インテルの最新プロセッサー
「インテル Core Ultra プロセッサー」を搭載したAI PCは、高度なAI処理と低消費電力を両立させる
生成AIの活用がビジネストレンドとして注目を集めている現在、業務に利用するPCも大きな変革期を迎えている。昨今では、AIの利用拡大を見据えて、PC側でAI処理を行うための要件を備えた「AI PC」が登場。コロナ禍をフックに浸透した“ハイブリッドワーク”の主力デバイスであるモバイルノートPCでも、AIの恩恵を受けられる環境が整いつつある。本稿では、AI PCの導入メリットについて、インテル株式会社の佐近 清志氏と株式会社日本HPの岡 宣明 氏に話を伺った。
AI時代の幕開けを告げるインテルの最新プロセッサー
「インテル Core Ultra プロセッサー」の実力とは
インテルでは、AI PC向けの最新プロセッサーである「インテル Core Ultra プロセッサー」を市場に投入し、AI時代におけるPC市場をリードしている。インテル セールス&マーケティンググループ ビジネスクライアント・テクニカル・セールス・スペシャリストの佐近 清志氏は、インテル Core Ultra プロセッサーを、向上したパフォーマンスと電力効率、AI処理向けに開発された新しいNPUプロセッサーを搭載したAI PC時代の到来をもたらす製品と位置付ける。
「モバイルPC向けのプロセッサーとして2023年12月に発表したインテル Core Ultra プロセッサーでは、従来のプロセッサーからアーキテクチャーを大幅に変更しています。従来の高性能コア(Pコア)、高効率コア(Eコア)が搭載されたコンピューティング・タイルやGPUタイルに加えて、AI処理に特化したNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)と低消費電力コア(LP Eコア)を載せたSoCタイルを実装。これにより、パフォーマンスと低消費電力を両立しています」(佐近氏)
インテル Core Ultra プロセッサーは、インテルとして40年振りとなるアーキテクチャーの転換点と佐近氏は語り、「アイドリング時にはまずSoCタイルのLP Eコアが動作し、何かしらの処理が始まると、その内容に応じてCPUタイル上のEコア、Pコアが稼働し、GPUやNPUが必要に応じて稼働するという、省電力化にフォーカスしたアーキテクチャーを採用しています」と話を展開。
高度なAI処理を低消費電力で行えるNPUが、
モバイルノートPCのAI活用を後押しする
生成AIへの注目が高まる現在、AI処理を採用するアプリケーションは増加の一途を辿っている。佐近氏は「昨今では、画像の生成やテキストの要約、マイクロソフトが提供するCopilotなど、さまざまな領域でAI処理が行われています。法人向けアプリケーションの約7割が、何かしらの形でAI処理を組み込んでいると言われており、その数は現在も増加し続けています」と語り、NPUを搭載したAI PCが、こうしたアプリケーションをモバイルノートPCで活用するための鍵になると現状を分析する。
「アプリケーションのNPU対応を促進する一番の目的は、やはりAI処理の高速化と省電力化に寄与することです。AIの処理は非常に重く、これが世の中のアプリケーション全般で使われるようになると、モバイルノートPCのバッテリ駆動時間に影響が出てきます。CPUとGPUとNPUそれぞれに得意なAI処理がありますので、3つのプロセッサーをうまく活用することで高速で且つ低電力にAIの処理を行うことができます。現状、AIを業務で活用されていない企業様でも、インテル Core Ultra プロセッサーは最新の3Dハイブリッドアーキテクチャーを搭載し電力効率を大幅に向上させたことで、前世代と比べてビデオ再生時間の比較検証では30%バッテリ駆動時間の向上、グラフィックス性能も2倍近く向上しているため、Office業務用アプリケーションをより快適にご利用いただけます」(佐近氏)
今後、あらゆるシーンでAIの重要性が増していくことは間違いないと佐近氏。特にセキュリティの領域での活用が進むと予測する。
