事業転換と人材の高度成長に向けてLet's Reskilling!

世界経済フォーラムが2020年にまとめた「仕事の未来レポート2020」によると、ロボットやAIなど新たな技術が進化・普及することで、2025年までに世界で8,500万人が職を失う予測だ。こうしたAIなどの台頭による"技術的失業"への危機感が高まる中、DX分野への人材育成やスキルギャップの現状など、ビジネスパーソンに求められる資質はより高度かつ専門的になりつつある。そこで、ビジネスパーソンのリスキリングに役立つ書籍を提案しよう。

リスキリング 【実践編】

後藤宗明
2,035円(税込)
日本能率協会マネジメントセンター

 筆者のリスキリング経験に基づき執筆された、リスキリング実践ガイド。多くの項目の中でも、「学習の成果を出すために必要な7つの学習OS」「生成AI(ChatGPT)時代を生き抜くリスキリングOS」とデジタル寄りにタイトルが付けられたページが興味深い。生成AI時代のリスキリングOSの例では、①未来志向の考え方、③キャリアオーナーシップ、⑥ストレス耐性など全七つで要素を構成し、方法論を簡素に説明した。また、今後注目されるグローバルスキルを持つ人物像として、人に溶け込み、状況判断、トラブル回避、生きる知恵に長けた「ストリートスマート」を提唱。従来の正解思考から世渡り上手に探索力を磨くという、適切な回答を即座に得やすい時代ならではの新提案だ。さらには外部環境の変化が激しい中でも複数のシナリオを作り、臨機応変な対応で企業を成長に導く予測思考型が望ましい。間違ったら適宜軌道修正するストリートスマートは、従来の日本人の常識を覆し、スキル育成の可能性を感じる一手だ。

デジタルリスキリング入門

高橋宣成
2,200円(税込)
技術評論社

 本書では、リスキリングのビジネス実践への具体例を豊富に紹介。Chapter 4では、リスキリングのための時間を生み出す方法として、汎用デジタルスキルの文字入力、OS、ブラウザーを紹介。タイピング、辞書登録、ショートカット活用など単純なスキルをこの機会に見直そう。準備が整ったら、基本のExcelからRPA、ノーコード/ローコードツールなど、デジタルスキルの種類と学習時の注意点をChapter 5の表から確認しよう。学習時間の多寡や金銭的コスト、ツールの内容説明が書かれた表は実践の参考にしやすそうだ。RPAツールの具体例として、マイクロソフトのRPAツール「Power Automate for desktop」を紹介する。同ツールによるフローの作成画面UIを見せながら、ファイルの移動・削除・CSV読み取り、Outlookの起動・メッセージの取得や送信、OCRなど自動化するアクションを列挙。これらの組み合わせを学べば、実務を簡素化できそうだ。末尾の参考書籍『できるPower Automate for desktop できるシリーズ』(あーちゃん 著/インプレス)も併せて読まれたし。

リスキリングの効果を最大化する能力開発法

岡田和喜
1,320円(税込)
青山ライフ出版

 リスキリングでは、自身に合ったスキルを効果的に身に付けることが重要だ。本書では、能力開発の視点が広がり、身に付けるべき能力がより明確になる「MVPCの4S」を紹介。具体的には「スタンス」「スキル」「センス」「スタイル」の四つだ。第1章ではこの4Sを企業視点、人としての視点、能力獲得のベースとなる概念(センス…感性と文化度)の項目で図にまとめており、リスキリング方針を定めやすそうだ。第3章のスキルの高め方では集中力、初志貫徹力、学習力を基本の3力として挙げる。集中力持続のためには整理整頓清掃など準備の徹底、学習力を高めるにはノート作成や五感を活用する音読など、シンプルな実践手法を提案。ところで、ビジネスに必要なセンスとは感性、文化度(歴史・文化への理解)に自己理解を合わせたものを指す。顧客の変化、市場の変化を捉える重要な能力で、ビジネスセンスの体系図として分かりやすく図版化している。人材力の強化に向け、実践的な内容だ。