ChatGPTはプロンプト次第

適当に「〇〇の企画を考えて」といったワンフレーズのプロンプトを生成AIに投げ、ありきたりの提案しか得られず、「生成AIは使えない!」と諦めてしまう人が多いのではないか。現在の生成AIは質問を理解し、考え抜いて答えてくれるわけではない。生成AIは、質問の文章から続く文章として「確率が高い文章を出力する」というマシンだ。「わかりません」とは言えないのでむりやり文章をつなぎ合わせ、「嘘」(幻覚:ハルシネーション)をつくこともある。

生成AIは「彼は新入社員なのに来春のキャンペーン企画を出せと無茶ぶりされて困っている。ここは先輩として過去に成功事例があるパターンで、予算もあまりかからず、現実的な企画をいくつかアドバイスしてあげよう」などと察してはくれないのだ。

5項目からなる深津式プロンプト

知識は豊富だが「気が利かない」ChatGPTから有意義な回答を得るには、どのようなプロンプトを投げかければいいのか。著者の深津氏は「深津式プロンプト」を提唱している。

本書によれば「深津式プロンプト」の基本とは

・ロールを与える
・コンテキスト(文脈)を与える
・制約条件を与える
・出力フォーマットを与える
・プロセスを与える

の5項目からなる。

「ロールを与える」というのは、回答する立場を明確に指示するということ。例えばWebマーケティングの企画を考えさせるのに、単に「Webマーケティングの面白い企画を考えて」ではなく、「あなたは優秀なWebキャンペーンのマーケターです」などと役割を与えてやる。すると、ChatGPTは誰だか分からない「不特定多数ではなく、Webキャンペーンのマーケターとしてふるまう」のだ。

試しに本書に掲載されている下記のようなプロンプトを投げてみよう。

あなたは優秀なWebキャンペーンのマーケターです。
SNSでみんながシェアしたくなる「秋の読書キャンペーン」の企画を考えてください。

すると、ChatGPTの回答は下記のようになった。

「#私の秋の一冊」キャンペーン
キャンペーン概要
秋は「読書の秋」。SNSでお気に入りの本を紹介し合い、みんなで本を通じてつながるキャンペーンを企画します。読書好きだけでなく、普段あまり本を読まない人でも気軽に参加できる仕組みを設け、自然発生的に投稿が広がる仕掛けを用意します。

プロンプトが「あなたは著作権や商標権、その他法規制に厳格な法務担当者です」ならば

著作権や商標権に配慮しつつ、参加者が読んだ本の中から「心に残ったフレーズ」や「お気に入りの一文」をシェアするキャンペーンを企画。個人の体験や感想が主となるため、法的リスクを最小限に抑えつつ、SNSで自然に拡散される仕掛けを組み込みます。

プロンプトが「あなたは市立図書館の司書です」ならば

コンセプト: 「あなたの読書時間をシェアしよう」
市立図書館を拠点に、秋のひとときを楽しむ「読書時間」をSNSでシェアするキャンペーン。誰もが気軽に参加できるシンプルな投稿テーマを設定し、図書館の存在感を発信します

となった。

このようにロールを変えるだけで、まったく異なるコンセプトの企画が提案される。

「コンテキスト(文脈)を与える」というのは何を出して欲しいかを指示すること。上の例でいえば「SNSでみんながシェアしたくなる『秋の読書キャンペーン』の企画を考えてください」の部分だ。これなしではChatGPTも何を求められているのか分からない。さらに「『秋の読書キャンペーン』の企画」に加えて「SNSでみんながシェアしたくなる」と一言加えるだけで企画がぐっと具体的になってくる。

「制約条件を与える」は、読書キャンペーンの例で言うと下記のようになる。

###制約条件###
・誰もが気軽に参加できること
・ハッシュタグをつけて投稿すること
・投稿を読んだ人が、自分も言及したり投稿したりしたくなるものであること
・ペイド広告を用いないバズキャンペーンであること

ペイド広告、つまり有料の広告を出さずに口コミで広まるバズキャンペーンというのは気が付きにくいが重要な制約条件だろう。逆に「1日5万円、上限150万円までのペイド広告を打つ」という条件を付けることもできる。制約条件など出力に関する指示は、頭に「#」を付けることでChatGPTに区別を付けやすくさせることができる。

「出力フォーマットを与える」とは、例えば企画書ならば下記のようになる。

###出力フォーマット###
以下のフォーマットで出力してください
・企画名
・企画概要
・企画の強み、弱み
・企画を成功させるポイント

これは、企画書の構成を指示する命令だ。「ですます」調か「だ、である」調にするとか、「400文字以内」といったことも指示できる。さらには「HTMLタグを埋め込んで」とか「LaTeX(オープンソースの組版言語)フォーマットで」といった整形も可能だ。

