日本企業を取り巻く環境は、人口減少や少子高齢化、雇用慣行の崩壊、ICT、AIといったテクノロジーとの融合などさまざまな側面で変化してきている。特に、今後発展するAIやICTとの融合を視野に入れると、より独創的なビジネスアイデアによって、企業の強みを具現化し、競争の中を生き残らなくてはならない。そこで、より高度なビジネスが求められる時代に、ビジネスアイデアの創出を手助けする書籍を提案しよう。
制約をチャンスに変える アイデアの紡ぎかた
アイデア創出に取り組む際、自身の「ない」という逆境や欠乏感に足を取られてはいないだろうか? 本書は、欠点を叩くのではなく可能性をまなざすことで、アイデアを紡いでカタチにする「アイデアのサインの法則」をまとめた。第1章では、「ブレスト屋タイプ」「即行動タイプ」「選択と集中タイプ」「ダメ出しタイプ」の四つのアイデア観と陥りがちな罠を参照可能だ。例えば、ブレスト屋タイプは深掘りに走りやすいため、アイデアが求められる背景を共有し、目的を定めることが重要だという。第2章では、□〇△の形の道路標識を使ってアイデア創出の道筋を示す。目的を模索する部分では、方向性の指針になり得る「デジタルシフト」「ソーシャルシフト」「ライフシフト」の三つの、インターネット時代におけるパラダイムシフトを紹介。時代の経路を生かしたアイデアが応援者を増やすビジネスにつながる。単なるアイデア創出だけでなく、人生や仕事をなすに当たっての示唆に富んだ指南書。
3つのステップで成功させるデータビジネス
本書では、データビジネスに取り組もうとしている、あるいは課題に直面している新規事業担当者や経営者に向けて実践的なデータ活用と収益化の方法論を解説。データビジネスの方法としては「既存サービスの新機能・サービス追加」「データを用いた他事業者サービスとのクロスセル」「データを用いた新規事業の展開」の3段階があり、収益の上げ方や留意ポイントなどの全体像を第2部にて学べる。データを用いた他事業者サービスとのクロスセルでは、CRMツールのデータを活用して他社MAツールを仕入れ、それを販売する例を挙げる。パートナー企業との協力関係の構築など綿密な計画が必要となるが、本書を読めば、そういった戦略的なデータビジネスを推進できそうだ。また、ビジネスモデル構築もデータビジネスの大きな関門だ。そこで、仲介事業者が関わるマッチング型やスマホアプリでの精緻なユーザー分析に基づいた広告を流す販促・広告型など、ビジネスモデル4パターンとその詳細も参照されたい。
How To STARTUP
スタートアップに向けて、素早く適切な意思決定を行う超実践的フレームワーク「OODAループ思考」や実践で役に立つスキルを紹介した一冊。「Observe」(観察)「Orient」(状況判断)「Deside」(決断)「Act」(行動)の頭文字を取ったもので、起業や新規事業立ち上げなど見通しが立ちにくい状況に適する点が興味深い。また、OODAループ思考では、マネタイズよりも、多くの人に使ってもらえる価値創造を優先することを説く。しかし、欧米などと比較し投資環境が整っていない状況も踏まえ、価値を認めてくれる利用者が増えてから再度最適なマネタイズ方法を考えることを推奨。Chapter 3では、公共的な側面の企業活動であるパブリックアフェアーズに注力することなど、スタートアップにおけるビジネス必須スキルを挙げる。政府や自治体、NPOなどとの良好な関係構築は、社会から選ばれたという企業イメージUPにつながる。スタートアップを志す人をはじめ、実践的なビジネスアイデアの一助に役立ちそうだ。