門がある組織ならば、Contract Oneを提案できる可能性は高い。中小企業であっても、IPO(新規公開株)に向けた契約管理の強化を行う企業や人材派遣などの業務で個人との契約が多い企業、フランチャイズ契約を展開している事業などでも、Contract Oneによる契約データベースは導入効果を発揮するだろう。