産業用が大きな成長を維持、セキュリティや可視化がポイント

NETWORK

 サーバーでは製造業でのIoTやエッジコンピューティングを活用したDXの進展や、AIによるデータ活用などの用途でサーバーの需要に期待するという声が聞かれたが、こうした産業用のネットワーク機器の成長も期待できそうだ。IDC Japanが2月15日に発表した国内産業用ネットワーク機器市場予測によると工場、プラント、輸送機械といった環境で利用される耐環境性能の高い産業用ネットワーク機器は、IoTの進展やDXの推進とともに導入が進展し、2018年、2019年と2桁成長を続けた。2020年は国内産業用ネットワーク機器市場も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたが、それでも2.2%と成長を維持したという。

 2021年後半からは産業用ネットワーク構築プロジェクトの回復が見込まれ、2021年の前年比成長率は7.8%と予測している。その後も同程度の成長率で成長を続け、2020年~2025年のCAGR(年平均成長率)は7.0%になると予測する。

 産業機器のネットワーク化が進む中で産業用ネットワークの重要性と複雑性は増しており、ネットワーク管理の必要性が高まっている。そのため自律的回復力を備えたネットワーク自動化ソリューションや、無償化したネットワーク可視化ソリューションなど、ネットワーク管理ソリューションを組み合わせた製品提供がビジネスの成長のカギを握りそうだ。

 このほかネットワーク機器メーカーから企業のオフィスやテレワークに向けた商機について、無線LAN製品では高性能で高価な製品が売れていること、セキュリティ機能や管理機能を加えた製品の需要が高まっていること、セキュリティへの意識が高まっており特にクラウドセキュリティに関連する製品やサービスの需要が高まっているなどの声が聞かれた。また産業用と同様にクラウドを含めたネットワーク全体を可視化する監視・管理ソリューションの提供も重要だとの指摘も聞かれた。

シスコシステムズ

無線LANとクラウドセキュリティ、管理ツールが伸びる

 コロナ禍の当初はWebexやVPN製品の需要が伸びたが、今年2月ごろから無線LANを中心にネットワーク機器の売上がV字回復している。製造業が業績を維持できており、運輸業や一部のホテルも好調だという。執行役員 エンタープライズ ネットワーキング事業担当 眞﨑浩一氏は「ホテルではホスピタリティ用途でWi-Fi製品の需要が伸びている。公共でも庁内の密の回避を目的に無線LANの導入が増えている」と話す。

 セキュリティへの関心が高まっており、クラウド管理型無線LANのMeraki MXシリーズと「Umbrella」の需要が伸びている。眞﨑氏は「出社している人が10分の1に減ってもトラフィックは数倍に増えている。ネットワークには安心・安全に加えて快適に使えることが求められる。Web会議が止まる、リモートワークができないといったトラブルを可視化して改善したり未然に防いだりするためのリモート管理ツール『DNA Center』や、インターネットを含めたグローバル可視化ソリューションの『ThousandEyes』への需要も拡大する」と見通しを述べた。

ジュニパーネットワークス

AIで管理・運用を自動化して信頼性と快適性を向上

「Marvis」と呼ばれるAIエンジンで、AIが優秀なITスタッフとしてネットワークの障害特定と切り分けを行うソリューションが好調だ。LANスイッチはもちろんWANルーターやセキュリティ装置を含めて、ユーザーのアプリケーションが利用する通信経路を可視化できる。例えばユーザーの通信状態が低下するとMarvisが該当する通信のパケットをキャプチャリングして自動的に解析を行う。このためユーザーが障害を認識する前に復旧させることも可能だ。さらにMarvisはサービスレベルの数値情報でユーザー体感を定量的に表示できるので、通信品質に不満を持っているユーザーを特定して先回りする対応も可能だ。

 常務執行役員 エンタープライズ事業 兼パートナービジネス統括本部長 菅原龍一氏は「例えば病院では入院患者と面会ができない家族とのコミュニケーションにアクセスポイントの需要が期待できる。当社の製品はMistによる自動運用で高い信頼性を実現するため提案を差別化できる」とアピールする。

富士通

セキュリティなどの付加価値を加えた製品提供が必要

 富士通のインフラストラクチャシステム事業本部 エンタプライズネットワーク事業部で取り扱う自社製のスイッチ、ルーター、無線LANアクセスポイントなどの製品について同事業部のプロモーション部 部長 寺門知之氏は「大手のお客さまの大口商談で中堅中小企業の落ち込みを補った。その結果、通年では昨年度も前年比微増となった」と振り返る。

 売れ筋について寺門氏は「突出したものはないが働き方改革やニューノーマルに向けて、リモートやハイブリッド、インターネットブレイクアウトといったキーワードに関連する技術を使ったネットワークが求められている」とヒントを語る。

 寺門氏は「プロダクトありきではなく、ソフトウェアやサービスを加えた価値を提供する必要がある。テレワーク環境やクラウド利用の観点で、お客さまの業務拠点の安全を支えるセキュリティ機能をサービスとして機器に追加して提供する構想がある。当社の業種別ソリューションと連携したネットワークのサービスやライセンスのビジネスも構想している」と説明する。

バッファロー

Wi-Fi 6対応APやマルチギガ対応スイッチの需要が増える

 文教市場はGIGAスクール構想により10GbEやWi-Fi 6、トライバンドに対応したハイスペックなアクセスポイントとPoE給電できるスイッチ製品が好調だった。介護福祉や公共ではオンライン面会やテレワーク需要から公衆無線LAN製品や安価なアクセスポイントが昨年より販売台数が増加しているという。またコロナ禍によりテレワークを行う企業が増加しているのに伴い、セキュリティに関するニーズも高まっているという。法人マーケティング部 係長 稲子裕宣氏は「昨年はUTM機能搭載のVPNルーターを出荷し、通常のVPNルーターと合わせて多くの引き合いがあった」と話す。さらに在宅勤務でもオフィスの機器管理ができるリモート管理サービス「キキNavi」も提供しており、利用社数が年々増加しているという。

 今後の見通しについて稲子氏は「テレワークやリモート授業により企業や学校でのトラフィックが増大し、より高速に通信できるWi-Fi 6対応アクセスポイントやマルチギガ対応スイッチ製品の需要が増える」と見ている。

アイ・オー・データ機器

リモート管理やリモートアクセスのツールも提供

 昨年2月からWi-Fiルーター製品の販売が好調を維持しているという。企画開発部 茗荷谷 誠氏は「Wi-Fi 6対応機種への買い替えが目立つ。自宅に固定回線がないお客さまにSIMフリー4G(LTE)ルーターが売れている」と説明する。また企画開発部 渡邊 昂氏は「速度やアンテナ数で製品が選ばれており、上位の機種が売れている」と指摘する。

 テレワーク利用に向けて管理ツール「I-O DATA Device Management」を提供しており好評だという。今後は在宅勤務時のセキュリティ強化が重視されると見ており、家庭内のIoT機器へのサイバー攻撃や不適切サイトへの閲覧を防ぐ機能を搭載したWi-Fiルーターを発表する予定だ。

 NAS製品も好調だ。企画開発部 中村一彦氏は「クラウドストレージの利用にリスクを感じているお客さまに、リモートアクセスによるデータ共有用途で売れている」と説明する。企画開発部 藤木慎太郎氏は「当社のリモートアクセスツール『LAN DISK CONNECT』との組み合わせが好評」だと強調する。