あの人のスマートワークが知りたい! - 第28回

印度カリー子さんに聞く 新作レシピを生み出すアイデアと原動力


スパイス料理研究家 印度カリー子さんに聞いた

2019年に初めての著書を上梓してから3年間で、スパイスカレー関連の書籍を10冊出版し、どれもが好評のスパイス料理研究家の印度カリー子さん。累計発行部数は25万部を超える。最近ではテレビやラジオにも引っ張りだこで、名実ともにスパイスカレー業界のトップランナーとなった彼女に、その働き方やライフスタイル、レシピの生み出し方、そして将来への抱負について聞いた。

文/豊岡昭彦


印度カリー子
スパイス料理研究家兼タレント。スパイス初心者のための専門店 香林館株式会社代表取締役。1996年11月生まれ、仙台出身。2021年3月、東京大学大学院農学生命科学研究科修了。大学1年生の時に、姉のために初めてスパイスカレーを作り、その魅力にはまる。スパイスカレーの魅力を広めるため、大学2年時にスパイスショップを開設。「スパイスカレーをおうちでもっと手軽に」をモットーに、初心者のためのオリジナルスパイスセットの開発・販売をするほか、レシピ本の執筆、企業との商品開発、マーケティング、コンサルティングなど幅広く活動。JAPAN MENSA会員。主な著書に、『おもくない! ふとらない! スパイスとカレー入門』(standards/2019年)、『ひとりぶんのスパイスカレー』(山と渓谷社/2019年)、『印度カリー子のスパイスカレー教室』(誠文堂新光社/2020年)など10冊。累計発行部数は25万部を超える(2021年8月現在)。
https://indocurryko.net/
Twitter:@IndoCurryKo
https://www.instagram.com/indocurryko/

スパイスの魅力を伝える活動

――3月で大学院を修了されて社会人になられたわけですけれども、仕事の仕方や生活でこれまでと違いはありますか。

カリー子 大学に行っていたときよりも規則正しい生活ができるようになりましたね。大学院では10時から18時という、コアタイムがありましたが、実験の多い研究室だったので、実験の時間を決めていても検体の反応時間があるので、その通りにはならないんです。たとえば、19時に何々を、23時には何々をしなきゃいけないみたいなときがあるわけなんです。私は夜に起きているのが嫌いなわけではないですが、夜の活動というのがすごく苦手で、それが精神的なストレスになっていました。帰宅時間が遅かったりとか、土日も大学に行ったりとかいうことがなくなったおかげで、夜もけっこう早く寝られるようになり、朝も早くなって、本当にストレスがない生活をしています。

――1日のスケジュールはおおよそ決まっているのですか。

カリー子 はっきりと決まっているわけではないのですが、基本的に夜は仕事しないというのがまずルールですね。夕食後に仕事しているのは最悪だと思っています。そうなったのは、日中の時間の使い方が下手だったか、朝起きるのが少し遅かったか、それはすごく反省すべきことだと思っています。基本的に18時以降は仕事しないというのがルールですね。これを決めることで、夕方18時にちょうど仕事が終わるように逆算して、起床時間や仕事、食事をスケジューリングしています。そのために朝6時から仕事を始めることもあります。仕事にゆとりがある日なら、18時前までに仕事は確実に終わるから、今日は7時半まで寝よう。じゃあ、7時半まで寝られるから、前日の夜はランニング入れちゃってもいいなみたいな感じですね。なので、起床時間とか、労働時間は、日によって違います。18時以降に仕事しない、夕食後に仕事をしないというルールだけを守っている感じです。

――いま、仕事ではどんなことをやっていますか。

カリー子 仕事内容はですね、一言ではいい切れなくて……。まず本の執筆があります。年間4、5冊出しているので、1年中原稿を書いて、写真撮影をして、校正をしてというのを繰り返している感じですね。私の本は、だいたい1年スパンで制作されていて、本の構成、レシピ作成、写真撮影、校正作業を1年間かけて行うので、4~5冊の編集作業が少しずつずれながら、ずっとかぶっているんですね。あとだいたい週3~4件ぐらいはインタビュー取材が入るので、それをこなしているのと、テレビとかラジオの出演は週に1回ぐらいですね。

