Azure Open AIによるAIアプリの開発と活用を社内で実践
新たなビジネスの創出に向けて知見とノウハウを習得

Azure Open AIを活用した
「社内規程チャットボット」

ビジネスの成長をけん引するテクノロジーとして、生成AIが注目を集めている。すでに生成AIを活用した事例は見られるものの、普及し始めたばかりのテクノロジーであるため、効果的な活用の仕方や実装ノウハウなどに疑問や課題が多くある。そこでアルファテック・ソリューションズでは生成AIの知見とノウハウをいち早く身に付けるために「Azure Open AI」を活用したアプリケーションの開発と活用を社内で実践している。

AI活用のアイデアを社内で募集
技術職に限らず全職種の社員が参画

アルファテック・ソリューションズ
執行役員
エンタープライズ事業部
事業部長
品田 剛

 ChatGPTやマイクロソフトのCopilotなど、AIへの関心は高まるばかりで、あらゆる企業でAIをいかに活用するかが課題となっている。そこでアルファテック・ソリューションズ(以下、ATS)はAIに関する知見と、アプリケーション開発および活用のノウハウの習得、そしてビジネスモデルの確立に向けて、マイクロソフトのAzure Open AIを活用したAI活用プロジェクトを立ち上げた。

 プロジェクトは「活用に向けたアイデア出し」と「実現性の判断・技術実装」、そして「全社展開・利活用」の三つのステップで進められた。活用に向けたアイデア出しでは技術職に限らず営業や事務を含め、職種を問わず全社から有志を募った。

 そして約30名がプロジェクトに参画し、勉強会などを通じてAIで実現できることを把握した上で社内のどの業務に、どのようにAIが活用できるのかを考えて合計82個にも及ぶアイデアを出した。

アルファテック・ソリューションズ
ビジネスソリューション事業部
デジタルソリューション部
開発グループ
藤原秀之

 集まったアイデアを「コミュニケーション支援」や「情報収集支援」「資料作成支援」などの七つの大カテゴリーに分類し、さらにそれぞれを「FAQ・チャットボット」や「手続き自動化」「文字起こし・要約」「提案書作成」などの中カテゴリーに分類して評価し、その中から選出したアイデアをブラッシュアップして5件のアイデアに絞った。

 アイデアの選定についてATSの執行役員 兼 エンタープライズ事業部 事業部長の品田 剛氏は「このプロジェクトは全社員がAIリテラシーを習得し、AIビジネスに関するスキルを養うことも目的の一つです。特定の事業部に偏ったアイデアだと使わない人が出る可能性があるため、全社で利用できるアイデアを募りました」と説明する。

稟議や申請に伴う社内規程の確認
手間のかかる規定の検索をAIが代行

 プロジェクトでは全社で使っている業務やシステムに対して分かりづらい、使いづらい部分などの問題点が指摘され、それをAIでどのように改善できるのかという意見が活発に交わされた。これは全社で利活用することが前提だったため、全社共通の課題や問題点というテーマに向き合った成果でもある。

 また、全く新しい取り組みではなく、日常的な業務での課題解決にAIを活用することから始めると、AI活用のハードルがぐっと下がるという知見も得られた。

 こうした観点から前述の通り五つのアイデアが実装・利活用の候補として選出された。そして最初に実装・利活用に取り組んだのが「社内規程チャットボット」だ。

 ATSではビジネスにおける物販やサービス販売といった顧客との取引をはじめ、社員の経費の精算や出張などの手当の申請などの稟議に伴い、社内規程の確認が必要になるケースが多い。

 社内規程を示した文書は社内のSharePointに格納されているのだが、複数のファイルがあり、どこにどの規定が示されているのかが分からず、目的の規定を探すのに時間がかかる。稟議や申請を提出するたびに社内規程のファイルを探す必要があり、多くの時間を費やしてきた。同時に管理部への問い合わせも多く、対応に多くの時間を割いてきた。

 そこでSharePointに保管されているデータはそのままにしておき、AIが必要な情報を探して収集し、回答をまとめてくれたら稟議や申請に伴う作業が大幅に効率化される。こうした観点が社内規程チャットボットの実装を決めた背景だ。

ユーザーのトレーニングにも商機
対話から回答を得る使い方を指導

 社内規程チャットボットは現在もブラッシュアップを続けている最中で、間もなく全社員に向けた本格的なサービス提供が始まる。

 品田氏は「既存の法令集や規程書にはテキストだけではなく図や表も使われています。開発時点ではAzure Open AIに読み込ませるには図や表をテキストで説明するなど、Azure Open AIが理解できるようにデータの最適化が必要です。プロジェクトを通じてAIが学習しやすいデータに最適化するノウハウが得られました」と評価する。

 さらにプロジェクトに携わったビジネスソリューション事業部 デジタルソリューション部 開発グループ 藤原秀之氏も「社内規程チャットボットを使う際に、サーチエンジンのように単語で質問(プロンプト)を入力しても正解は得られません。AIの活用には人と会話するような自然言語での対話が必要となるため、プロンプトの書き方についてユーザーへのトレーニングを実施しています。この取り組みも将来のビジネスにつなげられるものと期待しています」とアピールする。

 現在はAIをユーザーが直接活用するケースが目立っているが「近い将来はさまざまな製品にAIが搭載され、製品を通じてAIを活用するケースが増えていくのではないか」と品田氏は見通しを語る。その際、製品に搭載されるAIの精度に不満がある場合、生成された回答を別のAIで処理して精度を高めるようなアドオンサービスのビジネスの可能性が考えられる。こうしたAIビジネスの可能性に備えて、ATSは今後もAIの知見とノウハウを積極的に習得して価値を高めていく。