ChromebookでWeb会議はどこまで実践できるのか?

Chromebookをニューノーマル時代のメインデバイスとして活用できるかどうかは、テレワークで急増しているWeb会議への対応度にかかっている。どんなに優れたWebブラウジングデバイスであっても「Zoom」や「Microsoft Teams」といったWeb会議ツールが快適に使えなければ、コロナ禍で役立つデバイスにはならない。そこで、Chromebookにおける各種Web会議ツールの対応度を探ってみた。

Web会議ツールで配慮するポイント

 現在の主要なWeb会議ツールは、「Zoom」を筆頭に「Microsoft Teams」(以下、Teams)「Amazon Chime」「Google Meet」などが挙げられる。筆者も2020年の春ごろからは、記者会見に出向くことがなくなり、もっぱらこれらのWeb会議ツールによるオンライン会見を視聴している。視聴するだけならば、実際のところChromebookで何も困ることはない。ただ、ChromebookではWeb会議ツールの利用に関して、少しだけ配慮するポイントがある。それが、Chromeブラウザーだけで利用できるか、AndroidアプリまたはChrome拡張機能を組み合わせる必要があるか、という点になる。

 音声・ビデオ会議においては、基本中の基本なので、各Web会議ツールは何らかの形でChromebookに対応している。Chromeブラウザーをベースにしたものもあれば、最初から専用アプリに誘導するものもある。実際、ZoomをChromebookで利用しようとすると、Chromeの拡張機能として「Progressive Web Application」(PWA)※をインストールするように誘導される。このZoomの挙動は、Chromebookに限られたものだ。WindowsやmacOSのGoogle ChromeからZoomの会議に参加する場合は、Webブラウザーだけで参加するか、専用アプリをインストールするかの選択肢が表示される。Chromeに拡張機能をインストールするメッセージは表示されない。ちなみに、ChromebookにはAndroidアプリもインストールできるので、GoogleのPlayストアからAndroid版のZoomのインストールを試みたが、Chrome OS向けのPWA版アプリのインストールへと誘導された。

 Zoomの資料によれば、このPWAによって次のような機能が使えるようになるという。

・カスタマイズ可能なギャラリービュー
・ブレイクアウトルームを指定
・ライブ文字起こし
・ライブ通訳
・プライバシーに配慮した新しい背景マスキング機能
・挙手とミーティング中のリアクション

 ただし、各OSのアプリ版のZoomで利用できるフル機能(音声・ビデオ会議/テキストチャット/スケジュール連携/録音/録画/ミュート/投票/スライド共有/デスクトップ共有/ファイル共有/ファイル送信/ホワイトボード共有など)と比べると、完全な対応ではない。Zoomでは、今後のアップデートでChrome向けの機能を追加していく予定だというが、現時点でのZoomのフル活用においては、Chromebookは若干のディスアドバンテージとなってしまうだろう。Zoomのフル機能を使うのであれば、各OS向けに提供されている専用アプリの利用がベストである。

※モバイル機器向けに設計されたWeb アプリをネイティブアプリのように扱えるようにする技術。

Chromebookと相性の良いWeb会議ツールは?

 次はTeamsを取り上げる。Teamsには、Web版、Windows/Mac/Linuxで利用できるデスクトップ版、Android/iOSに対応するモバイル版が用意されている。
 Chromebookの場合は、Web版かモバイル版(Android)を利用する。Web版とモバイル版の違いは、基本的なWeb会議においては差がない。ただ、現時点での違いは、背景設定や画面分割といった機能がWeb版では対応していないことなどが挙げられる。とはいえ、クラウドサービスなので、将来的にはWeb版でも利用できるようになる可能性はある。そのため、Teamsの利用において、Chromebookで困ることはないだろう。

 アマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供するWeb会議ツールであるAmazon ChimeとChromebookの相性はどうだろうか。Amazon Chimeは、社内外でのミーティングやチャット、ビジネス電話などを一つのアプリケーションで実現するコミュニケーションサービスだ。Amazon ChimeのChromebook対応については、AWSから正式に回答をもらっている。その内容によると、ホワイトボード共有を除く機能(音声・ビデオ会議/テキストチャット/スケジュール連携/録音/録画/ミュート/投票/スライド共有/デスクトップ共有/ファイル共有/ファイル送信)がChromebookで利用できる。ホワイトボード共有は、そもそもWindowsやmacOSといったほかのOSやアプリでも対応していないため、Amazon ChimeのChromebook対応は満点と言える。Amazon ChimeをメインにWeb会議を社内で推進していくのであれば、Chromebookを選んでも困ることはないだろう。

Chromebookに死角なしのGoogle Meet

 Google Meetは、その名の通りGoogleが提供しているWeb会議ツールで、完全なWebブラウザー対応になっている。そのため、Chromebookを利用する上で死角がなく、100%の機能が利用できる。逆に、Chromebookではなくても、Chromeブラウザーが使えるデバイスならば、困ることはない。ただし、いい意味でも悪い意味でも、Google Workspaceに統合されているので、Microsoft Officeなどとの連携を考えると、使い勝手は悪い。

 しかし、この連携はChromebook全般にも言えることで、Web会議の予約やスケジュール調整などを考慮すると、理想的にはGoogle Workspaceで完結することが望ましい。例えば、アルミサッシで有名なアルミ建材メーカーのYKK APでは、全社規模でGoogle Workspaceを採用している。このような会社では、テレワークで利用するデバイスも容易にChromebookにリプレースできるだろう。ただ、利用状況としては、筆者の感覚だとZoomかTeamsによるWeb会議の対応が多い。Teamsの利用比率が高い組織の場合には、やはりWindowsとMicrosoft 365などの利用にアドバンテージがある。今後、ZoomのPWAが進化したり、Google Meetを使ったりする組織が増えれば、Chromebookのビジネス利用も加速していくだろう。