さらに、スパイスショップの管理業務。これはもう毎日の仕事なので。食品を扱っているので、在庫調整などの管理はきちんとしなければいけない。少しずつですが商品を置いてくださるお店が全国に広がってきたりとか、取引先も大きな企業になってきているので、ただ商品を作っているだけではなく、たとえば保健所と話し合って、安全性とか、賞味期限を決めるとか、あとは3カ月ごとの新製品の製品企画書を起こしたりとか。そういった消費者には見えない部分のところの地盤固めを今年はけっこうやっていますね。ほとんど毎朝6時から働き始めないと、18時に仕事を終わらせることができない感じです。

印度カリー子さんのスパイスショップ。スパイスセットの販売のほか、レシピやブログ、イベント情報なども掲載される。

――カリー子さんのスパイスショップのホームページに「スパイスカレー初心者のためのお店を経営する24歳女」って書いてあって、ちょっとびっくりしたんですけど。

カリー子 その一文が現在の私のすべてを詰め込んだエッセンスなんです。24歳の女か男かというのはすごく重要な要素です。というのは、私が19歳でスパイスショップ(https://indocurryko.net/)を作り、スパイスセットの販売を始めたとき、“カレー愛好家”というのは、ほとんどが男性でした。女性でカレーについてSNSで情報発信している人はもう本当に数えるぐらいしかいなくて、全国でカレー好きな女子といったら3人くらい、数えるほどしかいませんでした。女性でレシピを書いている人なんて本当に数人で、カレーのレシピは男の人が作った、ある意味マニアックなレシピだけ。そういうカレーを作りたいと思う人もいるかもしれませんが、そうでもない人もけっこう多かったと思います。

たとえば、毎日家族のために料理をしている人たちはマニアックなカレーを作りたいわけではありません。毎日家事として料理をしている人の一番の目標は、家族が喜ぶおいしいものを作りたい、健康的でおいしいものを作りたいわけであって、自分の知的好奇心を満たす調合比を見つけたい人はあまりいない。私は全国のお母さんたち、お父さんたちに喜んでほしいと思っていて、私のレシピはそのためのレシピです。なので、レシピの考案者が女性であることはそのような方々にとってプラスだろうと考えています。

――大学院在学中に、香林館株式会社を設立されましたが、どんな思いがあったのでしょうか。

カリー子 本当は大学院修了後に設立するつもりだったんです。でも、在学中に、私のスパイスセットを製造してくださっている「はらから福祉会」がある宮城県柴田町が、ふるさと納税の返礼品として、私の商品を選んでくださったんです。つまり、行政と取引することになりました。行政が個人事業主に仕事を任せることはあまりないので、法人化したほうがいいのではないかという理由がひとつ。

それから、個人事業主と会社でなにが決定的に違うかというと、社会的責任ということだと思います。会社を設立することによって社会的責任が大きくなると同時に、社会的信頼度もすごく上がります。私は学生には信頼度がないと思っていて、自分のこれまでの活動を見てくれて信頼してくださったのだろうとは思いましたが、相手にもうしわけないと思って、覚悟を決めて、この仕事を最後までやり抜こうと、破産して消えるまで身を粉にして働こうと思ったんですね。そこで、大学院にいるうちに法人化しようということになりました。

法人化してみると、これまではちょっと心配だから学生の個人事業主とは取引できないといっていた企業とも取引が進むようになって、仕事の数もすごく増えてきたので、大学院修了時点で、このペースであと1年続ければ、確実に大きくなるなという見込みはありました。

大学院在学中の2019年10月に、香林館株式会社を宮城県柴田町に設立した印度カリー子さん。

Twitterとの関わり方

――カリー子さんの活動の中ではTwitterの存在は非常に大きいように思いますが、使い始めたきっかけや、現在の使用方法について教えていただけますか。

カリー子 私は、同居していた姉に、彼女が好きなスパイスカレーを作ってあげたいと思って、作ってみたのがきっかけで、スパイスカレーの魅力にはまり、その魅力をみんなにも広めたいという思いで、情報発信を始めました。それが「印度カリー子(@IndoCurryKo)」という名前をTwitterで使い始めたきっかけですね。それ以前にも本名でやっているアカウントはありましたが、@IndoCurryKoは本当にカレーを広めるためだけのもので、全国いろんなところにいるスパイスに興味を持っている人たちを漏らさないように作った“連絡網”みたいな感じです。最初のきっかけもそうですし、いまもずっとそうです。そこは、ずっと変わっていないですね。

