アップルの宅内IoTアプリ「ホーム」とスマートワークの意外に近い関係
スマートワークの視点でみるWWDC 2016
文/ジャイアン鈴木
6月14日、アップルは開発者向けイベント「WWDC 2016」において、今秋に正式版リリース予定の「iOS 10」に関する発表を行った。同社はiOS 10を「史上最大のリリース」と位置づけており、「メッセージ」アプリを大幅アップデート、そして「写真」「ミュージック」「News」アプリを再設計、さらに「Siri」「マップ」「電話」「メッセージ」の各機能をデベロッパーに開放する。
今回はこの大型アップデートで新たに追加される宅内IoT向けアプリ「ホーム」について、概要と今後の展望を解説しよう。
「ホーム」は、いわゆる「ホームオートメーション」を実現するためのアプリだ。アップルが制定している「HomeKit」に対応した照明、ブラインド、ドアロック、サーモスタット、ネットワークカメラなどの設定・管理・制御を、iPhoneやiPadなどのiOS機器から行えるようになる。なおApple Watchからも一部機能については操作可能だ。
アップルのニュースリリースによれば、現時点で約100種類のホームオートメーション製品が「HomeKit」を採用しており、今年の後半からBrookfield Residential、KB Home、Lennar Home、R&F Propertiesなど米国の大手住宅施工業者が、新築住宅を建てる際に対応製品の設置を開始するとのことだ。
「ホーム」はSiriにも対応しており、音声でコマンドを実行できる。これまでSF映画で幾度となく観てきた「会話する家」が、iOS機器を通じて現実のものになるわけだ。
また、セットトップボックスの「Apple TV」を設置していれば、屋外からホームオートメーション製品を操作することも可能。たとえば自宅に到着する前にエアコンをつけたり、来客があったときに屋外からカメラ付きインターフォン経由で応対したり、外出後に遠隔操作でドアロックすることも可能となるだろう。宅配業者が対応するかどうかは別にして、外出中に宅配便が届いたら、いったん玄関を解錠して、室内に荷物を入れてもらう……という活用方法も重宝しそうだ。
「ホーム」アプリの応用範囲は非常に広い。それぞれ独自のアプリから操作できるだけでは、ただのリモコンに過ぎない。外出時・帰宅時の一連の操作をまとめて実行したり、なんらかのイベントに反応してホームオートメーション製品を動作させられることにこそ価値があるのだ。
また、ネットワークカメラには動体センサーや人感センサーが内蔵されている製品が多いが、子育てや介護のために自宅勤務している方たちにとっては、仕事しながらでも別室の様子を見守りつつ、適宜遠隔操作で照明や空調を調整し、なにかあった場合には手元のiPhoneやApple Watchで通知を受けられるというのは安心感が高いだろう。スマートワークを選んだ人たちにとって、「ホーム」アプリは心強い存在となる可能性が十分にある。
肝心の日本市場での普及がいつになるかだが、意外に早いのではないだろうか? たとえばソニーから発売中の見守り、エアコン・テレビの遠隔操作、音楽再生が可能な照明キット「マルチファンクションライト」はiOS端末に対応している。すでに機器自体にはさまざまな機能をコントロールするためのプログラムが実装されているわけだから、あとは「ホーム」アプリからそのプログラムを実行できるようにすればいいだけだ。
このほかのIoT家電にも同じことが言える。もちろん「HomeKit」の対応には手間と時間がかかるが、ベースには「ホーム」アプリを利用できる。ゼロから専用アプリを作るよりははるかに短い時間で制作できるはずだ。
筆者プロフィール:ジャイアン鈴木
EYE-COM、TECH Win、TECH GIAN、PDA Magazine、DIGITAL CHOICE、ログイン、週刊アスキー、週アスPLUSと主にPC系メディアで編集兼ライターとして勤務。2015年1月よりフリーの編集兼ライターとして活動を開始しました。