ダイナミックプライシング
商品やサービスの価格を需要に応じて変動させる仕組みのこと。「変動料金制」ともいう。近年はAI(人工知能)が膨大なデータをもとに、きめ細かく価格を算出する。航空会社やホテル、テーマパークの入場料、スポーツ観戦のチケット代など、さまざまな分野で導入が進んでいる。
JR東日本の「オフピーク定期券」など、鉄道業界でも導入が始まり、ピーク時間の混雑緩和が期待されている。国土交通省でもタクシーの変動運賃制を導入する方針で、年内に実証実験に乗り出す。現行運賃と比べ、料金の変動幅は上下5割の範囲内に設定。トラブル回避のため、スマホなどで行き先を予約し、事前に料金を確定させる方針だ。
ダイナミックプライシングの導入が活発化したのは、2019年ごろから。新型コロナウイルス感染症の影響により、スポーツイベントや音楽・演劇公演などは、開催の中止や規模縮小を余儀なくされた。売り上げが落ち込むなか、収益を最大化する手法として注目が高まった。AI技術のめざましい発展も導入を後押しした。
例えば、サッカーのJ1リーグでは、AIが過去の販売実績データをもとに売れ行きを予測し、成績が好調でチケットの売れ行きがよければ価格を上げ、不調だったり天候が悪かったりすると値下げをする。システムの導入にはコストがかかるが、チケット収益の最大化、動員数の最大化、不正転売の抑止などのメリットが考えられる。
安易な導入には弊害もある。価格が高騰すると消費者の反感を買い、顧客離れのリスクが高くなる。需要と供給だけの値付けが最適とは限らない。納得感のある料金設定ができるかどうかが焦点となる。
(青木逸美)