ERPパッケージライセンス市場はほぼ横ばい
Enterprise Resource Planning
矢野経済研究所は、財務会計、人事給与、販売管理、生産管理などの基幹業務データを統合する情報システムを構築するための基幹業務管理パッケージソフトウェア「Enterprise Resource Planning」(ERP)に関する国内市場の動向と将来展望を発表した。
2020年のERPパッケージライセンス市場の規模は1,201億6,000万円で、前年比1.4%とほぼ横ばいとなった。背景には、新型コロナウイルスによるユーザー企業の業績悪化や先行きへの懸念で案件停止が生じたことや、緊急性の高いテレワーク環境の整備などが投資先として優先され、ERPの導入が一時見送りとなったことがある。このような傾向は、投資力の限られる中堅中小企業で強かったとみている。しかし案件停止や導入の先送りが生じたものの、同市場全体がマイナスになるほどの大きな影響は出なかった。コロナ禍で業績が悪化した業種や企業が一部にとどまったことと、経営環境の変化へ対応するために優先的にERPへ投資した企業が多かったことが理由として挙げられている。
ユーザー企業のDXへの関心は非常に高く、2021年9月に政府がデジタル庁を設立したこともDXの機運をいっそう高める要因になっていると矢野経済研究所は分析している。こうしたDXへの機運は、ERP市場にも影響を与えている。例えば、老朽化したERPをリプレースし維持運用にかかるコストを削減することでDXへの投資を拡大したり、柔軟性が高くデータ活用もしやすい基幹システムに刷新することで迅速な経営判断を促進したりするなど、ERPがDXを推進するプロジェクトに組み込まれる機会が増えている。これを踏まえ、DXの推進がERPパッケージライセンス市場の追い風になっていると指摘している。
2021年以降は市場拡大が続く見通し
2021年のERPパッケージライセンス市場は回復傾向に転じ、市場規模が前年比4.5%増の1,256億円になると予測している。コロナ禍は終息の見通しが立っていないが、日常化したことにより、現在は2020年春のような強い投資抑制が起きていないことが背景として挙げられている。また、経営基盤の見直しを行うニーズが強いことから、2021年以降は市場拡大が続く見通しである。
老朽化したERPのリプレースが順調に進むほか、クラウドやデータ分析などのテクノロジーのメリットを享受して、DXに取り組む企業も増えると考えている。
上記を踏まえ、同市場の2016~2023年までの年平均成長率は4.1%で成長を維持し、2023年には市場規模が1,392億円になる見込みだ。
国内ITサービス市場はプラス成長に回帰
IT Service
IDC Japanは、ITコンサルティングなどのプロジェクトベース、ITアウトソーシングなどのマネージドサービス、ハードウェアサポート&保守などのサポートサービスの三つの市場区分で構成する国内ITサービス市場の予測を発表した。
2020年の国内ITサービス市場規模は、前年比2.8%減の5兆6,834億円となった。市場のマイナス成長の背景には、新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けた、商談の停滞や新規プロジェクトの見送りに加え、顧客常駐型サービスや自社型サービスの稼働率の低下、OSサポート終了に伴うシステム刷新や元号改正対応など複数の特需の反動減などがある。
2020年後半からITサービス事業者の受注状況は回復傾向にあり、延伸や中断となったプロジェクトも再開している。そのため、2021年はプロジェクトベース市場を中心に回復が進む見込みだ。2022年以降は徐々に成長率が鈍化するものの、レガシーシステムの刷新/更新需要、ユーザー企業によるDX投資の本格化が国内ITサービス市場の成長を支えるという。上記を踏まえ、2020~2025年の年平均成長率は2.4%で推移し、2025年には市場規模が6兆4,048億円になると予測している。
IDC Japan ITサービス リサーチマネージャー 木村聡宏氏は、国内ITサービス市場の今後の成長に向けて「ITサービス事業者は、成長領域であるDX関連サービスを強化するため、DX人材の育成と確保を急ぎ、自社のDXを推進すべきです」と提言している。
ユニファイド・エンドポイント管理市場は鈍化
Unified Endpoint
アイ・ティ・アールは、ユニファイド・エンドポイント管理市場の国内での規模推移と予測を発表した。本市場の調査対象は、スマートフォンやタブレットなどの利用状況を遠隔管理できる製品・サービスに加え、OS上で稼動するアプリケーションやデータ/コンテンツの管理までを統合的に行える製品・サービスも含んでいる。
2020年度のユニファイド・エンドポイント管理市場の売上金額は277億6,000万円で、前年度比25.0%増となった。背景には、同市場に影響力のある上位ベンダーを筆頭に、全ベンダーに伸びがみられたことがある。モバイル端末の業務利用が定着したことも影響し、同市場は成熟期を迎えつつある。
モバイル端末の業務利用が定着した理由としては、コロナ禍によってモバイル端末の追加導入が活発化したことや、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」によって小中学校でモバイル端末の導入が拡大した点がある。ほかにもPHSの停波に伴い、医療機関でスマートフォンなどの導入が行われるなど、特定業種での導入も進んだ。加えて管理対象がノートPCまで拡大し、多様なデバイスが管理可能となった。上記を踏まえ、ユニファイド・エンドポイント管理製品・サービスの導入が加速したという。
今後、ユニファイド・エンドポイント管理市場の伸びは鈍化する見込みだ。これを踏まえ、アイ・ティ・アールは同市場の2020~2025年度の年平均成長率を9.1%と予測している。