事業変革への取り組みでコロナ禍を乗り切る
デジタル化が業績回復を後押し
デル・テクノロジーズは、今年で5回目となる日本の中堅企業のIT投資規模およびDXの投資動向や顕在化する課題などに関する調査「IT投資動向調査2021」の結果を発表した。同調査は、従業員100人以上1,000人未満の中堅企業の約1,500社を対象に2021年2月1日~3月5日の期間に行われた。得られた回答から、データやデジタル技術を活用した「事業変革」への積極的な取り組みが、コロナ禍での業績回復の強力な後押しとなることが明らかになった。
事業変革への取り組みで業績に差
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、オフィスへの出社が制限される日々が続いている。業務のデジタル化や自動化といった事業活動を止めないための取り組みが、先行き不透明な時代を乗り切るための対策であると言えるだろう。
IT投資動向調査2021においても、業務データの可視化、デジタル化に向けた部門の新設、AIを活用した業務の自動化などの取り組み(事業変革)が業績の回復につながるという結果が示されている。
調査によれば、2020年12月から2021年2月のコロナ禍で事業変革に取り組んだ企業の51.7%が、業績は回復傾向にあると回答。事業変革に取り組んでいない企業の業績回復傾向は17.1%で、34.6%の差となった。
2021年のIT投資については、昨年の調査でランキング圏外だった「経営判断に必要な情報やデータの可視化」を検討や計画する企業が21.7%を占めた。アナログとデジタルが混在してデータが分散された状態を、デジタルデータで標準化して集約することが、DX実施に向けた現状分析のスタートラインとなる。そのデジタイゼーションの重要性を中堅企業の多くが再認識した結果だと推察される。
さらなるテレワークの推進が商機となる
テレワーク・在宅勤務の実施率は、69.0%に上り、前年の調査(63.9%)と比較すると5.1%増加した。一方で、約3割の企業はオフィスでの業務を継続している。テレワーク・在宅勤務の導入やオフィス環境の最適化といったワークスタイルの変革を検討してはいるものの、ノートPCのテレワーク運用環境の整備に加え、VPNを含む社内ネットワーク環境の刷新、社内インフラ基盤のクラウド化など障壁は高い。
デル・テクノロジーズでは、対応策として、Microsoft TeamsとOne Drive for Businessを利用できる「Microsoft リモートワーク スタータープラン」を組み込んだモバイルノートPCと省スペースデスクトップのパッケージプログラムを提供している。こうした取り組みは、テレワークを中堅企業に提案する一助となるだろう。
ほかにも、社内ネットワーク環境のボトルネックに対しては、「Dell EMC SD-WAN Edge powered by VMware」による広域ネットワーク(WAN)の仮想化パッケージを提供する。VMwareのSD-WANソフトウェア「VMware SD-WAN by VeloCloud」を、デル・テクノロジーズのハードウェア、および単一サポートのサブスクリプションをバンドルしたソリューションだ。SD-WAN技術を利用することで、WANの設定や運用管理をソフトウェアベースで実行でき、コスト削減や運用管理の最適化を図れる。
クラウド環境が整備されていない場合、社内に設置しているファイルサーバーにVPNを使用してアクセスする必要があるだろう。テレワーク・在宅勤務で多くの従業員がVPN接続をすれば、社内ネットワーク機器に大きな負荷がかかると同時に、利用者のネットワーク遅延にもつながる。こうした課題には、Microsoft 365やG Suiteなどのクラウドサービスの活用が解決策となるケースも多い。
さらにテレワークに適したクラウドサービスと併せて、マルウェア対策といった安全面を考慮したセキュリティソリューションを提案すれば、新たな商機をつかめるだろう。
三つの障壁を取り除く
今回の調査結果から、以下の三つのポイントがデジタル化の障壁となることが判明した。
・着手すべき事業変革領域が判断できない
・経営判断に必要な情報がデータ化されておらず、事業変革を始められない
・事業変革をスタートしたいがコスト負担が大きい
こうした障壁は、社内の人材だけで解決するのは難しい。部門や事業を横断的に俯瞰して分析するスキルが求められるのだ。特に、ITと各種クラウドサービスに精通した人材が不足しがちな中堅企業は、人材の面で壁に突き当たることも多いだろう。そこで、デル・テクノロジーズでは、DX推進をサポートする「DXコンサルティングサービス」を用意している。
同サービスでは、「業務部門」「分析チーム」「IT部門」が三位一体となって、DXに取り組むための仕組みづくりをサポートする。DX推進のポイントは、この三位一体にある。業務部門だけ、IT部門だけではDXの推進は難しい。業務部門が求めるビジネス施策を分析チームが分析し、それを解決するテクノロジーをIT部門で整備することで、理想とするDXの環境が構築できる。デル・テクノロジーズは、中堅企業のDX実現に向けた提案、データの収集や分析、プロトタイプの開発といった支援を行う。着手すべき事業変革領域が判断できない、経営判断に必要な情報をデータ化したい、事業変革にかかるコスト負担が大きいといった三つのデジタル化の障壁を取り除いていく。
DX推進を含めた事業変革の取り組みにより、企業の業績が回復したという同調査から明らかとなった事実は、DX推進を検討する中堅企業にとって注目すべき結果と言えるだろう。
田中 亘(wataru tanaka)
東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系ITまで、広範囲に執筆。代表著書:『できるWindows 95』、『できるWord』全シリーズ、『できるWord&Excel 2010』など。