テーマ ポータブル電源の便利な活用法

災害対策やイベントに一つあると安心なポータブル電源

今回は、すっかり定着したポータブル電源を紹介する。キャンプ用と思われがちな製品だが、実は会社にとっても大きなメリットがある。いざというときの災害対策やイベントの際に活躍すること間違いなし。必要になる前に手に入れるべきデバイスだ。

今注目の「ポタ電」

 ポータブル電源は「ポタ電」とも呼ばれ、すっかり定着している。3〜4年程前にちょっとしたブームになって、新製品が続々登場した。いくつかのメーカーがメジャーになって、今でも新製品をリリースし続けている。

 よく「キャンプやアウトドア向けだ」と言われるが、もちろんそんな使い方にも向いている。個人的には釣りが好きなので、よくポータブル電源を持ち出している。特に夏場は暑いので、屋外用の扇風機を使っている。ほかにも、ケトルを利用してお湯を沸かしてコーヒーを飲むなど、屋外で電源が利用できるメリットが大きい。

 モバイルバッテリーとの最大の違いがここで、いわゆる普通のコンセントで各種の電気製品を利用できるわけだ。製品によって出力が違うのだが、大きなモデルは出力が高い製品が多く冷蔵庫さえ動く。USBポートしか持たないモバイルバッテリーとは大きく違う。もう一つの違いが容量だ。モバイルバッテリーは、大きくても20,000mAh程度の製品が多く、一般的には5,000〜10,000mAhが主流だ。

 対して、ポータブル電源はそもそも単位が「Wh」になる。今回レビューする「Anker 522 Portable Power Station (PowerHouse 320Wh)」は、ポータブル電源の中でかなり小型なモデルながら、容量は320Whだ。これを変換すると、8万6,000mAhを超える。iPhone 8なら約39回充電できるという大容量で、テレビが約2.6時間視聴でき、扇風機が約7時間動く。Ankerでも、もっと大容量な製品が用意されており、Anker Solix F1500 Portable Power Stationなら、1,536Whだ。iPhone 8なら約186回充電できるという。

 もちろん、ほかのメーカーからも容量の大きなモデルがリリースされており、中には、複数の大容量ポータブル電源を組み合わせて、家中の電力をまかなうモデルさえ登場している。

今回は例として小型軽量モデルの「Anker 522 Portable Power Station」を撮影する。

製品選びのポイント

 製品を選ぶポイントは、まず必要な容量の見極めだ。容量が大きくなるほど価格が上がるだけでなく、重量も増す。Anker 522 Portable Power Stationでも重量は約3.9kg。大容量モデルでは、30kgを超える製品も珍しくなく、ちょっとした移動だけでも大変なので、大は小を兼ねない。容量のイメージが湧きづらいと思うので、家電の利用時間やスマホの充電台数を目安に選ぼう。

約3.9キロと1人でも余裕で運べる軽さだ。

 もう一つが出力で、ここがモバイルバッテリーと大きく違う。モバイルバッテリーの場合は、スマホやPCに充電(給電)する用途が主流になる。充電なら出力が弱いと時間がかかるだけなので、まあ使える。ところが、ポータブル電源では家電なども動かすために、出力が弱いとそもそも動かない電気製品が出てくる。出力が低くても動く扇風機は多くのポータブル電源で使えるが、ケトルや電子レンジは動かない可能性が大だ。Anker 522 Portable Power Stationは、定格出力300Wと、あまり高い出力でないため扇風機などの利用がメインだ。上位モデルでは、定格2,000W以上の出力の製品もあり、電子レンジでも十分使える。

定格で300Wと小型モデルなので出力が低い。USB端子はUSB Type-CとUSB Type-Aが付いている。
スマホは30回以上充電できる(機種による)。
PCも5回程度充電できる。屋外のイベントなどでも活躍するはずだ。

 当然だが、消費電力の多い電気製品は駆動時間も短くなる。つまり、容量が大きくて重いモデルほど、比例して出力が大きく設計されている。このあたりのバランスを含めて製品を選んでほしい。逆に言うなら、スマホやPCの充電にしか使わないなら、容量が少なめの製品を複数用意した方が使いやすいケースも出てくる。同時にいくつかの場所で充電ができるわけだ。つまり、出力が低くて容量が大きなポータブル電源は基本的には存在しないので、その場合は出力を重視して、複数の製品を買うというスタイルも候補に入れておくとよい。

 最近のポータブル電源は、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用しているモデルが多く、耐久性がかなり高くなっている。3,000回程度の充電ができる製品が多いので、普通に使っても10年近くは利用できるわけだ。

意外と幅広い活用用途

 ビジネスユースで考えられる用途の筆頭は、災害用だ。停電してもPCやスマホ、タブレット、ルーターなどが動かせる。最近の仕事は電子機器がないと仕事にならない。例えば、停電してもノートPCにバッテリーが残っていればある程度は使える。だが、ルーターが使えなくなるとインターネットに接続できない。こんなときでもポータブル電源を使えばいいわけだ。

 もちろん、スマホに充電できるだけでも安心感が桁違いだ。例えば、普通のスマホが100回充電できるポータブル電源でも、実質的には200名くらいのスマホを節約しながら使うことができるだろう。災害が起こった時点で節約を心がければ、半分程度充電できるだけでも大きなメリットがある。また、テレビが使えれば情報収集ができる可能性が高い。大きな災害ではスマホが使えなくなる可能性が高い。しかし、テレビは視聴できるケースは多いので、ポータブル電源をつなぐことでニュースを視聴できるわけだ。

 いざというときのために、1社に1台は用意しておきたいところだが、所有していれば普段から案外役立つ。

 どこででも電源が取れるので、イベントなどの会場で延長コードが間に合わないときに重宝する。例えば、急きょ支払い用のレジを敷設したり、サイネージを表示したりなどにも使えるわけだ。屋外でのイベントでは照明やマイクを利用するためにも使える。リールで巻く長い電源ケーブルよりも使い勝手が良い場面も多いだろう。また、河原やグラウンドなどでのイベントでは、そもそも電源が取れない可能性もあるので、コードでは間に合わないのだ。

 実は、ポータブル電源が1台あれば、意外な用途にも役立つ。僕の会社では草刈りにも使っている。電動の草刈り機も最近では数千円で買える。これとポータブル電源を組み合わせれば、どんな場所でも手軽に草刈りが可能だ。知人は電動洗浄機で外構の掃除をしているそうだ。

 また、ある企業では、入り口のアルコール消毒器にポータブル電源を利用していた。コンセントの有無による置き場所の制約から開放されるのは大きなメリットだ。

ソーラーパネルと組み合わせると、屋外での長期利用も実現できる。
画像提供:アンカー・ジャパン
小型モデルでもテレビや扇風機は動かせる可能性が高い。