昔は、いまもそうなんですけど、すべてのコメントに返信していたんです。たぶん返信していないコメントはないんです。いまはコメントできないようにしているのでそもそも返信もないのですが……。これはカレーを広めるという活動をしていくにあたって多くの人と関わりを持つことがすごく重要だと思ったからです。ところがですね、フォロワーが増えるに連れて、勘違いしている人がすごく多くなってきました。あまりにも普通の人間としての関わり方の常識を超えた人がすごく増えてきたので、コメントをやめました。私はすべてのアクションに対して返信をしたいという気持ちが強すぎるので、ちょっと変わったアクションに対しても返信していたんです。それを続けていたら精神的にストレスになってしまって、本当にもう何も発信したくないぐらいの気持ちになってしまったんですね。そうすると当初のカレーを広めるという目的が達成できなくなってしまうわけです。そこで一転して“コメントなし”にしました。いまはTwitterの投稿を1日1回はするようにしています。

――Twitterのフォロワーさんがカリー子さんに共感して、スパイスセットや著書を購入してくれたという側面もありますよね。そういうコミュニティの中で、皆さんが共感して応援してくれたというのがスタートとしてすごくよかったのではないでしょうか。

カリー子 そうです、まさしくそうです。なので、@IndoCurryKoのアカウントは、もはや自分だけのものではないと思っていて、初期の1万人のフォロワーさんがものすごく、ものすごく応援してくれました。もうこれは本当に感謝してもしきれないぐらいで。私はけっこうフォロワーさんの名前を覚えています。フォロワーさんは7万人くらいいますが、毎日のように私のレシピでカレーを作ってくれる人とか、本のレシピを全部作ってみましたとか、そういう人もいて、本当に励みになります。引用ツイートだと意見を見ることはできても、そこにコメントを返す必要がないんですが、すべて読み、時折返信もしているくらい参考にしています。そうやって引用ツイートしてくれている人とかは、ほぼ全員名前を覚えています。そういう人たちがものすごく応援してくれたおかげでいまがあると思います。

なので、もう感謝しかないですね。だから、いつかそういった内々のコミュニティができたら楽しいんだろうなとか思いつつ、それを考える余裕がちょっといまはなくて、貧乏暇なしといった感じでしょうか。

カリー子さんは、「Twitterのフォロワーさんには感謝しかない」と語る。

カリー子が考える“美しいレシピ本”とは

――いま出版不況といわれていて、本があまり売れない時代ですが、そんな中、大学3年生から大学院の間に10冊の本を出されていて、しかもどれも評判もいいですね。この短期間にこれだけの本を作るということも大変なことだと思いますが、どうしてこういうことが可能なんでしょうか。

カリー子 これまでに10冊出版しましたけど、10冊とも増刷していて、トータル1万部以下の出版社はないですね、いまのところ。私は、レシピ本を読むのがものすごく好きなんですよね。暇さえあれば読んでいます。それで思うんですが、ネットにあるような単発のレシピよりも本になっているレシピのほうが価値が高いと思っています。いま、ネットの世界では、無料のレシピがありふれていて、「レシピは無料」と考えている人が多いかもしれませんが、ネットのレシピと、本のレシピでは価値が全然違います。無料のレシピというのは責任感がないし、再現性も乏しい。一方、レシピ本というのは試作をして、撮影のときにも作るし、編集者とかも作るわけですね。だから、何度も再現した上で調整して出版されているので、ある程度の保証ラインが担保されています。なので、本のレシピというのは非常に有益性が高いんですね。

それから、本というのは1つのレシピではなくて、レシピの順番がありますし、その前後関係もあります。順番は著者のおすすめ順だったりとか、おいしい順だったりするのですが、そこにストーリーがあるんです。それがレシピ本のいいところです。

