データ活用の高度化でDXを進展させる
データサイエンティスト不足も補う
データ分析ツール市場の魅力
コロナ禍を経験した中小企業においても、地方においてもデジタル化への取り組みがさまざまな分野や領域で広がっている。それに伴い蓄積されるデータ量の増加が以前にも増して加速している。蓄積された膨大なデータの中には現在のビジネスを成長させるためのヒントや、新たに創出可能なビジネスのヒントが潜在する。この貴重な情報資産を活用しなければDXの実現はあり得ない。しかし、人手で金塊を発掘するのは不可能だ。そこで注目されているのが、導入や利活用のハードルがぐっと低くなった最新のデータ分析ツールである。データサイエンティストの役割が重要になる一方で人材不足が深刻化しており、データドリブンな経営、事業展開を実践する最新のデータ分析ツールに注目が集まっている。
国内アナリティクス/AIプラットフォーム市場は
コロナ禍の影響を受けず堅調に成長を続けている
Market Analysis
国内のアナリティクス/AIプラットフォーム市場がコロナ禍を経ても順調に成長しており、今後もデータ活用が活発化することを受けて継続的に成長するという。その背景としてはビジネスの状況を可視化するデータ分析ツールに加えて、AIの推論モデルがあらゆるビジネスプロセスに取り入れられることでデータ活用の範囲が拡大し、高度化することが挙げられる。
マクロ環境の潮流の変化によって
新たな課題に直面した企業が成長をけん引
IT専門調査会社のIDC Japanが2022年7月14日に発表した「国内アナリティクス/AIプラットフォーム市場予測」によると、2021年の同市場の規模(売上額ベース)は前年比19.3%増の1,879億6,700万円とIDCでは推定している。
この調査を担当した同社のソフトウェア&セキュリティでリサーチマネージャーを務める飯坂暢子氏は「国内アナリティクス/AIプラットフォーム市場の2021年の市場規模は、2020年に端を発する新型コロナウイルス感染症の感染拡大のマイナス影響をほとんど受けていません。むしろマクロ環境の潮流の変化によって新たな課題に直面した企業がアナリティクスやAIに継続的に投資を行った結果、同市場は順調に成長したとみています」と解説する。
また、国内アナリティクス/AIプラットフォーム市場の2021〜2026年のCAGR(年平均成長率)は19.7%、2026年の市場規模は4,621億7,900万円に成長すると予測している。
IDC JapanがアナリティクスソフトウェアとAIプラットフォームを組み合わせて市場分析していることについて飯坂氏は「アナリティクスソフトウェアとAIプラットフォームの親和性が高く、組み合わせて使われるケースが増えています。将来的にはアナリティクスソフトウェアにAIの機能が組み込まれていく傾向が強くなるでしょう」と予測する。
AIプラットフォーム市場が活性化
BIソフトウェアの需要も拡大する
同市場は2022年以降、企業や組織によるデータ活用プロジェクトがさらに活発化して成長を続ける。特にビジネスの状況を可視化するアナリティクスソフトウェアに加えて、あらゆるビジネスプロセスにAIの推論モデルが取り入れられることでAIプラットフォームの市場が成長するという。
飯坂氏は「2022〜2026年の予測期間中、AIプラットフォーム市場が活性化し、2026年には国内アナリティクス/AIプラットフォーム市場における構成比率が48.2%になり影響と存在感が増します」と指摘する。
国内アナリティクス/AIプラットフォーム市場の中分類市場セグメントである国内AIプラットフォーム市場について、2021年の市場規模は前年比成長率43.3%で453億4,900万円となり2020年を上回る勢いで成長した。また2022年以降の同市場は、2021〜2026年のCAGRが37.5%、2026年の市場規模は2,228億1,000万円に成長すると予測している。
国内アナリティクス/AIプラットフォーム市場の中分類市場セグメントである国内アナリティクス/ビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェア市場について、2021年の市場規模は前年比13.3%増の1,426億1,800万円と推定している。
飯坂氏は「従来の視覚的な分析結果を示すBIソフトウェアの堅調な需要に加えて、仮説を提示しアクションにつなげる処方的な分析ニーズが高まっている」ことを成長の背景に挙げる。
こうしたニーズによって同中分類市場の58.8%を占めるエンドユーザークエリー/レポーティング/分析ツール市場が、前年比14.2%増と2020年を上回る勢いで成長している。また2022年以降の国内アナリティクス/BIソフトウェア市場は、2021年〜2026年のCAGRが10.9%、2026年の市場規模は2,393億6,900万円に成長すると予測している。
ツールはクラウド化と自動化
ただしユーザーの活用支援は必須
国内アナリティクス/AIプラットフォーム市場の今後の成長について、飯坂氏は二つの傾向を指摘する。それは用途とツールの変化だ。まず用途について「アナリティクスソフトウェアの用途が広がっており、分析を高度化するためにAIプラットフォームの活用も活性化しています。また、データアナリティクスソフトウェアを活用する用途については、従来のITの利用目的であった時間やコストの削減から、業績の可視化や新規事業開拓で活性化しています。特に営業データの分析は高い傾向を示しています」と飯坂氏は指摘する。
また、アナリティクスソフトウェアベンダーからも、コロナ禍以降のニューノーマル時代で生き残るために新しい事業を創出しアナリティクスソフトウェアを活用するという企業の意識が強くなっているという話が聞こえてくる。
飯坂氏は「新規事業の創出やDXへの取り組みなど変革をしていくには、まず自社がどのような状況にあるのかを可視化する必要があります。その初期的な段階でのアナリティクスソフトウェアやAIプラットフォームの活用も増えています」と話す。
ツールについては「クラウド上で提供されるAIサービスにより、API連携で容易にかつ低コストでAIプラットフォームが利用できるようになりました。また学習済みのAI/MLモデルがオープンソースで入手しやすくなっていることに加えて、ノーコード・ローコードでユーザーがセルフサービスでアナリティクスソフトウェアおよびAIプラットフォームが使えるようになったことも用途の範囲拡大や利用の活性化につながっています。オートマシーンラーニングと呼ばれるように機械学習のモデルの作成は自動化および半自動化の傾向にありますが、実際の活用には一定の知識は必要です」と飯坂氏は解説する。
データサイエンティストまではいかなくても、ツールを使いこなすための知識の習得は求められる。ただしツールの導入および活用のハードルはクラウド化と自動化への進化によりぐっと下がっている。エンドユーザーの活用を支援するツールを使いこなすためのリスキリングにおいても、ベンダーやSIerのビジネスチャンスになるだろう。