HPC
HPCとは「High Performance Computing(ハイパフォーマンス・コンピューティング)」の略称で、複雑な計算やデータ処理を高速で行う機能やシステムを指す。HPCはネットワーク接続された数百台または数千台のコンピューターサーバー(ノード)で構成されている。蓄積されたビッグデータも高速で処理できるので、効率的な活用が可能となる。
一般的なコンピューターは直列処理で、複数のデータを順番に処理している。これに対し、HPCは複数のコンピューターサーバーで、複数のデータを並列に処理する。最もよく知られているHPCソリューションの一つがスーパーコンピューターだ。スーパーコンピューターは並列処理によって、何千ものノードを統合して一つ以上のタスクを実行する。
高速通信規格5G(第5世代移動通信システム)への移行により、通信速度が飛躍的に向上したことで、AI(人工知能)やIoTを活用したサービスも拡大。それに伴うデータ量の急増により、従来のデータ処理速度では対応が難しくなり、高精度のデータをより高速で処理できるHPCが活用されるようになった。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進によるコンピューティング能力増強も要因といわれる。
医療や生命科学、エネルギー、製造、政府、財務サービスなど、HPCを活用している業界は多岐にわたる。例えば、異常気象や自然災害に起因する環境問題のシミュレーション、自動車衝突エミュレーション、新型コロナウイルスの飛沫感染予測シミュレーションなどが挙げられる。HPCは従来のコンピューティングよりはるかに短い時間とコストで複雑な問題を解決するのに欠かせないソリューションである。
(青木逸美)