「セキュリティの領域でもAI活用が進んでおり、主要なセキュリティベンダーが、インテル Core Ultra プロセッサーのNPUに対応した製品を提供し始めています。PC監視やスキャンといったバックグラウンドで継続的に行う処理をNPUに肩代わりさせることで、PCに負荷をかけずに安全性を担保できるようになります」(佐近氏)
インテル Core Ultra プロセッサーのポテンシャルを
最大限に引き出す、日本HPの法人向けノートPC最新モデル
インテル Core Ultra プロセッサーを採用したPCは、すでにさまざまなPCベンダーから発売されている。日本HPも13.3インチの軽量モバイルノートPCから16インチの大画面ノートPCまで幅広いラインナップを揃えた法人向けモデル「HP EliteBook 800 G11」シリーズの新製品や、14インチのフラッグシップモデル「HP EliteBook 1040 G11」などを展開し、企業の多様なニーズに応えている。
日本HP パーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部 CMIT製品部長の岡 宣明氏は、PCメーカーの立場から見た、AI PCの魅力について次のように語る。
「これまでPCは“パーソナルコンピューター”の略でしたが、AI PCが登場したことで、“パーソナルコンパニオン”に変わると考えています。生産性が低いと言われて久しい日本企業において、AIを活用した生産性向上の取り組みはまさに急務であり、対応が遅れてしまうと国内はもちろん、グローバルでの競争力も維持できなくなります。その意味でもAI PCの普及はハイスピードで進んでいくと予測しています」(岡氏)
日本HPのAIテクノロジー内蔵PCには、先進的な技術が惜しみなく投入されている。AIを使用してPCの使用状況を予測し、ワークフローに合わせてパフォーマンスを自動で最適化する「HP Smart Sense」を実装するほか、Poly Studioによってチューニングされたスピーカー、マイク機能は、AIノイズキャンセリングなどでワンランク上のWeb会議体験を提供。さらにのぞき見を防止する「HP Sure View」に関しても、インテル Core Ultra プロセッサーの機能を用いてより画質の向上と省電力化を実現しているという。
「NPUは低消費電力でAI処理が行えるハードウェアですが、日本HPとしては、単にNPUを搭載するだけではAI PCとして十分ではないと考えています。AI処理は高度化を続けており、それをきちんとコントロールしてリソースを最適化することで、消費電力と発熱を抑えながらAIを活用できるようになります。それを実現した製品が、HP Smart Senseを搭載したHP EliteBook 800 G11シリーズ、並びにHP EliteBook 1040 G11となります。ノイズキャンセルやプライバシースクリーンにもAIが活用されており、省電力化にフォーカスしたインテル Core Ultra プロセッサーのメリットを最大限に活かしたAI PCに仕上がっています。もちろん、AI PCの象徴といえる「Copilot」キーも搭載しており、いつでも簡単にAIコンパニオンを呼び出すことができます」(岡氏)
将来的なAI活用の拡大を考慮すれば、
次期業務PCの候補はAI PC一択といえる
AI PCの普及に向けて、インテルと日本HPでは、ダイワボウ情報システム(DIS)とその販売パートナーに大きな期待を寄せている。佐近氏と岡氏はAI PCの導入を検討する企業を支援する販売パートナーに向けて次のようなメッセージを送る。
「AI PC向けの第一世代プロセッサーとなるインテル Core Ultra プロセッサーは、NPUを搭載しただけでなく、全体的な性能の底上げが図られています。今後、さまざまな業務アプリケーションにAIが組み込まれていくことを考慮すると、AI PCの導入は将来的なリスクヘッジとなりますし、従業員の皆さんに快適な業務環境を提供するという意味でも導入を検討する価値は高いと考えています」(佐近氏)
「AIを社内で使う予定がないという企業も多いかと思いますが、2年後3年後には、今使っているアプリケーションのほとんどにAIが入ってくることは間違いありません。単に今だけを見るのではなく、こうした時代の変化を読み取りながら、次の業務PCを選んでいただくことが、企業の競争力を保つうえで重要になってくると思っています」(岡氏)