今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー - 第23回
オンラインで商談&マネジメントをこなす術
『テレワークでも売れる新しい営業様式 直接会わずに成果を出すテクニックとマネジメントとは』藤本篤志 著/技術評論社
本書は、在宅勤務に代表されるニューノーマル時代にあって、「営業」という仕事をいかにアップデートすべきか悩んでいる社会人にぜひ読んで欲しい一冊。『コロナ禍が過ぎたら元通りになるんだから、オンライン商談に飛び付くのは無意味』と思っているアナタはすでに差を付けられていることに気づくべきだ。
文/成田全
オンライン商談ができないと“時代”に取り残される
外へ出て、できるだけ多くの企業をまわって名刺を配り、得意先へ出向き、プレゼンや商談を重ね、契約後は全力でサポートする……営業という仕事は、とにかく「足で稼ぐことだと教えられてきた」という人が多い。ところが今回のコロナ禍で直接企業へ訪問することはほぼ不可能になってしまった。もちろん飛び込み営業などもってのほかだ。先日、ある金融関係で働いている営業マンと話をしたところ、「出かけて行って相手の顔を見ないと営業ができないので、とにかくままならない」とこぼしていた。
今年に入ってから、出社をせずにリモートで仕事をすること、外回りもダメ、しかし営業目標の下方修正はなしと会社から通達があって、「売りたいのに売れない、リモートでどうやって営業したらいいのか」とジレンマに陥っている人もいるだろう。しかし「そんなことを嘆いていては明らかに時代に取り残される」というのが、今回ご紹介する『テレワークでも売れる新しい営業様式~直接会わずに成果を出すテクニックとマネジメントとは』だ。
本書は今「営業ができない!」と言っている人たちは、実際に顔を合わせなくても対面しながら営業ができる「オンライン商談」の時代がとっくにやってきていたことに気づいていなかった、もしくは知ってはいたものの本気になっていなかっただけだ、と指摘している。
もしかすると、中には「テレワーク営業は所詮つなぎ。落ち着いたら、元のやり方に戻せばいい」と思っている人もいるかもしれないが、その考えはこの先通用しない。テレワークによる営業はコロナ禍によって仕方なく出てきた代替案ではなく、移動時間をゼロにするなど、営業のあり方を根底から覆す圧倒的なメリットが見えるようになったのであって、その利便性が今後広がりを見せることは確実だ。さらにオンラインによる商談ができている会社とできていない会社には、現段階ですでに会社間格差がついており、本書にはその格差を縮める狙いもあるというのだ。
直接会わずに対面する「オンライン商談」の進め方
オンライン商談とは、直接会わずに“対面”しながら商談を行うことと本書で定義されている。パソコンやタブレット、スマートフォンのカメラとマイクで画面を通して相手の顔や表情を見ながらネット上で会話をして営業できるというのが、従来の電話やFAX、電子メールとの大きな違いだ。
しかしまだ世間一般に浸透しているとはいえず、「食わず嫌い」なところがあることは否めない。本書はそうしたオンライン商談のアポはどう取り付け、どのように進めたらいいのかという大枠の話と、予定の入れ方や商談中の操作はどうしたらいいのかといった細かなノウハウまでを、Web会議サービス「Zoom」をもとに解説している。Web会議上でパワーポイントやエクセルなどを使ってプレゼンをするといった「従来のやり方」と同じ機能が使えることなども紹介されているので、新しい営業形態に難色を示す人や、デジタル技術に苦手意識のある人もすんなりと理解ができる(またそう思っている商談相手も納得させられる)だろう。
さらに慣れないテレワークで四苦八苦している人に対しての心構えや時間のマネジメント法、どうやったら成果を出すことができるのかを指南するパートも充実している。また一日の働き方をエクセルで管理し、バランスを記録して分析をする、著者の長年の営業コンサルタント経験から編み出された「働き方バランス分析シート」が惜しげもなく公開されているので、こちらも是非参考にしてもらいたい。
到来する「テレフィスハイブリッド営業」時代のために
続くパートは部下を束ねる立場の人に役立つ、マネジメントのやり方だ。始業についてや営業会議の必要性、部下からの報告をどうしたらいいのか、働く時間や問題点を指摘する方法など、テレワークだからこそのメソッドは参考になるだろう。さらには時間さえ合えば、部下のWeb会議に参加して「同席営業/商談」が可能となったり、チームで迅速な対応をするための名刺管理の徹底などこれまでになかったメリットも指摘されており、気づくことも多い。
今後はオフィスワークとテレワークが混在する「テレフィスハイブリッド営業」が普通の時代となる。それにはどのような新しいメリットやデメリットがあるのか、今すぐに問題を整理して、オンライン商談を始められれば他社に先んじることができる。この機会を逃す手はない。
著者の藤本氏は「おわりに」で「『自分で考えて難局を乗り越えろ』と営業マン自身にゆだねてしまうマネジメントが最も愚策」「“自分流”が集まった組織ほど脆弱なものはありません」と、“自分流”ではなく“社流”への転換を促している。物が売れるためのオンライン商談は、今後の会社の業績発展に不可欠な要素となる。今回のコロナ禍を「転じて福となす」ためには、トップがリーダーシップを発揮し、会社単位で目指す方向を決め、しっかりとマネジメントしていくことが鍵となる。本書はその一助となろう。
まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック
次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!