「プロセスを与える」とは、本書の読書キャンペーン例だと下記のようになる。

###出力ステップ###
まずシェアされるSNS企画とはどのようなものか分析し、その後に企画を出力してください

こうした5つのステップを踏むことで、より有意義な回答が得られると著者は述べており、これはChatGPTを使うユーザーなら誰にとっても有効な手段だと思う。

有料版ChatGPTならここまでできる

2024年11月現在、ChatGPTには無料版と有料版があり、有料版は月額20ドルの「ChatGPT Plus」、複数ユーザー向けで1人あたり月額30ドル(年間契約では月額25ドル)の「ChatGPT Team」、大企業向けで要問い合せの「ChatGPT EnterPrise」という3つのプランがある。

無料版ChatGPTでもそれなりの出力を得られるが、ベースとなっているGPTのバージョンが古かったり、利用可能回数の制約があったりする。個人で本格的に使うのであれば「ChatGPT Plus」、企業で導入するのであれば「ChatGPT Team」か「ChatGPT EnterPrise」がお勧めだ。

ChatGPTは、GPTという大規模言語モデル(LLM)を対話形式(チャット)で利用できるようにしたもの。そのGPTにもいくつかの種類があり、無料版ではGPT-3.5が基本となっている。最新のGPT-4o(オムニ)も使えることは使えるが「10回まで」という利用回数制限があり、頻繁に使っているとすぐ利用制限にひっかかってしまい、GPT-3.5に戻されてしまう。

ChatGPT Plusは、GPT-4、GPT-4oを月に50回まで使うことができる。さらに画像生成AIであるDALL-Eの機能を利用できるので、イラスト、ロゴ、グラフなどを作成することも可能だ。「〇〇について30ページでプレゼン資料を作って」と指示すれば、文章とイラストの入ったスライドまでできてしまう。

本書には新入社員対象パーソナルコーチ、クレーム対応トラブルシューティング、Excelデータからのグラフ作成などすぐに活用できそうな事例がいくつも取り上げられている。学生から社会人まで、ChatGPTを仕事や日常生活で活用したい人にお勧めの一冊だ。

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次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をPC-Webzine.comがピックアップ!

『この一冊で全部わかる ChatGPT & Copilotの教科書』(中島大介 著/SBクリエイティブ)

より実践的に生成AIを利用するためには、基本的な仕組みをしっかりと理解することが必須です。現在最も注目されているChatGPTとCopilotの仕組みを深掘りし、これらのツールがどのようにしてあなたの業務や生活をサポートできるのかを学びます。理想的な回答を得るためのプロンプトのコツも丁寧に紹介しているので、すぐに実践可能な生成AIの活用法を学び、業務の効率化が実現できます。さらに、ChatGPTの有料版「GPT-4」を活用することで、さらに生産性を向上させる具体的な方法を紹介。最新技術を駆使して、あなたのビジネスを次のレベルへと引き上げます。(Amazon内容解説より)

『本当に役立つAIの作り方・使い方 ChatGPT×GPTsカスタマイズ大全』(武井一巳 著/翔泳社)

ChatGPTは、汎用型生成AIです。そのため、自分の仕事や要望に本当に役立つAIにしようと思えば、汎用型から専用のAIに育てる必要があります。それを実現するための機能として、ChatGPTにはGPTsというカスタマイズ機能が盛り込まれています。GPTsという、自分専用のAIにカスタマイズすれば、もっと自分の仕事や要望に添う回答、それもより精度の高い回答を引き出せるのです。本書では、これらのGPTsの作成方法を、例を挙げながら詳細に解説しました。カスタマイズされたGPTsは、必ずあなたの仕事や人生に役立つ有能な秘書となり、先生となり、友人となってくれるはずです。(Amazon内容解説より)

『図解即戦力 ChatGPTのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(中谷秀洋 著/技術評論社)

ChatGPTの登場によってAIが身近に感じられるようになりました。AIを使いこなすことによって生活が豊かになる、そんな未来がすぐそこまできています。本書では、「大規模言語モデル」の基本から「トランスフォーマー」や「APIを使ったAI開発」まで、ChatGPTを支える技術を図を交えながら詳しく解説しています。(Amazon内容解説より)

『これからのAI×Webライティング本格講座 超効率ChatGPT/Gemini/Copilot分担術』(瀧内賢 著/秀和システム)

本書は、ChatGPT・Gemini・Copilotを適材適所で使い分け・併用を行うことで、Webコンテンツの作成、運用を大幅に効率化し、かつ高品質化するためのノウハウを紹介します。各AIの特徴や得意分野、使い分けにあたっての考え方をはじめ、企画から記事作成、コーディングまでシーンごとの活用イメージやプロンプト例を豊富に交えながら解説します。また、メールマガジンやSNSなどの目的において、複数のAIを併用/使い分けて品質を上げていく、具体的なステップもお伝えします。(Amazon内容解説より)

『Copilotではじめる生成AI入門』(富士通ラーニングメディア 著/富士通ラーニングメディア)

Copilotは、Microsoft社が2023年12月から提供を開始した対話型の生成AIモデルです。Windowsに標準搭載されている最新のAIアシスタントということで、生成AIブームにも乗り、おおきな話題になっています。本書は、「Copilotで実際どんなことができるの?」「ちょっと気になるけど、まだ使っていない」といった初心者ユーザー向けに、Copilotの使い方を解説した書籍です。(Amazon内容解説より)