いいレシピ本の基準は、①わかりやすいかどうかということと、②一貫性があるかということと、③再現性が高いかどうかにあると思います。この3つをクリアしているレシピ本は、10冊に1冊あるかないか。いいレシピ本を、私は「美しい本」というんですけど、「美しい本」はすごく数が少ないです。

あと、私にとってはレイアウトの美しさも重要です。メニューの順番とか、分量の数字が尻揃えになっているとか、これはもう美しさの観点ですよね。そういった微妙な体裁を整えるだけで、レシピ本ってすごく美しくなるんですよね。

私のレシピ本は、こういう基準をクリアして、パッと見て頭に入るようなレイアウトを心がけています。それが読者のみなさんに受け入れられたのではと思っています。

――カリー子さんの初期の本で『ひとりぶんのスパイスカレー』(山と渓谷社/2019年)(https://www.amazon.co.jp/dp/4635450341/)というのがありますが、「ひとりぶん」にしたところが画期的ですよね。これはカリー子さんのアイデアなんですか。

カリー子 そうですね。大学3年生のときにこれを書いたのですが、ちょうどインド料理屋さんのレシピを見直し、メニューを一新するという仕事をしていました。そのときにインド料理屋さんのキッチンに入って、どうやって料理しているのか見せてもらいました。インド料理屋さんは20とかあるメニューを、ものすごい早さで一人分ずつ提供しているわけですよね。どうやっているんだろうと思って見ていたら、作り置きの“カレーのもと”みたいなものがあって、それとチキン、それとエビ、みたいな感じで合わせていたんですよね。これが私の本に出てくる「グレイビー」の発想です。グレイビーというのは本当は、完成したものの液体部分のことを指す言葉なんです。私はその合わされる前のものをグレイビーと呼んでわかりやすくしています。ニアリーイコールなんですけどね。

私のレシピでは、この方法を採用したのですが、これを考えるまでに100とか200とかものすごい数のカレーを試作して、ある種の“法則化”をしたんです。この法則を生み出すのはそんなに簡単なことではないんです。だから、グレイビーのアイデアを考え、本にするために、ものすごい下調べをして、同じレシピを書いている人がいないかを調べました。それは自分が真似されたらすごくいやな気持ちになると思ったから、人の真似はしたくないんですよね。私がこの本でグレイビーを使う方法を書いたときは本当に誰もやっていなかったんです。でも、その苦労して編み出したレシピがネットのレシピサイトや動画サイトにあっという間に掲載されてしまいました。

でも、真似した人に、どうして真似するのとはいいたくありません。真似してもらうことは、カレーが普及していくために絶対に必要なことだから。真似してもらわないとスパイスカレーは永遠に日本に広まらないとも思っているので、むしろ真似してもらいたいんですよね。さきほど、真似されたらいやな気持ちになるといいましたけど、真似されていやな気持ちになるのは、おそらく私が成長していないからそうなるんだと思うんです。それはすごく恥ずべき状態だと思っていて、それは自分が過去の産物に執着していること。だから、どんどん真似してくださいって思えるように、自分も成長をし続けなければいけない。

――最新刊の『ひとりぶんのレンチンスパイスカレー』(山と渓谷社/2021年)(https://www.amazon.co.jp/dp/463545049X/)は、さらに画期的な本ですね。

カリー子 これは自分でも画期的だと思います。この本では、電子レンジだけを使って、スパイスカレーを作ることに挑戦していて、同じ出版社で出した『ひとりぶんのスパイスカレー』よりも、さらに時短で手間も減らしたレシピ集になっています。ポイントは、タマネギを炒める代わりにフライドオニオンを使うことなんですが、これも結局、Twitterのフォロワーの人たちの意見が反映されているわけです。タマネギ炒めるのが面倒くさいという意見が自分の想像を超えるほど大きかった……熱い、苦しい、つらい、苦痛とか、そういう意見をたくさん見て、じゃあ、これを解決するようなことを提案しなければいけないという気持ちになったんです。まず、これがモチベーションになっています。