『ポスト・コロナ 業界の未来』(アクセンチュア 監修/日本経済新聞出版)
新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界経済が危機に瀕しています。どのように危機から脱け出し、立て直していけばよいのか。日本経済を14の業界に分けて網羅。業界ごとにアクセンチュアの専門家がコロナ危機を踏まえた現状の課題と展望を明らかにした上で、キーパーソンと対談。解説と対談を合わせて展開し、各業界が向かうべき道を浮き彫りにします。(Amazon内容紹介より)
『ざんねんなオフィス図鑑』(沢渡あまね、ワークフロー総研 著、白井匠 絵/シーアンドアール研究所)
アナログで非効率なオフィスのあるあるを46句の川柳で紹介! アナログで非効率かつ前時代的なオフィスの“あるある”シーンをかるたのような46句の川柳にしました。風刺の効いた「シュールなイラスト」+「わかりやすい解説」で、オフィスの問題点を紹介します! そろそろ、場所や時間を選ばない新しい仕事のやり方に変えませんか?(Amazon内容紹介より)
『決定版 ネゴシエーション3.0 解決不能な対立を心理学的アプローチで乗り越える』(ダニエル・L・シャピロ 著、田村次朗、隅田浩司 監修、金井真弓 訳/ダイヤモンド社)
あらゆる感情のもつれを解き、人間関係を再構築する交渉の極意。民族や宗教、政治的な対立、企業の権力闘争や家族の不和を解決。ダボス会議のリーダーたちもカリキュラムを体験! ネゴシエーションの源流かつ最高峰であるハーバード交渉学の集大成。(Amazon内容紹介より)
『デジタル時代の基礎知識『広告』~人と商品・サービスを「つなげる」新しいルール』(小林慎一、吉村一平 著/翔泳社)
口コミを起源とする「広告」は技術の進展に伴い、看板、ビラ、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、ウェブと驚くほど多様になりました。そんな時代に最適な広告効果を上げるにはどうすればよいのでしょうか? 本書では各広告媒体の特性・つくり方から、最新の広告効果の測定法と改善の仕方までを詳しく解説しています。(Amazon内容紹介より)
『おうち仕事術 テレワークを最適化する50のテクニック』(戸田覚 著/翔泳社)
これからの時代「仕事ができる」=在宅勤務が上手! 新型コロナウイルスの影響によって、一気にテレワーク(在宅勤務)が普及しました。けれども、集中できない・やる気が出ない・必要な道具がそろっていない、など思うように仕事が進まず悩んでいる人も多いでしょう。本書では、こうした悩みを抱える人向けに自宅で最大限の成果を出す仕事術を解説しています。コミュニケーション、モチベーション、会議など、多くの人が悩んでいるであろう事柄の解決策を提示します。また、自宅仕事を快適にするPCの操作法や悩みの解決に役立つアプリやサービスも多く紹介しています。(Amazon内容紹介より)
筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)
1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1600人以上を取材。『誰かが私をきらいでも』(及川眠子/KKベストセラーズ)など書籍編集も担当。