今月のテーマは……
革新的なアプリ開発をノーコードで実現
AppSheet の生成AI機能を使いこなそう

本連載の過去数回の記事で、Google Workspace に生成AIの機能「 Gemini for Google Workspace 」が搭載され、お使いの「 Google ドキュメント 」や「 Google スライド」のようなエディターアプリをパワーアップできることをお伝えしてまいりました。これ以外にも、さまざまなアプリに生成AI機能が実装されています。今回は、2023年7月号の本連載で紹介したノーコードアプリ開発ツール「 AppSheet 」に搭載された生成AI機能を取り上げます。

庄司大助(Dandy)
所属:グーグル・クラウド・ジャパン
パートナーエンジニアリング本部
役職:パートナーエンジニア
経歴:大学卒業後、日系の中堅企業のIT部門で、ITインフラ担当者として入社後、自動車系IT企業にて、ネットワークエンジニアを経験。その後、マイクロソフトにて、10年以上にわたり、オンプレミスからクラウドまで幅広くプリセールス活動に従事。現職に至る。

AppSheet の基本機能をおさらい

 現在、世間では、ノーコード・ローコードによるアプリ開発市場がにぎわいを見せています。これは、経済産業省がDXを推進する中で、企業が行うべき、中長期的な取り組みに、デジタルシフトを定義していることが影響の一つだと考えられます。コロナ禍など外的要因に対して、企業が変化に強くなるためには、部門を問わずデジタルの活用が必要であるということを、多くの方々が肌で感じられたのではないでしょうか。

「 AppSheet 」は、これらの課題を解決するため、業務を現場でより理解している人のアイデアを、高度なプログラミングなしで、簡単にアプリ/デジタル化できるところが大きな特長です。また、業務に必要なシステムを外部のITパートナーに委託すると、コストだけでなく、要件定義や設計などに時間も要しますが、これらの短縮が可能です。

▲ 【画像1】 Google スプレッドシート のメニューからアプリ作成を選択できる。

数十秒程度でアプリを作成

 画像1は、「 Google スプレッドシート 」でアナログに管理している貸し出し機器台帳をAppSheetでアプリ化したときのイメージです。既存の Google スプレッドシート のメニューから「アプリを作成」をクリックすることで、数十秒程度で、アプリが自動で生成されます。AIがデータソースとなるスプレッドシートの分析を行い、どんなデータ特性といった推測やカレンダーコントロールなどの動作を加えて瞬時に作成されたアプリが次の画像2です。

 ここから、より使いやすいようにカスタマイズをしていきますが、これをノーコードで実現できます。カスタマイズ時の画面イメージについては、2023年7月号の記事などを参照ください。

▲ 【画像2】実際に作成されたアプリの画面。

AppSheet にも Gemini を実装

 Google Workspace に生成AI機能が入り、「 Gemini for Google Workspace 」として追加のアドオンメニューを販売していますが、AppSheet にも生成AI機能が実装され、「 Gemini in AppSheet 」としてご利用いただけるようになりました。ただし、これはAppSheet 用のアドオンメニューとして追加購入する必要はなく、コアサービスである Google Workspace をご利用のお客さまが使用いただける機能です。例えば、「 Google Chat 」に「 Google Workspace Marketplace 」から、Gemini in AppSheet をインストールしていただくと、自然言語で会話するようにチャットでアプリを作成できます(執筆時点では、英語での会話が必要)。画像3は、実際に会話をしながら、PC資産管理アプリを作成する際の一例です。

▲ 【画像3】実際にチャットで会話をしながら、PC資産管理アプリを作成していく。

 私が「PC管理アプリを欲しいです」とお願いすると、Gemini in AppSheet が必要なデータ項目、データを入力するシート区分などを作成し、「初期のテーブル構成はこれでいかがでしょう?」というように聞いてきます。データを確認し、足りないものがあれば、追加したいデータ列の追加や列名の変更などをチャットで再度お願いします。データ構成がそろったら、次は「どのタイミング、どんな手法で通知をしてほしいか?」を決める通知機能の設定です(画像4)。今回のPC管理台帳であれば、「デバイスが追加されたとき」や「メールで通知を受けたいか」といった内容をチェックボックスから選択して、通知機能の設定を完了させます。

▲ 【画像4】通知機能の設定画面。

 最後に、「アプリを作成」をクリックすると、先ほど、スプレッドシートで作成した際の画面と同じように数十秒程度でアプリを生成してくれます。

 現場でデジタル化を進めたいという意向をお持ちのお客さまは、多くいらっしゃると思います。しかし、実際のところ利用者のITリテラシーやアプリ開発という専門知識の不足を懸念され、なかなか現場のデジタル化が進まないといったケースは少なくありません。そうしたお客さまにお薦めするのが、Gemini in AppSheet です。現場のデジタル化やAI活用の入口として、Gemini in AppSheet をぜひ一度お試しください。

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