それから、半年ぐらい前にTwitterで、フライドオニオンを買ったことがあるかというアンケートを取って、そこでこの本の方向性が決まりました。フライドオニオンを買ったことがあるという人が55%ぐらいだったんです。これは私の想像よりも多い割合でした。30%ぐらいあればいいかなと思っていたんですけど、55%だったんです、ということは2人に1人が買っているということですよね。これはターメリックを買ったことがあるかどうかよりも確実に多い。ということは、フライドオニオンを使うレシピでもあまり問題はないんじゃないかと。コリアンダーよりは確実に認知度があるし、コリアンダーよりは確実にスーパーで見たことがあるし、というものだと思ったわけです。

ターメリック、クミン、コリンアンダーを買うという前提の本なので、フライドオニオンが入っていても、「なんでフライドオニオンが入っているんですか」って怒りだす人はいないなと思って、この本を書いたんですね。普通のレシピ本でフライドオニオン出てきたら、まあ爆怒りもんですよ、私も。「こんな普通のレシピ本に見せかけて、なんでフライドオニオンが必要とか書いてんのよ」みたいに思うはずですが、ターメリック、クミン、コリンアンダーのおかげで、それが実現した本でもあります。

――爆売れしているとTwitterに書かれていました。

カリー子 爆売れしていますね。先の『ひとりぶんの~』も、出版した年に、その出版社のすべての書籍の中で一番売れた本だったんですが、『ひとりぶんのレンチン~』は、それの10倍を超える勢いです。カレーには、面倒くさそう、難しそう、時間がかかる、タマネギを炒めるのが大変、熱いとか、いろんな思いがあるわけです。それをすべて解決した本ともいえます。これはもう本当に誰でもできる、絶対に失敗しないカレーのレシピ本だと思っています。

カリー子さんのアイデアが詰まった『ひとりぶんのスパイスカレー』(右)と最新刊の『ひとりぶんのレンチンスパイスカレー』(左)。

新しいスパイス文化を創りたい

――最後にこれからやってみたいことを教えてください。

カリー子 やはり、みんながびっくりするような本を書くということです。新しい切り口や作りやすい方法、そしてスパイスやカレーに関する新しい文化を提案したいと思います。スパイスというのは文化でもあるので、創造的なことをしなければいけない。創造的なことをするのは、ある日突然天から降ってくるわけでもなく、ある日突然変化が起こることでもないので、確実に知識と経験を積み重ねて、その中からニュルッと生み出てくるものですね。これはもう確信を持っていえます。5年間、いろんな新商品を開発し、いろんな本を書き、いろんな仕事をしてきましたが、天から降ってくるアイデアというのはありません。いつも自分の知識の源泉からしか生まれてこないと思っています。なので、そういった創造的な活動をするために、とにかく学ぶことを続けていきたい。

あとは「スパイスカレーはブームだ」という人がいるんですけど、私はそうでもないと思っています。スパイスカレーを作ったことのある人はあまりいないと思うんです。ターメリック、クミン、コリンアンダーを持っているという人は、20人に1人いるかいないか。それをブームと呼ぶのは、井の中の蛙だと思っています。3人に1人はターメリック、クミン、コリンアンダーを持っているという世界を作るために、この活動をとにかくやり続ける。その中に私の活動に共感してくれる人や協力してくれる人がいると思うので、その人たちと手を取り合ってスパイスの文化を創っていきたい。だから、私のレシピが真似されていやだとかいってちゃいけないんです。いっていたら、時代も文化も創れない。真似している人たちを後押しするような、みんなが真似したくなるような、みんなが自分のものだよといいたくなるようなアイデアを出し続けることが、文化を創るうえで非常に重要なことだと思っています。

「創造的な活動をするために、とにかく学ぶことを続けていきたい」というカリー子さん。

撮影協力:The BACKYARD CAFE(東京都狛江市)
https://www.instagram.com/the_backyard_cafe_komae/

筆者プロフィール:豊岡昭彦

フリーランスのエディター&ライター。大学卒業後、文具メーカーで商品開発を担当。その後、出版社勤務を経て、フリーランスに。ITやデジタル関係の記事のほか、ビジネス系の雑誌などで企業取材、インタビュー取材などを行っている。