制限をかけない自由な端末運用が
生徒たちの“四つのC”を育てる
CASE:北鎌倉女子学園
古都鎌倉の地で女子教育を進める北鎌倉女子学園。中高一貫の 女子校である同校では、「健康 で科学的な思考力を持った心豊 かな女性の育成」を建学の精神 に掲げ「笑顔の溢れる学園」と して、のびやかな自立した女性 の育成に取り組んでいる。その 北鎌倉女子学園でのICT教育の 取り組みを取材した。
ICT環境整備と合わせた校舎の改革
北鎌倉女子学園で2018年からスタートしたのが、生徒1人1台のiPadを活用した学びだ。同校のICT教育の環境整備に取り組んできた教諭 三室哲哉氏は、ICT環境整備に取り組み始めた当時を「まずは2015年ごろから、教員が先行してタブレットを所持してICT活用をスタートしました。当初はAndroidタブレットを使用していましたが、使用している内にiPadに切り替えました。また同時に校務用の端末としてChromebookも導入し、iPadと併用して利用していました」と振り返る。ChromebookとiPadの併用は昨年まで行っていたが、2021年度からは校務用端末をMacBookに変更し、MacBookとiPadを併用している。従来使われていたChromebookは非常勤講師用の共用端末として運用を継続中だ。
生徒1人1台の端末環境は、前述した通り2018年から運用をスタート。同時期に校舎のリニューアルも平行して進め、“学びとは何か”を考えた校内の整備を行った。1人1台のiPad環境でスムーズな通信を実現するため敷地内にWi-Fi環境を整備したほか、各教室に電子黒板付きのプロジェクターを配備。iPadからワイヤレスでコンテンツが投映できるようApple TVも全教室に整備した。
「重視したのは、コミュニケーション、コラボレーション、クリエイティビティ、クリティカルシンキングの頭文字を取った“四つのC”を育てられる環境です。ICT環境以外にも、職員室の壁をなくし、生徒が教員にどこからでも気軽に声を掛けられる環境にしたり、教室内は講義よりもグループ活動がしやすいように、机と椅子をキャスターが付いたものに変更したりしました。iPadを活用した新しい学びに合わせて、より良い効果が得られるように環境整備を進めました」と三室氏は振り返る。
職員室から書類の山が消えた
生徒へのiPad配備は、2018年から中学校1年生、高等学校の1年生を皮切りに整備し、段階的に全学年へと活用を広げていった。端末はLTEモデルのiPadを採用して学校で一括購入し、生徒に貸与している。現在では中学校高等学校の全ての学年で、1人1台の端末環境が整備された環境で授業を進めている。
学校からの貸与端末ながら、北鎌倉女子学園の端末運用は生徒主体の自由な管理方針を打ち出している。MDMによる端末管理は行っているものの、「制限がかかった端末は誰も使いたがらない」という考えから、アプリケーションのインストールやWi-Fiの接続など、生徒が自身の判断で行える。
「学習者用の端末としてiPadを選択した背景には、その使いやすさがあります。直感的に使えるその操作性に加えて、手書きによる書き込みができる点も利便性の高さにつながっています。デジタルとアナログの双方の良さを残しているため、生徒用の学習用の端末に適しているのです」と三室氏。
そんな三室氏に、授業内での端末活用状況を聞くと「全ての授業で活用していますね。授業ではノートと筆記用具のようにiPadを机上に出し、文房具のように活用しています」と答えてくれた。課題の提出や回収を端末上で行うことはもちろん、学校全体で行っている朝の5分間テストもiPad上で実施し、生徒たちは配信されたテストにApple Pencilで手書きして回答を提出している。Apple Pencilは教材費として、保護者負担で購入して各生徒が所有するスタイルで運用している。
「端末の運用ルールは細かく定めていませんが、各教科の担当者はそれぞれ『Google Classroom』でクラスを作成し、そこで生徒たちに伝達や課題の提出、回収が行えるようにするのが唯一の決まりです。保護者への連絡はGmailを利用しており、プリントなど紙での配付は一切ないペーパーレス化を実現しています」と三室氏。職員室の教員の机にも、以前あった書類の山は一切なくなったという。
2019年には、同校の学習や指導、学習環境の継続的なイノベーションに対する取り組みが認められ、2019~2022年の3年間におけるApple Distinguished School認定校に選ばれた北鎌倉女子学園。今後もテクノロジーを駆使し、子供たちにとって最良な学びの提供に力を入れていく。