クロスセルとアップセル

顧客一人あたりの単価を高め、顧客生涯価値(LTV)を向上させる営業手法。「クロスセル(cross sell)」と「アップセル(upsell)」の違いは、顧客単価向上のアプローチ方法にある。

クロスセルは、顧客が購入した商品や購入を検討している商品に関連する別商品を提案し、一緒に購入してもらう手法。例えば、ECサイトの商品の購入画面で「よく一緒に購入される商品」を表示する。飲食店で料理を注文した顧客に、料理に合う飲み物をセットで勧めるなど。クロスセルの最大のメリットは、購入点数が増えることによる顧客単価の向上だ。顧客が「関連商品をお得に購入できる」「複数の店舗を回る手間が省ける」といったメリットを実感し、ブランドイメージが上がれば、リピーターになる可能性も高くなる。

アップセルは、顧客がこれまで購入したことがある商品や、購入を検討している商品よりも上位モデルを提案し、購入してもらう手法。例えば、パソコンの購入を検討する顧客に、より高機能な上位機種を勧める。ホテルの部屋やフライト座席のアップグレードを勧めるなど、顧客に「上位のものを選んだほうが、結果的にお得」であることを働きかける。上位を選択して得られる効果を具体的に提案することが必要となる。

クロスセルもアップセルも、既存顧客の成功体験(カスタマーサクセス)を重視した営業方法だ。これまでのBtoBビジネスでは、新規顧客の獲得に比重が置かれてきた。しかし近年では、少子高齢化やコロナ禍により新規顧客の開拓が困難となっている。また、新規顧客の獲得から販売までにかかるコストは、既存顧客に対する販売コストの約5倍かかるとされている(1:5の法則)。既存顧客との関係性を深め、クロスセルやアップセルを実戦することで、コストを抑えつつ顧客単価と購買頻度の向上が期待できる。
(青木逸美)

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