Surface Proを日常的に使える環境で
個々人の個性を大切にした学びを実現
CASE:立教池袋中学校・高等学校
立教池袋中学校・高等学校は、中高一貫教育を超えて、大学までを視野に入れた「立教学院一貫連携教育」の実現を目指し、「テーマを持って真理を探究する力を育てる」「共に生きる力を育てる」を一貫連携教育の目標として掲げている。高校2年生から卒業制作論文の制作に取り組むなど、生徒自身の興味関心を追求していくその学びの中で、2018年から進めているのが、1人1台の端末環境の整備だ。
立教池袋中学校・高等学校では、生徒1人に1台の端末として2in1 Windows端末「Surface Pro」を採用している。その導入の経緯について、ICT準備委員会の1人として同校のICT環境整備をけん引した教務部長 数学科教諭の酒井一哉氏は「2015年に校長から、これからの時代に合わせた先進的な環境整備を進めるという指針が示されたのがきっかけです」と振り返る。当時はWi-Fi環境の整備も進んでいなかった同校において、2015年から段階的にWi-Fi環境の整備や各教室へのプロジェクター設置などICT環境整備を進めた。また、端末整備を行うことで実際にどういった授業が実現できるのか検証するため、教室の一つに40台の端末と2台のプロジェクター、Wi-Fi環境を整備し、ICT教育を実践するためのトライアル教室として運用を行った。
「トライアル教室に導入した端末はSurface ProではないデタッチャブルPCでしたが、OSは変わらずWindowsでした。本校では高校2年生から卒業論文に取り組みます。研究成果をExcelでまとめた図表にし、Wordに貼り付けたり、PowerPointで研究内容をプレゼンテーションしたりするなど、Officeソフトを以前から積極的に活用していました。管理のしやすさやコスト面などから、iPadの検討もしましたが、本校の学びにはWindows端末が適していると判断しました」と酒井氏。
生徒用のSurface Proは2018年度の高校1年生から導入をスタートし、2020年度には高校の全学年に整備された。採用したSurface Proはメモリ8GB、ストレージ256GBのスペックで、動画編集などを行っても十分に動作する性能だという。また、Surface Proは家庭に購入費を負担してもらい、生徒は端末を自宅に持ち帰り家庭学習にも活用できる。学校では授業に必要のないアプリケーションは起動できないよう、MDMツールで設定されているが、学校のWi-Fi環境から出るとそれらの制限が解除される設定が施されており、生徒たちは比較的自由に端末が使える環境にある。
効率的な授業で話し合いを深める
酒井氏は「端末管理は、生徒が自由に学べるようにこだわっています。生徒たちはスマートフォンを所有しており、それと同等の使いやすさがなければ生徒たちは日常的に使ってくれないでしょう。本校の教育観として“一人ひとりの個性を大切にする”があり、端末の活用もそれに基づき、個性豊かにカスタマイズができる端末を指定し、その環境も整備しています」と語る。
Surface Proを授業で活用するようになったことで、非常に効率的に授業を進められるようになったという。以前であれば黒板に板書内容を書いている時間など、授業の中で生徒は待つ時間が発生していたが、ICT環境を整備したことで、板書内容をプロジェクターで簡単に投映できるようになっただけでなく、学びに必要な大量の情報を簡単に提示できるようになった。授業を効率化できたことで、生徒の意見を聞いたり、話し合ったりといった時間も確保できるようになったという。
先進的にICT環境整備を進めてきた立教池袋中学校・高等学校。コロナ禍においてもその環境整備のおかげで、Teamsを活用したオンライン授業を実現でき、学びを止めることなく授業を継続できた。その一方で、「立ち止まる機会にもなった」と酒井氏。
「オンライン授業が実現できたことで、知識の伝達だけなら学校に来なくてもいいことが分かりました。半面、学校でしかできない授業もあることが浮き彫りになりました。特に非認知能力のような部分は、中学生においては幼い部分も多く、対面による学校生活の学びの中で育つものです。高校生でも、チャット上で軽いコミュニケーションはできますが、深い議論を行うことは困難です。本校では来年度から中学生の1人1台端末整備がスタートし、高等学校でもBYODスタイルでの端末活用に切り替えていきます。対面の学びの良さを生かしながら、新たなICT環境のフェーズに進んでいき、学校の役割をしっかりと果たしていきたいですね」と酒井氏は展望を語った。